プラド美術館展@国立西洋美術館
国立西洋美術館で「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」を観てまいりました。
展示されているほとんどが大きなキャンバスに描かれているので、そんな大サイズの絵がバーンと並んでいる展示の光景はまさに豪華でした!スペイン国王らによって宮廷に集められ飾られていた絵画たちなので、The高そう〜!っていう風格ある絵が多かったです。鑑賞しながらちょっぴり宮廷へ遊びに来たような気持ちになりました。
今回のキービジュアルは、ベラスケスによって描かれた王太子バルサタール・カルロス騎馬像。この絵に描かれている当時は5歳。わーカルロスくん、5歳にしてご立派!(そう描けるベラスケスすごい)キービジュアルだとトリミングされていて見えないんだけど、この乗っている馬のお腹、実はすごーく丸く描かれているの。この絵は上に飾る用に作られたようで、下から見た時にいまにも上から馬が飛び込んできそうな躍動感を与えることを狙っているんだって。確かに迫力たっぷりでした!いいな、私もこんな風にかっこよく絵に描かれたい〜と羨ましくなっちゃう。
ちなみにこの左のビジュアルも同じくベラスケスによるもので、メニッポスという古代ギリシアの哲学者を描いたもの。殊更古代風にもせず理想化もせず、ベラスケスが生きた当時(この絵は1638年頃)のひとりの老人のように描いている。少しユーモアあるような笑みを浮かべていて、すごく生き生きして親しみやすく見える。こうやって過去との距離を近づけてくれたりするのは間違いなく芸術の力なんだろうなぁと思う。
この展示、「風景」「肖像」などいくつかの章立てがされているのだけれど、入ってすぐに「芸術」という章があって、そこには彫刻家が彫刻を制作している場面を描いた絵画(これもベラスケスによるもの)や、画家がマリアを描いている場面を描いた絵画など、ある意味芸術家の仕事場面を描いた絵が数点飾られている。そこに描かれた芸術家の眼差しや、それを描こうとした画家の眼差しから芸術家としての覚悟や誇りが伝わってきた気がして、強く印象に残ったな。芸術家は作品を通じて新たな命を創り出す創造主であり、自分自身も創造主であることを強く覚悟してたんだろうなぁということが改めてひしひし感じられました。また、同章で、単純に面白かったのはアロンソカーノという画家の聖ベルナルドゥスと聖母という作品で、マリアの聖像が聖堂で祈っている聖人に授乳している場面を描いた絵画。マリア様の恵みの優しさや、身魂注いで製作された彫刻(芸術)は新たな命を持ち、奇跡を起こすんだ!こんなに神秘の力を持っているんだぜ!っていうことを描いた絵だと思うのだけれど、聖堂に飾られた聖像からピューって母乳が飛んで、聖人の口に見事に入ってる図は結構シュールでした!笑
隣の東京都美術館ではブリューゲル展がやっているけれど、プラド美術館展でも花のブリューゲルことヤンブリューゲル(父)の作品が2点ほど観られます。やっぱりヤンブリューゲルの描く花は透明感があって、私はすごく好きだ。これ、絶対ブリューゲル展に飾ったほうがいいのでは?ブリューゲル展でメイン級の扱いしてあげたほうがいいんじゃ?って思っちゃうくらい良かった。なので、ブリューゲルファンはこちらもお見逃し無く!
ベラスケスの作品が全7点、それ以外にもヴァンダイク、スルバラン、ルーベンス、ムリーニョなどなど有名画家の絵画が見れる贅沢な展示なのだけれど、プラド美術館とベラスケスを名乗るならやっぱラス・メニーナス観たいよなぁとか思っちゃった。だって今回の展示のミュージアムショップにはラス・メニーナスのグッズ売ってたりするんだもん...。あとボスの快楽の園のグッズも...。やっぱりこれらを観るためにいつか本場に行かなくてはという気持ちが強くなったのでした!ちなみに今回の展示が約60点に対して、プラド美術館は37000点収蔵してるんだって。何日かけたら見切れるんだろう!笑
とやかくいいつつも国立西洋美術館は常設展が本当に素晴らしいので、それだけでも元が取れます。わたしはポールシニャックがとても好きで、いつもサントロペの港を観ては、うっとりして帰ってきます。夢の世界のようなパステルでファンタジーな世界に思いを馳せ、キラキラ反射する水面に心を弾ませて。でも、その港ではきちんと人の営みが行われていて、妙な現実感もあったりして、この人たちはどんな気持ちで働いているのかな?とか考えたり。緻密に考えられているだろう色合いだけれど、近くで見ると点描のマチエールは、意外と大胆にも見えて、近くから遠くから、何度も何度も見てしまう、大好きな絵です。