四季のフォトスポット 初夏・向暑の候
1.京都
1_1 当尾の里を歩く
◆岩船寺
古来、都から少し離れたこの「当尾の里」で沢山の僧侶が修行に打ち込んでいた。その名残りか僧侶が過ごした庵はお寺となり、道中には多くの石仏が見られる仏教色の強い土地となったという。
とくに岩船寺から浄瑠璃寺へ至る道は、その昔、僧侶が修行を積んだ道として多くの石仏や石塔が残されている。
京都府木津市にある岩船寺は隠れたあじさいの名所。いかにも山寺といった趣がある三重塔と紫陽花のコラボは風情を感じさせる。
◆石仏の道
岩船寺から浄瑠璃寺へは、平坦な下り坂を歩いてもいいが、石仏を撮るには、修行僧があるいた道をいく必要がある。この道は大きな石を積んだ急な階段があり、重いカメラを持って歩くのはまさに修行をつんでいる思いだったが、その苦労が報われて、石仏だけでなく、若竹や水玉の花など珍しい被写体に出会うことができた。
◆浄瑠璃寺
当尾の里、最後に訪れた浄瑠璃寺は、奈良時代に聖武天皇が僧行基に命じて建立されたと言われている寺。
寺の名前は三重塔の内陣に安置されている薬師如来の浄土「瑠璃光浄土」に由来する。
この寺の紫陽花は、岩船寺ほど多くはないが、古い建物と花の紫が見事に調和していた。
緑深い境内には、池を中心とした浄土式庭園があり、ここにも所々、紫陽花が咲いていた。
1_2 三室戸寺
「花の寺」として知られる宇治の三室戸寺。
山門の右手に広がる「予楽苑」には、西洋アジサイ、額あじさい、柏葉アジサイ、幻の紫陽花・七段花等五十種、二万株のあじさいが咲き乱れる。
六月初旬から七月上旬にかけて見ごろを迎え、紫絵巻のような素晴らしい景観が広がる。
『あじさい寺』とも称されて、多くの拝観者が訪れる。
1_3 善峯寺
善峯寺は、京都市西京区にある善峰観音宗の本山の寺院。
西国三十三所第二十番札所。境内各所から京都市街や比叡山を一望できる。
野をもすぎ山路にむかふ雨の空 よしみねよりも晴るる夕立
桜や紅葉の名所として知られているが、初夏のあじさいが咲く頃も実はお薦めのカメラスポットだ。
京都でも一、二を争う規模で咲く一万株の紫陽花が山肌一面を埋め尽くす様子は圧巻だ。
1_4 祇園白川
石畳の道に紅殻格子の町家が並ぶ、風情ある祇園白川の巽橋付近。
夜になると町家の外灯や裏座敷から漏れる明りで意外に明るい。
ライトアップではなく、町家の明りに照らされた紫陽花を撮ってみようと思い立ち、夜の白川沿いを歩いた。
夕方から降っていた雨が丁度あがり、濡れた石畳みに反射する柔らかい光りが、紫陽花を照らし、一味違う写真を撮ることができた。
1_5 福知山の観音寺
観音寺は「関西花の寺第一番札所」に指定されており、関西で最も古い「あじさい寺」と遠方からの参拝者も多い。
毎年六月上旬~七月上旬には百種・一万株の紫陽花が境内を彩り、道の両脇に咲き誇る景色は、まるで万灯を思わせる。
特におすすめスポットは、仁王門前に咲く紫陽花と、本堂の窓ガラスに映る紫陽花。
窓ガラスの内側に黒いカーテンを閉めているため、庭の紫陽花を鏡のように反射する。
1_6 竜安寺の鏡容池
石庭で知られる「龍安寺」だが、睡蓮の咲く「鏡容池」も知る人ぞ知るカメラスポットた。
山門をくぐるとまず、四季折々の草花を映し出す広大な鏡容池が広がる。
静かな水面のあちこちに咲くたおやかな睡蓮の花を見ることができるのは, 五月中旬頃から八月下旬。
睡蓮は朝早くに花を開き、昼過ぎには閉じ始めるため、最も美しい姿を撮るには朝早く行くのがお薦め。
1_7 瑠璃光院
「瑠璃光院」は、京都市左京区にある寺院。
約一万二千坪の敷地に数寄屋造りの建物と日本庭園があり、風情溢れる名建築、名庭として知られている。
通常は、文化保護のために非公開だが、春と秋のみ期間限定(令和四年の春は四月十五日~六月十三日)の特別拝観を行っている。
書院の黒塗りの机の天板に反射して映る木々のリフレクションの景色が人気。春は青もみじ、秋は真っ赤に染まる紅葉がまるで一枚の絵画のような美しさとなる。
1_8 宇治・平等院庭園
平等院庭園は平安時代につくられた最古の浄土庭園で、国の史跡および名勝に指定されている。
その中核となる鳳凰堂は中央の「中堂」、その両側に「北翼廊」「南翼廊」、中堂の後ろ側には「尾廊」が控えるという四棟から構成されている。
正面から見ると鳥が翼を広げているように見えることに加え、屋根の上に一対の鳳凰が立っていることから、江戸時代初期ごろ「鳳凰堂」と呼ばれるようになった。
阿字池の中心に建つ鳳凰堂は、その美しさを際立たせ、春は桜と藤。夏は青紅葉と蓮。秋は紅葉。冬は雪景色。
四季折々に素晴らしい光景を見せている。
1_9 三千院・ わらべ地蔵と紫陽花の庭
その起源は八世紀、最澄が比叡山延暦寺を建立の際、梨の木の下に結んだ庵が始まりと伝えられている。明治維新後、現在の地大原に移り「三千院」として千二百年の歴史をつないでいる。
