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身近な自然が薬に?生薬学教室の研究現場を探る – 東邦大学薬学部・見学レポート

私たちが普段、風邪や体調不良の時に手にする薬。日常的に使っている薬が、どのように作られ、薬学部の学生たちがどんな学びをしているのかを知る機会は多くありません。今回、東邦大学の女子理系応援プロジェクト「かがやくサイエンス」で、薬学部の「生薬学教室」を訪問しました。国府台女子学院の生徒さんたちと一緒に見学し、私たちの身近にある植物や自然素材が薬になる可能性を探るための研究現場に迫ります。

生薬とは?自然が育む「薬の素材」

研究室に入ると、乾燥された植物や鉱石、動物の骨などが整然と並べられた標本の数々が目に飛び込んできました。「この標本の一つ一つが、生薬として漢方薬などに使われているんですよ」と生薬学教室の大月興春助教が言いながら、いくつかを手に取って説明してくれました。ある瓶を取り出して、「たとえば、これは杏仁豆腐に使われる杏仁です」と紹介されると、生徒さんたちは「知ってる!」という表情。杏仁は実は咳止めの作用があるとされているんです。こうした生薬の成分に着目し、どの成分がどんな効き目を持つかを研究するのがこの生薬学教室なのだそうです。

生薬(しょうやく)とは、植物や動物、鉱物など天然の素材のうち、薬効がある部分を加工したもののこと。生薬学教室では、古くから薬草として使われてきたさまざまな植物や動物成分を抽出・分析し、薬としての効果や成分を研究しています。

自然素材を科学的に解明する

生薬学教室の特徴は、植物や動物素材をただ観察するだけでなく、その成分を科学的に解析し、薬としての効果を確かめるところにあります。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などの専門機器を使って、炎症を抑える成分や免疫を高める成分など、薬効成分を抽出・分析しています。大月先生から「これらの成分をどう取り出して、薬として活用するかが生薬の研究です」と説明を受け、見学者の皆さんも身近な植物が薬になる可能性に驚きの声を上げていました。

自然の力を未来の薬に変えられるように

植物の成分を薬として実用化するためには、長期にわたる研究や動物実験、臨床試験など多くのプロセスが必要です。生薬学教室では、成分抽出の方法や活用の仕方を研究し、ここでの研究成果が未来の新薬に繋がる可能性を探っています。「ここで研究している成分の一つが、将来新薬として世に出るかもしれません」という先生の言葉には、自然素材の力で医療に貢献したいという想いが込められていました。

「植物が薬になる瞬間に立ち会えるかも」 – 卒業生が語る生薬学の魅力

この研究室には、国府台女子学院出身の先輩も在籍しており、研究室での生活や進路選択について話を聞ける機会がありました。

「薬学部に入った時、身近な植物や自然素材が薬になる可能性を持っていることに驚きました。成分を一つひとつ研究し、実際に効果が確認できるとやりがいを感じます」と語る先輩。さらに、「自分が見つけた成分が、いつか新しい薬として役立つかもしれないと考えると、研究が一層面白くなります」と話してくれました。

大学院に進むと研究はより専門的で難易度も増しますが、「普段の生活で目にする植物が薬になる瞬間に立ち会えるかもしれないのが、この研究の醍醐味です」と言う先輩の言葉に、生徒さんたちも未来の自分を想像している様子でした。

Q&A – 生徒さんたちの質問

見学中には、生徒さんたちから生薬や研究生活に関する質問が寄せられ、先生や学生たちが丁寧に答えてくれました。印象的だった質問をいくつか紹介します。

Q: どのような生薬が漢方薬に使われているのですか?
A:
みなさんがよく知っているものでは、杏仁(きょうにん)や、乾燥させたみかんの皮である陳皮(ちんぴ)がよく使われます。杏仁には咳止め作用があり、陳皮にはリラックス効果や消化促進の働きがあります。また、珍しいものでは龍の骨(大型哺乳動物の骨)や石膏も含まれ、これらは鎮静作用や炎症を鎮める効果があります。

Q: 実際の授業で、どのように生薬について学ぶのですか?
A:
薬学部では1年次から生薬に関する基礎を学び、2年次には実習科目で生薬を使った軟膏の調合や成分の分析など、より実践的な学びが始まります。3年次以降には天然物化学の授業があり、植物や菌類など自然の中にある化合物についてさらに詳しく学びます。生薬学の授業では、実際の生薬に触れて、その匂いや質感を確かめながら学ぶこともあります。

Q: 薬剤師と研究員になる人の割合はどれくらいですか?
A:
薬学部では、多くの学生が薬剤師としてのキャリアを選び、卒業生の約9割が病院や薬局、ドラッグストアに就職します。一方で、製薬会社で研究職に就く人や、さらに大学院に進んで専門的な研究を続ける人も少数ながらいます。

Q: 研究テーマはどのように決めるのですか?
A:
研究テーマは、学生自身が興味を持つ分野や成分について希望を出して選ぶこともできます。例えば、「ツバキの研究をしている先輩は、自分の名前がツバキだったから」というように、個人的な興味からテーマを決める場合もあります。

Q: 実験で使う除湿器はなぜ必要なのですか?
A:
実験で湿度が影響を与えることがあるため、特に水を使う装置や薬品が多い夏場などには湿度を調整する必要があります。例えば、溶液を加熱する際に湿気が上がりやすいため、除湿器で環境を安定させるようにしています。

Q: 生薬の研究にはどんなやりがいがありますか?
A: 自分が研究した成分が、将来誰かの健康を支える可能性を持つことが大きなやりがいです。時間はかかりますが、効果が確認できると達成感が違います。

自然の力を未来の薬に – 東邦大学で学ぶ生薬学

生薬学研究室での見学を通じ、「自然の力を科学的に解明し、未来の健康を支える薬を生み出す」という壮大なテーマがいかに日々の研究に根付いているかを感じました。皆さんもぜひ、東邦大学での学びを通して、自分の手で未来の医療を支える可能性を見つけてみてください。


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