谷桃子バレエ団「レ・ミゼラブル」初日を見た

2024年8月28日(水)於・きゅりあん大ホール
エレベーターで8階にあがったら行列。ロビーも狭めなので、早めに行ったほうがよさそう。

全体の雑多な感想

見る前の一抹の不安:思ってたのと違う!ってなったらどうしよう…
見た後の私:杞憂でした

ハンカチを握りしめて舞台を見つめていたら、全身に力が入りすぎて足が攣りそうになった。
どの登場人物もその人にしか見えなくて、これを言葉なしに表現するってすごいよと感動。
ただし、「レ・ミゼラブル」をこれまでまったく見たことがなくて、初めてがバレエなんですっていう人にとっては、物語が駆け足で進んでいくのでついていけないかもしれないななどと思った。そんなときの音声ガイド! 今回も借りてみたけど、あってよかった。ミュージカルと比べるとやっぱりちょっと違う場面があったりするので、1000円(保証金入れて2000円)出して借りる価値おおいにありという感じ。

もうちょっと詳しく書いてみる

以下、パンフレット記載の場面に沿って覚えていることを書いてみる。

【第1場 騒乱 ジャン・ヴァルジャンの逮捕】
まず、ジャン・ヴァルジャン(今井智也さん)がまじでジャン・ヴァルジャンだった(以下、全員「まじで〇〇」となるので省略)。
冒頭から見ごたえのある群舞でぐっと物語に引き込まれていく。テナルディエ夫婦(吉田邑那さんと種井祥子さん)の一つひとつの表情と動きが逞しさ(と下衆さ)の塊だった。
ジャヴェール警部(三木雄馬さん)のシャープな踊りに感激。これが「解釈の完全一致」というやつかという気持ち。

【第2場 牢獄】
折れたマストを持ち上げる場面があって、いいね!ってなった。仮釈放のときのジャン・ヴァルジャンとジャヴェール警部のやりとり、それぞれの表情が素晴らしかった。

【第3場 旅の男とお尋ね者 ジャン・ヴァルジャンの改心】
この場面はずっと涙が止まらなかった。
ミリエル司教(小林貫太さん)の心優しさと、バチスチーヌ嬢(永井裕美さん)とマグロワール夫人(古澤可歩子さん)の現実主義の対比。ヴァルジャンの戸惑い、疑り深さとプティ・ジョルヴェ(松尾力滝さん)の悔しさの表現。…からのジャンの後悔。
教会で改心を誓う後ろ姿の演技、すごすぎ。

【第4場 別れ 思い出】
ファンティーヌ(永橋あゆみさん)!ちょっと愚かで愛情深い女性の哀しみが溢れていて、ここも泣いていました。テナルディエ夫婦がいい味出してる(これはずっとそう)。
コゼット(木村沙英さん)かわいい!

【第5場 縫製工場 荷馬車】
工場長を高谷遼さんが演じるということで、あの「王子」がどうやってあんな下衆なムカつく工場長に?と思っていたら、その人にしか見えなくてムカついた。ファンティーヌが追い出されたときなんて、許すまじの気持ちでいっぱい。
ここの工場女たちもムカつきポイントだけど、一人ひとりの表情がそれぞれ違っていて、「あーこの人はこんな人なんだろうな」というのが短い時間でも感じられた。気になる人がいっぱいいるけど、ぱっと今思い出せるところでいうと巻田恵瑠さんの演技が光っていた。
荷馬車を持ち上げるシーンもいいね!このあと、ヴァルジャンが救い出した男性を軽々抱えてはけていったのを見て、役に対する説得力がありすぎるよって思った(後のマリウス救出シーンでも同じことを思った)。

【第6場 娼婦になったフォンティーヌ】
ちょっと生々しいシーン。お子様大丈夫?といういらぬ心配をするくらい、身を落としていくファンティーヌが哀しくて哀しくて。
「ああ無情」だよ、本当に。

【第7場 葛藤 裁判所】
ヴァルジャンの葛藤するところが踊りで表現されるとこうなるんだなと思った。ファンティーヌが息を引き取るところ、白い衣装の儚さすごい。このあたりの場面、プリンシパル3人の指先の表現が堪能できてとても好き。