その由来は、心のわずかな働き(一念)の中にも、この世のあらゆる要素(三千)が備わっている、という意味「一念三千」という天台宗の教えから。
三千院の魅力は、彫刻家の杉村孝さんが手掛けた小さくて可愛らしいお地蔵さん「わらべ地蔵」。庭のいたるところで見ることができる。
2.大阪
2_1 万博公園のあじさいの森
梅雨のシーズンに美しい花を咲かせるあじさいは、 梅雨から初夏にかけての風物詩として親しまれている。
自然文化園西側の「あじさいの森」では、ガクアジサイなどの約三十品種・約四千株の青や紫、ピンク、白、様々な色合いのあじさいが鮮やかに咲き誇る。
この森の特徴は、広葉樹の林と上手く融合していること。
大きく育った森の足元に広がるアジサイの森は庭といったタイプとは違った趣が一番の魅力となっている。
3.滋賀
3_1 平池のカキツバタ
箱館山を越えた谷あいの平池では、例年五月下旬~六月上旬、カキツバタが淡紫色の花を咲かせる。
一万本とも言われるカキツバタが水鏡に浮かぶ幻想的な光景は、県内屈指の人気スポットだ。
3_2 畑の棚田
滋賀県の北部、比良山系の山々に囲まれて、ゆっくりと時間を刻んで出来た小さな山里に、千古の昔から代々引き継がれ守られてきた棚田がある。
滋賀県では、唯一「日本の棚田百選」に選ばれた「畑の棚田」だ。丘陵地を水田に改良し稲作を主として美しい景観を保っている。
3_3 余呉湖あじさい園
その昔、八人の天女が白鳥の姿で舞い降りた、という羽衣伝説で有名な余呉湖の畔に一万株の花を咲かせる「余呉湖あじさい園」。
六月下旬から七月上旬にかけて、白や青、ピンクに紫といった様々な色の、紫陽花が咲き、余呉湖畔を埋め尽くす。
別名「鏡湖」と呼ばれる湖の美しさと共に心を和ませてくれる。
4.兵庫
4_1 永沢寺
応安三年、後円融天皇の勅願を受け、通幻禅師により曹洞宗禅道場として開山した永沢寺。
関西花の寺二十五カ所霊場第十一番札所として、花しょうぶ、牡丹など季節の花が観賞できる寺として有名。
一万坪の広さを誇る、本格的な回遊式庭園には、全国各地から選ばれた650種3百万本の花しょうぶが集う。
5.岡山
5_1 神庭の滝
神庭の滝は「日本の滝百選」にも選ばれた、高さ百十m、幅二十mの中国地方随一のスケールを誇る名瀑。
断崖絶壁を流れ落ちる滝の豪快さはいうまでもなく、まるで白布をまとったようにも見える水しぶきは神秘的だ。
下流には、草葺き屋根から雨のしずくが落ちる姿に似ている「玉垂の滝」がある。
6.鳥取
6_1 大山のブナ原生林
大山寺から県道百五十八号線を南に進むと「桝水高原」がある。
そこから県道四十五号を東へ進むと、一の沢、二の沢、三の沢と大山の沢を横切る道路沿いに西日本屈指といわれるブナの原生林が張り出し、季節ごとに新緑や紅葉の自然のトンネルの中にカメラポイントが点在する。
7.岐阜
7_1 徳山ダム
徳山ダムは揖斐川の最上流部に建設された多目的ダムだ。
ダム建設に伴い徳山村全村が水没したが、揖斐川の源流からこのダム湖までは産業、船の運航、人の生活が一切営まれておらず、真に澄みきった水が湛えられたこの湖は、揖斐川町の観光資源一つとして、初夏の新緑、秋の紅葉の時期には多くのカメラマンが訪れる地となった。
六月六日、雨上がりのダム湖を訪れた。
水面の縞模様、木々の新緑、立ち枯れの林。
様々の角度からレンズを向け、興趣つきないひと時だった。
8.長野
8_1 白馬・栂池自然園
雪解けの始まる六月上旬から七月中旬になると栂池自然園に群生するミズバショウが見ごろとなる。
六月二十四日、栂池自然園入り口にあるミズバショウ湿原を訪れた。
白馬三山を間近に感じながら、ミズバショウの可憐な花の間に続く木道を歩く。
ミズバショウが咲くと、それを待っていたかのように他の高山植物も我先にと咲き始める。
雨上がりの木道沿いに小さな白い花が咲いていた。雨に濡れると白い花が透明になることで有名なサンカヨウだ。
9.富山
9_1 五箇山相倉合掌造り集落
険しい山岳地帯だったゆえに秘境とも呼ばれ、伝統的な合掌造りをはじめ、いにしえの景観や文化が今でも大切に守られている五箇山相倉合掌造り集落の民宿に宿泊した。
五箇山での伝統的な生活を実際に体感し、昔の生活文化を肌で感じることができた。
人の住む合掌造りの家屋と、その周辺の景観は、伝統的集落の価値が高く、平成七年十二月、五箇山菅沼合掌造り集落、白川村荻町合掌造り集落とともに、世界文化遺産に登録された。
9_2 五箇山菅沼合掌造り集落
相倉合掌造り集落に宿泊した目的は、この集落から東へ約二㎞、菅沼合掌造り集落で開催される「春の宵」ライトアップの撮影だった。
各民家を照らす照明が点灯されるまで、昔懐かしい「チンドン屋」が田んぼのあぜ道を練り歩き、民家の前では日本最古の民謡「こきりこ」の歌と踊りが披露されていた。
十九時二十分、漸くライトアップが始まり、早苗の水田に映る「逆さ合掌」が美しい姿を現した。
ひとつひとつの合掌造り家屋がぼんやりと照らし出される光景はとても幻想的で、そこはまるで別世界だった。