1.ちいさくても良い。ちいさいからこそ良い。
1.ちいさくても良い。ちいさいからこそ良い。
これまでの創作の経験から得た第一の気付きは、ちいさくても良い、ということ。
自己完結できる最小単位の世界だけに心を向ける。
たとえば、名前や規模や影響力の大きなものがある。近くにそういったものがあると縋りたくなるが、他者も権威も、自分のものではない。
自分のものではないものの力を借りようとするのは、借金と同じ。利子は巨大で、取り立て屋が始終あなたを責め立ててくる。
そんな世界で生きたいですか。
もちろんうまく拡張させることができれば良いのだけれど、自分の知る限り、ごく稀な例だと思う。
四方八方から矢が飛んでくる世界。そこでの活動は決して幸福をもたらさず、自分の最も純粋な美しいと思う心の炎が消えてしまう。創作とは心の灯火の燃え広がりだから、そしてその神秘的な力を信じることによって、作者と受容者は作品を介してつながるものだから、掻き消された炎では、作品自体が死んでしまう。
仮にそれで褒められたり、賞賛されたりしても(これらも他者からの評価によるものであることを忘れてはならない)、あなただけはその賞賛が偽りのものであることを知っている。ゆがめられたもの、或いは、可能性を矮小化されたものであることを知っている(もちろんそれと折り合いをつけられるひともいる。だが少なくとも私はそうではない)。
だが、何故そんなことが起こるかといえば、そもそも「借金」をしているから。外部に力を求めているから。自分の内側の力を信じてあげていないから。そんな風に、せんじ詰めれば、何事も、自分の心の問題に辿り着く。
おおきくしたければ、自己完結できる最小単位の世界だけに集中して、自然と燃え広がるものにだけ愛情を向けるのがいい。少なくともいまの私はそう思う。
ちいさくても良い。ちいさいからこそ良い。
小説は素晴らしい。
小説や絵や歌や音など、自己完結できるプリミティブな創作は素晴らしい。
自己完結しない美しさを、みせてくれるから。