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篝の短編小説

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2022年10月の記事一覧

【短編小説】臨界

 日付を跨いだ、繁華街のある夜。
 彼は夜のアルバイトを終えて、家路に着いていた。
 ほぉ、と白い息がでる。今日は寒い。
 今日一日中働き詰めだったが、いまいち何かを遂行した実感が湧かない。形容するならば、そうするために生まれてきたような。
「──帰りたくねえな」
 大きいため息を漏らす。あと五時間後には大学へ行くために電車に乗らねばならない。
 なんのために生きているんだろう、とふと思う時がある

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