2016年にNHKで放映された『トットてれび』の話。2016年当時に書かれたものの再掲です。
細馬宏通『今日の「あまちゃん」から』(河出書房 2013)からお蔵出し。7月以降の文章は2013年の放映時に書かれていたものです。
ある作品について長く考え続けることができるとき、その作品にはある種の居心地のよさがある。わたしにとって「ドライブ・マイ・カー」はそうした居心地を持つ作品であり、三時間以上あるこの作品の時間に何度でも浸りたいと思っている。この居心地のよさがどのような考えをもたらすのかはっきりわかっているわけではないけれど、わたしの考えはどうやらこの作品の隅に居座ることを決めたらしいので(スピッツの古い歌みたいに)、しばらくの間、思いつくことを書き留めていこうと思う。
なお、このマガジンに収められた記事は、いずれも映画の内容に分け入るものであり、映画を観ていない人の楽しみをスポイルする危険がある。また、映画を観ずにあらすじをつかみたいという向きには何ら役に立たない。ここまで読んでまだ映画を未見の方には、今すぐブラウザを閉じ、映画館に直行し、このすばらしい映画を同時代の人間として体験することをお薦めする。