
今すぐあなたに会いたくて
子どもたちを保育園に送り届けると、気がついたら私は駆け出していた。
住宅街の中にある、あの人のいる場所に。
あの瞬間、あの人に会えば、こんな毎日から抜け出せる気がしたから。
街の調剤薬局。
私は駆け込んだ。
「生理痛がめっちゃひどいんですけど!!」
これは、恋愛小説に擬態した、私の月経物語。
騙された人残念でした。グヘヘへ。ごめんごめん。
性の多様性、LGBT、色々な考え方があるけれど、あなたの愛する人に月経がある確率は低くはないのは明白。
あなたの愛する人が、生理、月経で悩んでいるとしたら?力になりたい助けてあげたいと思うのは、当然の欲望だ。
その欲望と情熱を、思う存分引き出したい。
これが、私がこれを書く理由である。
6月某日、私はしとしとと雨の降る中、産婦人科隣の調剤薬局へ歩いていた。
「薬の飲み方を聞きたいんですけど」
その時私は月経中の最中で、押しては返す痛みの波に、どうしようも無く悶えてた。
きっかけはこうだ。
私は実はもう10年来のピルユーザーで、途中2回の出産を挟みながらも、あの小さなピンクの錠剤(ピル)1日1回、決まった時に飲むだけで、私の月経スタイルは安定していた。
しかし、どうも最近様子が違っている。
痛い痛い。痛いのだ。
私の飲むピルは最大120日間月経が来ない。
にも関わらず、一度月経がきてしまえば、最低5日間は鎮痛剤と吐き気どめが欠かせない。
5日間だよ、5日間。今回に至っては、すでに6日間痛い。早速カロナールを服用してる。
え、カロナールで効くの?じゃあ軽い方じゃん。と思ったそこの貴方。バカ言え。適材使用、用法容量っちゅーもんがあるんだ。
私は超絶胃弱マンだから、空腹にロキソニンをバカスカ入れらんないし、ボルタレン座薬を尻に押し込むほどは痛くない。
そうそう、私はかつて陣痛なみ生理痛だったから、ボルタレン座薬も経験済。
それで、今この瞬間の適任者はカロナールと判断している。
でも、それらを服薬したとしても、いつも通りには動けなくて、結局の所、布団でゴロゴロするのが1番身体に負担がない。そんなわけで、月経時は時間の許す限り、痛み止めを飲みながら寝込んでいた。
痛み止めを飲まないと、それを体が欲して、身悶え喚き泣き叫ぶしかないから。
(訳:痛くて寝られない。)
ピルは毎日決まった時間に服用しているのに、まあまあの不正出血(月経以外の性器出血)が来てしまった。ああ…これはもう残念ながら止まらず月経になってしまうな…。と思い、ピルの服用をやめ休薬期間とし、私は本格的な月経開始を待つ。
いてぇ。
それは割とすぐやってきた。
痛くて吐き気がする。心なしか足も痺れている。私はすぐさまロキソニンを飲み、痛みが引くのを待った。
そんなわけで、結構古参?のピルユーザーのくせに、その痛みにはかなり悩まされて、もうこりゃ行くしかないと、産婦人科隣の調剤薬局に来たのだ。
薬剤師に症状について一通り説明し、他の薬剤の選択肢があるかどうか尋ねる。切長な目をした美しい薬剤師はこう答えた。
「うーん、一度診察を受けられた方がいいと思います」
全くもってその通りだ。
私はその意見に同意した。幸いにも我が子は2人とも保育園。すぐさま私は隣の産婦人科へ移動した。
いつも混み合う産婦人科には、若い女性たちがいっぱいいた。しかも平日の午前中だ。
みんな幸せをお腹に入れた、やさしいお母さんたちがいっぱいいる。
