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記録100001(2024/10)
街から逃げ、荒れ地を進む。 北風に乗って雨粒が吹き付ける。
肌寒い。 体に確かな感覚が戻ってきた。
霧のように拡散していた自我が一箇所にまとまり、やっと自分の境界を認識できるようになった。 内側に確固たる主体が存在しているのを感じる。
今まさに、身一つでこの荒野に存在しているのだ。
振り返って街を眺める。 巨大な保育器のようだ。
あの地にいた時、自ら決断を下したことがあっただろうか。
人類はとっくの昔にシンギュラリティを迎え、市民はシステムの言葉のままに生活してきた。
母なるシステム。
それはヒステリックで過保護な母親の性格を持つ。 人々はそんな母親の支配の力に抗うことができなかったのだ。
システムを抜け出してしまった今、ただ体が感じる感覚と自分の思考だけが頼りである。