新パパ論争③ ~息子は新ママもほしいらしい~
前回まで、息子が新パパ(アタパパ)を欲しがっていることについて書きました。
離婚して3年、息子の父親はずっと近所に住んで、毎週お泊りに行っているにもかかわらず、
一緒に住んで遊んでくれる新しいパパがほしいのだとか。
私との二人暮らしが退屈な息子は、家族がほしいみたいなのです。
息子は、私が再婚すればどんどん新しいパパが増えると思っています。
私の年齢的にも、これ以上きょうだいが生まれることはないとどこかであきらめたのか、息子は家族を増やすために、「離婚と結婚を繰り返す」方法を思いついたのかも知れません。
離婚した後も、元夫の両親とは手紙などでやり取りがあり、変わらず息子をかわいがってくれて、息子は夏休みや冬休みのたびに、お泊りに行っています。
いとことの関係もそのままなので、離婚によって特に関係が変わったことはないのですよね。
そうすると、息子的に『また結婚したら、また家族が増える』と思ってワクワクしているのかなと思います。
『なんとポジティブな!』と感心していましたが、彼の自由な発想はそれだけではなかったのです。
先日、息子と新パパについて話していたときのこと――。
「こうちゃんって、本当にポジティブね。離婚は家族を失うことって思っていたけど、離婚することって家族が増える第一歩だったのね」
私は息子に言いました。
「うん、新パパ1号、新パパ2号だね」
息子は爽やかに答えます。『新しいラーメン屋さんの2号店』と変わらないテンションです。
「週末は古パパ(フルパパ)の家にお泊りに行くのでしょ?」
なんとなく、元夫の存在も気に掛けてみました。
「そうだね!」
なんという清々しさでしょう――、
離婚に対して後ろめたさのない息子の表情に、心が洗われます。
「ママが、離婚して結婚してを繰り返したら、めっちゃ家族が増えるわね」
息子によって完全にポジティブナイズされた私。
「うん!」
もう私たちに怖いものなどありません。法律なんてへっちゃらさ。
「それにさ……」
息子はここで目をキラッとさせて続けました。
「それに、どうしたの??」
私もキラっとしながら、つづきを促します。
「それにさ、パパが結婚したら、ママも増えるね!」
「……」
「……」
『……あれ!?』という心のつぶやきとともに、一瞬、言葉を失ってしまう私がいました。
「んね!」
相変わらず無邪気に私を見つめる息子。
「そ、そうね、たしかに!パパが結婚したら、ママが増えるんだね!」
そうです、忘れていました。私の他にも新ママが登場するのでした。
「うん!」
目の前には、クリクリと目を開いた、まっすぐな息子がいました。
「ママが増えるのはステキなことよね!」
なんとなく笑顔で返しましたが、少し複雑な気持ちになっていたのも事実。それはきっと、『息子のママは私だけ!』って思いこんでいる自分がいたからでしょう。
「パパ、結婚しないのかなぁ……」
ワクワクと考えている様子の息子を見ていると、私もワクワクしてきました。
「パパ、モテるからね。彼女いるんじゃない? ちょっとこうちゃん、聞いてみてよ!」
私は提案します。
「え~、ママが聞いてよ~」
息子も提案しました。
「え~ママが聞くの?! ”こうちゃんがさ、新ママほしいらしくてさ、彼女的な人っている?”って聞くの?」
私は確認します。
「うん!」
息子は確認しました。
「いや、微妙だわ! こうちゃんから聞いて!」
私は譲りました。
「いや~、聞きづらいな~」
息子も譲りたいようです。
譲り合いの精神によりこの会話は終わりました。
さて。
離婚することって家族を失うことだと思うから悲しいのかも知れません。
離婚というのは法律上のことで。
別に実際の生活ではその人との関係が変わることはありません。
正直なところ、離婚した直後はけっこうがんばりました。
元夫の実家にはすごくお世話になって感謝していたので、
できるだけ良好な関係を維持したくて、がんばりました。
「離婚してからも家族が増えていく!」
そう思えば、幸せに離婚できるのではないかなってそんな気がします。
子供は案外、それがわかっていて――、
法律に縛られているのは大人の方なのかな、なんていう気もしました。
そもそも私自身が法律や常識に縛られているから、
「離婚によっていろんな人との関係が切れないように過剰に努力してしまった」とも思えるのですよね。
そんなに努力しなくても離婚ぐらいで関係は切れないのかなって、
子供を見ているとそんな気がします。
子供ってしゅごい。