あぁこの空気感だけでも幸せなんだよな〜、赤ちゃんにお母さん。自然とお母さんになるために丸みを帯びていくその身体。全てが幸せなのだ。つい笑みが溢れそうになる。
あぁ、マスクな世の中でよかった。あぁ女性でよかった。もし私が男性だったら、すぐさま病院からつまみ出され、警察を呼ばれ、職質を受けるか勾留させられるかして、永遠にこの場から出禁になるに違いない。
と、妄想したところで、私の腰はそれなりに痛い。先程から拳骨でおのれの腰をバカンバカン殴りつけている。
招き入れられた産婦人科の受付で、どこからともなく消毒用アルコールの匂いがして、さらに吐き気を催した。
あまりの混み具合にいつも無愛想な受付が、その様子をみて、横になるかどうか聞いてくる。正直、そこまでのレベルではない。
私はそれを断り、椅子でバブルスライムのようになって、大変だらしない姿勢をとって待つことにした。
すると先程の受付が飛んできてこう話す。
「診察の予定を早めることができますが」
え、そうなの。バブルスライムは普通のスライムに姿をかえる。
いやでも、先に待ってる妊婦さんや女性達に悪いしなぁ、とそのまま口に出すと、
「体調が悪そうですので、大丈夫ですよ」
そう受付は話す。私はバブルスライムになってしまったことを猛烈に後悔した。
しかし痛いもんは痛い。うっかり帰って、痛みと吐き気で家から出られなくなるのも困るので、そのまま早めに診てもらうことにした。
30分ほどまち、診察となった。
「とにかく月経痛、生理痛が辛いんです」
私は思いの丈をぶちまけた。
120日に一度でも流石に5日以上、痛み止めを服薬しまくり、食事が喉を通らないのは辛かった。私は食事をすると痛みが強くなるので、食事という行為がまともにできなくなる。
痛み止めを飲んでもスルスルと、いつものように動けないことも、私には無性に腹立たしかった。
「とりあえず内診、してみようか」
そう医師に提案され、月経中だと断りを入れる。ノープロブレム。こちらは問題ないですよ、と医師はいう。
私も何も問題なかった。それよりこの痛みの原因が知りたかった。なので、すぐさま下着を脱ぎ捨てて、ピンクの柔らかな診察台にのった。
「いたいいたいいたい!!」
私は叫び(っつーほど声はデカくない)身を捩っていた。内診は、本来痛いものではないんだけど、子宮内膜症のそれが邪魔をするのか、ある一定の場所にだけ、ガチンコに痛かった。鈍痛の最上級な痛みがする。
打てば響く。そんな感じで内臓にそれはモロに来て、再度吐き気を催した。
ヨタヨタになりながら、診察室にもどり説明を聞く。とりあえず病変はないのだという。
安堵したのか絶望したのか分からないまま、ぼんやりとしていると、月経こない薬もあるよ、と、聞き逃しそうなくらい自然な口調で、さもありなんといった感じで医師は言った。
「ええー!!そんなんあるんですかー!!それにしますそれ飲みます!!」
私はそれを聞いた瞬間、目を輝かせそう口走っていた。考えるより、先に。
そんな訳で、今日のところは追加でカロナールをもらい産婦人科を後にした。まだピルが60日分くらいあったので、それを飲み終えたあと、例の月経が来ない薬、即ち黄体ホルモン剤を飲むことになった、
約2ヶ月後には、新しい生活がやってくる。
私は高鳴る胸をどうにかこうにか普通のおばさんに擬態させながら、もときた道を帰った。
ね、月経の苦労分かった?大変だと思った?