【第8場 テナルディエ夫婦の家】
引き続きテナルディエ夫婦が完璧。コゼットのコゼットらしさ(可哀想!)。ヴァルジャンがコゼットを連れて行くところ、これまでと違う優しい仕草が素敵。

【第9場 修道院】
大人コゼット(大塚アリスさん)!ここで第1幕が終わるところも含めて、流れがとても好き。修道女たちの踊りに見とれていたら、幕が下りました。

【第10場 リュクサンブール公園・ジャンヴァルジャンの隠れ家の中庭】
そういえば舞台美術すごくない?ってことにここで気づく。コゼットとマリウス(昂師吏功さん)の目が合う瞬間の演技、素敵。っていうか昂師さんがやっぱり好きだということを再確認。この間のエポニーヌ(永倉凛さん)の切なさよ。いい子なのがまた涙を誘うよ。
コゼットのヴァルジャンへのささやかな反抗、めっちゃかわいい。

【第11場 戦闘・革命軍の敗北・銃殺刑・マリウスを助け出すジャンヴァルジャン】
盛りだくさんのシーン。アンジョラス(森脇崇行さん)が先頭で革命軍の皆と行進するところの盛り上がりから銃殺刑までが本当に怒涛で、このあたりから第14場のジャヴェールが死ぬところまで全身に力が入りっぱなしだった。
一人ひとり倒れていくところ、エポニーヌの想いが最期にマリウスに伝わるところ、マリウスがそのエポニーヌに重なるようにして気絶するところ、生き残った仲間が銃殺されるところ、一つひとつが秀逸。舞台をめいっぱい活用した演出、すごい。
コゼットがマリウスを案じるところ、床に伏せるただその動き一つで絶望感があらわれていて、ため息。

【第12場 下水道】
コゼットのもとにたどり着くまでヴァルジャンがマリウスを担ぎまくっていて、どんな足腰しとんねんと思っていた。
テナルディエがネッカチーフを拾って首に巻くところ、ちょっと鳥肌が立つくらい卑しさが出ていた。

【第13場 逮捕】
ジャヴェールとヴァルジャンの邂逅。ジャヴェールの正義が揺らいでいる様が、ヴァルジャンを通すその表情にあらわれていて、ああ…この人の信念が壊れてしまった…と感じた。

【第14場 ジャヴェールの死】
情と信念の狭間にいるのがまざまざと感じられて、表現力の凄まじさに息が詰まった。
セーヌ川に身を投げる後ろ姿、圧巻。そこからヴァルジャンがジャヴェールの死を悟るところも。

【第15場 結婚 捜索・ネッカチーフ・ジャンバルジャンの死】
ヴァルジャンの走馬灯、ここの演出も素敵だった。最後に銀の燭台が出てくるのもよい。
せめてコゼットとマリウスは幸せであれなどと思っていたら終わった。

書きながら思ったこと

・たぶんハプニングだったであろうこと(ヴァルジャンが服着れない、ジャヴェール警部が杖落とす、ガブローシュのサスペンダー外れてるなど)が、すべて役の中で成立していてそこがまたよかった。ヴァルジャンはまともな服を着るのが久しぶりだしなとか、そういうこと。これがまさに「役に生きる」だなあ。
・Youtube動画で大塚アリスさんの「課題」として髙部監督が語っていた「人間らしさ」について、コゼットはその人間の中でもちょっとゆるふわガールなところがあるから、課題を克服していくのにはぴったりなのだろうなと思ったりした(実際、大塚さんのコゼットはちょっと浮世離れした純真さが前面に出ていて、それもまたよかった)。育成にいかに気を配っているかがよくわかる。この一人を大事にしていく姿勢が、谷桃子バレエ団の魅力にもなっているのだろうな。
・プリンシパルが3人出てるの豪華すぎ。配信されたら、これと生で見れない回(3公演目、ひなコゼット!)を買うだろうという気持ち。

あと2回分チケットを取っていてあと2日見れる! 楽しみ。


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