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高校4年生

今の勤務校に赴任した最初の年に出会った高校三年生にに忘れられない生徒がいました。校内でまだ同好会だったESS部をつくった部長で、私はその新顧問として、彼に初めて出会いました。

最初の自己紹介の時、職員室前の廊下で、友達に囲まれた彼はニコニコしながらこう言ったのです。

「俺、留年してるから今高校4年目やねん!」

私の目の前を爽風がざっと通り過ぎたかのような感覚と衝撃に襲われるほど、驚くほど爽やかに、そしてなんでもないようなことを話すように彼はあっけらかんとしていた。そしてとてもハッピーにみえました。

人生で留年した生徒にあったのは、その生徒がはじめて。私の中にあった固定観念がガラガラと音を立てて崩れのが聞こえるほど、素敵な言い方で、一瞬にしてその生徒が大好きになりました。

彼はどちらかというと良い方の生徒ではなかったようでした。遅刻も多かったし、英語も特別できる方ではなかった。でもESS部を立ち上げたのはやっぱり好きだったのだろうし、エネルギーに溢れていたのだと思います。

彼はその年、英語のスピーチコンテストに出場し、入賞しました。
「俺、書きたいことあるねん」といって、ものの20分ぐらいで日本語の原稿を持ってきた彼。1年生の時、学校をサボってどんどん足が遠のいて行ったこと。テニス部の仲間や先生が支えてくれたこと。新しい学年のクラスメイトと仲良くなっていったこと。そしてESS部を立ち上げ、将来はアメリカへ旅行したいと思っていること。全てがとてもうまく書けていて、手直しするところはほとんどありませんでした。

彼のスピーチの出だし、I spent four years in high school... から、会場の観客は全員釘付け。
本当は優勝だったと私は今でも思っているし、今思い返しても恥ずかしくない堂々としたとても立派なスピーチだった。

留年する生徒の多くは転学を希望するのが典型的なパターン。
彼以外にこの10年間、高校を4年した生徒は見たことも周りで聞いたこともない。同じ学校で留年すれば、クラスメイトが先輩になるわけで、全講習会や学校行事、部活動など顔を合わす機会も多く、もっとも避けたい道かもしれません。

彼は笑顔で自分が高校4年目と言えるまでをどんな思いで過ごしたのでしょうか。

今でも彼の写っているESS部の写真を、私は職員室の机に飾ってあります。部員の生徒がみんなジャンプした写真。

その中でも一番高く飛んでいるのはもちろん、彼。

今でも元気にしてますように。

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Kae Takaoka
Teachers of Japanではティーチャーアイデンティティ (教師観)の発見を通じて日本の先生方がもっと自分らしく教育活動に専念し本来は多様である「教師」の姿を日本国内外へ発進しています。日本の先生の声をもっと世界へ!サポートいただけたら嬉しいです。