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ナミビアの砂漠 私の中のカナ

ナミビアの砂漠があまりに衝撃的な映画で、言語化できず、もやもやをかかえてまた2回目を見てきた。(新宿のシネマカリテ、初めて行ったけど素敵な劇場ですね。)

1回目、カナがあまりにも私で、そして私の未来を見てるようで帰り道は放心状態だった。

私はカナの行動や心理がよくわかってしまって、(特に元カレの同棲している家から勝手に夜逃げのように出ていくのに、今カレと楽しげに冷蔵庫を運び出すシーンは、悪魔だなこいつと思いながらも21歳くらいの私は同じようなことやってたかもなとか思った)でもネットで見ると、「常軌を脱したヤバい女」「行動が意味わからなすぎて全然共感できない」「終始イライラする」というのがだいたいで、わたしってヤバいんだなと私の中のカナが動揺する。

※ネタバレ含みます


この映画は一貫してカナの一般的にはヤバい、と言われるような行動の理由を教えてくれない。
途中途中、ヒントとして両親との関係が悪いのか?育ちか?と思う場面はあるものの最後まで答えはくれないし、メンタルヘルスの不調か?躁鬱?ADHDか?と思うのに、医師は「診断名は関係ないでしょ」とか言ってこちらも結局答えを教えてくれない。
男性へのヘイトがところどころでカナの口から出るが、そのヘイトが行動の軸にある、どうにかしたいというわけでもなさそう。

ヤバい女がいると理由がほしくなるし「あー、だからか」と腹落ちしたいのに、させてくれない。色々ぐるぐる考えて、2回目にまた見て、カナはただ自分の感情に素直にある意味主体的に生きていて、それが世間からヤバいと思われてもそこに理由なんて必要なくて、「カナはカナだから」ただそれだけなんだなと、理由を求めるのをやめた。


2回目見て、気になるシーンがいくつかあって、調べてもなかなか出てこないからここで発表してみる。なにか解釈できた部分があったらコメントで教えてください

カナが働く脱毛エステで、50代くらいの女性客がVIO脱毛を終えて、スタッフだけになるシーン。女の先輩が「あんな歳になってVIO脱毛してどうするつもり?って思ったでしょ。あれ、介護脱毛よ。あなたはする?」と意地悪そうにカナに問う。カナは「思いやりヤバ」といい、介護脱毛なんか「するわけないじゃないですかー」と興味なさそうに答える。

その直後のシーンはカナが彼氏の家のソファで退屈そうにスマホでナミビアの砂漠(人工オアシスに集まる野生動物の生配信のYouTube、実際にある)見てると、宅配が来る。そのシーンのカナはノーパン?に見える。宅配に出る時にスウェットをわざわざ履くシーンがあるので、やっぱりその演出にはなにかしらの意味がありそうだけど、なんなんだろうか。カナ自身はエステ脱毛なんかじゃ脱毛終わるわけないじゃないか、と客に言ってクビになるし、介護脱毛もしないと先輩には言っているのに、自分はちゃんとVIO脱毛を終えていて、他人との会話にまるで興味がないらしい。


2


育ちの良さそうなNY出身、たぶん高学歴のハヤシ(次の彼氏)の家族や友達とキャンプに行くシーン。カナはハヤシの家族とも友達ともまったく馴染めなくて、ずっとひとりで空気のように(でも浮いている)椅子に座り、オレンジジュースを飲む。(このハヤシに放置されて初めましての人に馴染めない感じとか、人見知り発動した目線の動かし方とか、向こうの親や友達は話しかけてくれるのに全然盛り上がれないのとか、私の嫌いな私すぎている)

途中から会に参加したカナコがカナに挨拶にくる。「私もカナ!カナコだけどね〜」とカナとは対極の愛想の良さを振る舞うカナコの背景には、少し遠くからぼやけた友人たちが全員こちらを見てる←これなに??

キャンプから帰ったあと、理由はわからないけどカナはとにかく不機嫌になりずっとパソコンに向かっているハヤシに物を投げて当たる。(このどうしようもないとにかく機嫌が悪くなるのも22.3歳ごろの私の中のカナもよくやってた、嫌だ)

これはカナコはハヤシの元カノで、家に落ちていた妊娠のエコー写真の相手だったんだろうか?そのあとカナは、ハヤシに子供を下ろしたのは「カナには関係ないだろ、過去の話だろ」と言われてブチぎれる。

1番好きなセリフは「自分で考えろよ、クリエイターだろ?」です。

3

階段から転げ落ちて、車椅子になったカナ。都庁にデートに行って、ハヤシの大学時代の友人に会う。「こいつ、高校大学の友達で今は官僚。学歴ロンダリングで東大」とハヤシはカナに友達を紹介する。

ロンダリングって意味がわからなくて、それ以降がハヤシが東大なんだ、こういう人確かにいるよな、とか思って学歴フィルターでハヤシを見てしまった。東大出て、定職を辞めて脚本家目指していつも家にいる。実家が太いので、何で稼いでいるのかわからないのにそれなりにいい家に住んでいるし、あまりその状況に焦ってる様子もない。であって「カナと2人でいられるの、嬉しかったはずなのに、2人が溶け合ってひとつになっていくのが怖かった。対話が足りなかったよね?」と突然言葉数が増える。いるいる、こういうやつって思いながら見てたけど、学歴ロンダリングって院から東大ってことか。(とはいえ学歴ロンダリングで友達が東大に行けるってことはそれなりに頭の良い大学なんだろう、私の中では早稲田ってことにしとこう。)

カナの心はずっとカラカラで砂漠のよう、東京にただただ生存している。カナがナミビアの砂漠の野生動物がオアシスにくるのをぼーっと観察するように、映画を見ている私たちもただひたすらカナをぼーっと観察する、不思議な映画だ

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