こういう人、決してすくなくないからね。
その事実に対して、もっと驚こうね。
最近、月経の話題は一昔前よりすごく多くなった気がする。
それ自体はすごく良いことだから、私は猛烈に喜んでいるが、猛烈に悲しんでもいる。
なんでこんな当たり前のことが、2021年にやっと騒がれているんだ。日本は本当におくれているんだな、と私は思う。
アメリカでは、初経がはじまったら産婦人科に当たり前のように行くという。20年前、宇多田ヒカルがそう話していたと記憶する。
ところが日本はどうだ、未だに中高生が産婦人科なんて恥ずかしいと言われるレベルじゃないか。
なんで、そんなことないよ。むしろ行ってよ、産婦人科。みんなには私みたいに苦しんでほしくないし、アスリートが月経の悩みを告白するたびに、そう思うんだ。
痛みがあろうと無かろうと、月経がはじまったら定期的に産婦人科にいこう。
それでいいじゃないか。
父子家庭で、娘に対して何もしてあげられないというお父さんも、産婦人科に連れて行ってあげて、娘さんからノープロブレム!の言葉が聞けたら、それでいいじゃないか。(診察室には、本人が同意しない限りついていかないこと。同性でも同じ。プライベートは守りましょう。)
ぶっちゃけ、勢いだけの、ようわからん文章なので、ここから先は一応時系列で、色々書いておく。
色々考えたんだけど、やっぱり、
「月経がはじまったら産婦人科に定期受診。」
が、1番いいと思ってる。
黄体ホルモン剤のことも、飲んだらまた記事にしたい。
11歳
初経が来る
12歳
はじめて生理痛を体感。薬は不要。
13歳
3日以内かつ少量の月経が1年続く。痛みはなし。おそらく無排卵の月経と思われるが、詳細不明。産婦人科で診察をうけたいと希望するが叶わず。
15歳
月経期間は5日ほどになり、3月に一度ほど、鎮痛剤が必要な痛みが来る。
17歳
月経痛で、授業中に保健室に行くこと数回。鎮痛剤は生理用品と同じ場所に入れ、常に持ち歩く。
19歳
月経痛は悪化。月経時は痛み止めを必ず服用。陣痛の最大時の7割くらいの痛み。月経時に排便痛も出始める。
20歳
初めて産婦人科を受診し、内診も体験。
怖かったが潤滑ゼリーを塗りたくられるので、痛くはない。月経痛について相談する。
月経時は痛み止めがないとのたうち回るレベル。陣痛と大差ない。痛み止めはかならずストックを切らさないようにしていた。月経時の排便痛も強い。
21歳
子宮内膜症と診断される。
ピルと漢方、片方もしくは両方を勧められるが、漢方のみ服用する。
22歳
引っ越しのため産婦人科を変更。検査の結果、子宮内膜症はかなり良くなってるとのこと。
漢方がよく効き、腫瘍マーカー値が激減。
月経痛も緩和。
23歳
子宮頚がんワクチンを打つ。
24歳
月経痛はまた悪化。
ピルの服用を勧められて、服薬開始。漢方も継続。生理周期は一定となり予定が立てやすくなる。出血量も激減。
25歳。
月経痛は最大に。陣痛とあまり変わらず。
排便痛と手汗がすごい。月経時はひたすら寝てる。痛みのコントロール不良が理由で、ピルの種類がかわる。
27歳
結婚し、妊娠。
28歳
出産。出産時に、陣痛と月経痛があまり変わらなかったことから、自分の月経痛のヤバさに気がつく。
29歳
月経再開。月経再開2日目で産婦人科受診。再びピル服用開始。新しくでたヤーズフレックスにより月経が最大120日間来なくなる。
30歳
再び妊娠。
31歳
出産
と、こっからさきは、29歳と同じなので割愛。年齢バレちゃうし。
で、このノートと同じ流れになる。
とにかくさ、月経がおかしいなと思ったら産婦人科にいくんだよ。今すぐ。思春期の女児を持つ親も連れて行くんだよ。
みんな不安だし、恥ずかしい気持ちも分かるけど、我慢して病気になる方が辛い。
アスリートだったら思い切りパフォーマンス出来ないのはすごく悲しいはず。
そもそも何が異常な月経か分からない人も多いだろう。
だから産婦人科に行こう。
健康な、女性としての身体を手に入れるために、産婦人科は強い味方なのだから。