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哲学的すぎるやりとり。
イスは魚がどーっちだ!?
娘はクイズを出すと言ってそう言った。
私はその時、自分の頭を丸裸にして汗を流すしかなかった。
静かに娘の肩を抱き、そこにある薬液の入ったポンプを押す。
(ヒント:ここはお風呂場です)
そもそも何もかもが分からない。
そのイスはオジサン的な何かかも知れない(オジサンという魚がいます)
娘はどっちと言ったが、そのどっち、つまり比較対象が分からない。どっち、というなら、あっちとこっちがあるはずだが、私は片方しか伝えられておらず、全く分からないのだが、もしかしたらこれは無か魚かの2択なのか、それとももっと別次元の話なのか、何気ない会話の中にもう一つの言葉があったのか、そもそもこの空間はなんなんだ、これは液体なのか気体なのか、そもそも私とはなんだ、この薬液の中身は己の身を溶かすのでは(石鹸液なので多少角質は落ちます)とぼんやりした頭で(のぼせてる)で哲学をした。
「あっじゃあやめてさ!!」
はっ!!私は石鹸液を泡立てながら我に帰る。
何を今更やめると言うのか!?と思いながらハイハイと母親らしく相槌を打つ
「じゃあさじゃあ、イスはカイでしょうか魚でしょうかどーっちだ!!」
娘は体を泡だらけにされながらそう話す。
かい
それは貝なのか界なのか下位なのか、お友達のカイさんなのかまったくもって分からない。解なのかも知れないがそれを証明するものがない。
とは考えず、普通に貝だと思ったので、貝かぁ…たしかあつ森では貝を集めると椅子が作れたはずなので、魚より貝のがイスに近いよなぁ…とおもいながら
「魚かな!!」
と全力で答えていた。
あっしまった!!と思ったが既に時遅し。
口から一旦出てしまった言霊達は、勝手気ままに宙を舞い、その胸に影を落とす。
「うーん、この話いいや。」
そう娘は言った。
いやよくねぇよ!!!!
私は
今、
風呂から出て既に数時間経っているがそう感じた。
聞きたい。その答えを聞きたい。
その先に何が待ち受けるのかは知らないが、その先に行ってみたい。その先のあなたに会いたい。
私は彼女の下僕のようになり、足の裏を洗う。
その娘は楽しそうにクイズを出す。
どうでもいいけどどうでもよくない、日々のやりとり。これらの一つ一つが娘の、否、家族の命運を分けているのだと思うと気が抜けない。
とりあえずイスは魚なのか。
魚がイスなのか。
明日の夕食が魚なのか。
その魚は自由に泳いだ事はあるのか。
自由とは。
絶望的なほどの空間が広がる。
それは狭い賃貸の風呂場をぶち破り、何億光年も広がっているように見えるが、それは私の頭の中の一部でしかない。
哲学は唐突に終わりを迎えた。
「ママもクイズを出して」
私はクイズを出した。
娘にもわかる簡単なクイズ。
簡単で、それそれは恐ろしく簡単なのだが、その理由はは誰も知らない。易しく簡単な答えのクイズ。
「ママはにゃーこたんの事がにゃーにゃーにゃーで、にゃにゃにゃにゃに゛にゃーでしょうか?そうでないでしょーか?」
静寂を突き破る言葉はいつも同じ、
にゃー
である。
にゃーといえばにゃーのように、私は娘をにゃーしている。娘は答えた。
「にゃにゃにゃにゃにゃーの方」
その時娘は、泡だらけになって笑っていた。
それでよいと思った。
娘は泡を流し、その大きな器に入った温かい水の中にゆっくりとその身を沈め、颯爽とそこからでる。
その瞬間、さわやかな風が吹いた、気がした。
※つい最近、日々の日常を書いてくださいとリクエストをいただいた
気がした
ので書いてみました。
※リアルににゃーでにゃーな歌があるので、貼っておきます。エヴァ知らない人も分かりますヨ。