[清水量子の解説] 線形代数の解説(無料)

この記事は、私の解説で使う線形代数の説明です。
解析力学については、その都度説明します。

1.ベクトル空間、内積が定義されたベクトル空間

   線形代数で言うベクトル
   
要素を2個以上(無限個でもよい)、持った要素の組で
   「和とスカラー倍」が定義されたもの。
   高校で言うベクトル「大きさと方向が定義されたもの」というのは
   早く忘れて下さい(ノルムや内積、角度は関係ない)

   ベクトルには、縦ベクトルと横ベクトルがありますが
   とりあえずは、縦ベクトルa を |a>、横ベクトルb は<b| でいいです

   ベクトル空間
   
上記のベクトルにおいて「和とスカラー倍」の操作をすること
   で、生成される集合(無限集合)。
   「スカラー倍」のスカラーが、実数なら実数体上のベクトル空間R^n
   複素数なら複素数体上のベクトル空間 C^n になります。
   
https://kafukanoochan.hatenablog.com/entry/2022/08/11/100328

   ベクトルの積(内積・直積・テンソル積)
   
(とりあえず、縦ベクトルaを |a>、横ベクトルbは<b| とすると)
   ベクトルv1 に ベクトルv2 を掛ける、内積<v2|v1>、直積|v2><v1|、
   テンソル積 |v2>|v1> も、みんな、縦ベクトルを「1列だけの行列」、
   横ベクトルも「1行だけの行列」と考えれば、
   行列の掛け算と同じことです。
   https://kafukanoochan.hatenablog.com/entry/2020/08/17/002049

   内積が定義されたベクトル空間
   内積といっても、複素数体上のベクトル空間 C^n では、
   エルミート内積 を使います。
   書き方は、R^n と同じ <v2|v1> ですが、v2 の複素共役をとる
   ところが違います。
   要素が有理数のベクトル空間 Q^2 には、(1,1) や (1,0) は存在し、
   その内積は√2 になります。しかし、
   内積が同じ√2 になる (1,0) と (x,0) のxは √2 であり、この (x,0)は
   Q^2 の元ではない、つまり、Q^2 には、いっぱい穴があります。
   これを「Q^n は完備でない」といいます。R^n  C^n は、完備です。
   完備な内積空間を、ヒルベルト空間といいます。

2.射影演算子

   完備な内積空間(ヒルベルト空間)のベクトル |v> , |a> において
   |v> 内に占める |a> の成分(平行な成分)を取り出す操作を
   射影演算といい、その演算子を射影演算子と呼びます。
   |a>の射影演算子は、直積 |a><a| です。 詳しくは ↓
   https://kafukanoochan.hatenablog.com/entry/2023/08/27/200914

3.演算子の固有ベクトル、固有空間

   普通、ベクトルに演算子が作用したら(行列を掛けたら)
   そのベクトルは変わります。
   しかし、演算子a が作用しても、あるベクトルが定数倍x にしか
   ならない場合、そのベクトルを固有ベクトルと呼びます。
   つまり、a |固有ベクトル> = x |固有ベクトル> が成り立つ
   ということです(このxを固有値という)
   固有ベクトルの数は、次元の数だけ存在します。無限次元なら∞個
   (同じ固有ベクトルになることは、ありますが)
   演算子a の固有ベクトルが成す空間を、a の固有空間といいます。
   固有空間は、a が作用するベクトル空間の部分空間です。
   https://kafukanoochan.hatenablog.com/entry/2022/08/15/081832

4.状態ベクトルと密度行列

   これは、線形代数の応用で、線形代数そのものではないですが、
   ここで説明します。
   物理状態が、ベクトルであらわされる時、純粋状態といいます(通常)
   物理状態が2つ以上の異なる純粋状態|v1>、|v2>、、、
   のベクトルの和(=ベクトル)で表されれば、重ね合わせ状態といい
   これも、純粋状態です。

   簡単のために、v1 と v2 の2つからなる場合、ベクトルの直積:
   (√a|v1>+√b|v2>)(√a<V1|+√b<v2|) 
   で表わすと、
   a|v1><v1| + b|v2><v2| + √{ab} ( |v1><v2| + |v2><v1| ) 
   になります。これは、情報が失われていないので、
   元のベクトルの和(純粋状態)と等価です。
   それで、一般に、係数√{ab} を c とした(0 ≦ c ≦ √{ab})
   a|v1><v1| + b|v2><v2| + c ( |v1><v2| + |v2><v1| )
   のような状態を示す行列のことを 密度行列 といいます。
   ここで、aが|v1>である確率、bが|v2>である確率で、a+b=1 です
   https://kafukanoochan.hatenablog.com/entry/2022/08/11/085010

   c = √{ab}か、b=0、a=0 なら、ベクトルで表せますから
   純粋状態 です。
   密度行列で表される状態(0 ≦ c < √{ab})は、純粋状態より
   情報が少ない(失われた)状態です。これを混合状態といいます
   特に c=0の場合:a|v1><v1| + b|v2><v2| は、v1とv2が、
   同時に存在する項(干渉項)がなく(つまり干渉成分がなく)
   古典的に「v1の状態」と「v2の状態」が混じっている状態
   と同じです。これを古典的混合状態といいます。

   混合状態は、純粋状態と確率(上記 a や b)が同じでも
   他の物理量に対する状態の確率は、違ってきます。
   また、混合状態は(古典的混合状態)であっても、空間を十分広く
   とれば、純粋状態にできます(ベクトルで表すことができる)

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