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「世界の絶景」 10. ケニアを旅してその3.マサイマラ国立保護区
ケニア最大のライオン生息地として知られるマサイマラ国立保護区。
ケニア南西部、タンザニアとの国境沿いに位置し、総面積は1,812k㎡(ほぼ大阪府と同じぐらいの大きさ)。名称はマサイ族とマラ川に由来する。
マサイマラ国立保護区と、その周辺は大草原・疎林体・沼沢地・川・丘陵と変化に富み、生息する動物の種類とその数はケニアでも屈指の規模を誇る。
“国立保護区”は、車輌の草地への乗り入れ規制が緩やかであり、サファリカーが動物のそばまで近づいて観察・撮影できる。
標高1,600メートルを超えるところに位置するマサイマラは赤道直下とは思えないほど涼しい。1年を通じて朝晩はセーターを必要とするくらい冷え込むそうで、私達が訪れた4月も、夜、レストランでは炭火で暖をとり、布団の中には「湯たんぽ」が入っていた。しかし、日中は日差しが強くTシャツ1枚ですごせるほど暑い。
1.「マサイマラ」へ
朝8時、サファリカーに乗ってアンボセリを出発。およそ4時間で首都ナイロビに到着した。
昼食後、再びサファリカーで空港へ。ここから小型セスナ機でマサイマラへ向かう。30分あまりで草原の中の空港に着陸した。「随分早いな~」と思っていたら、「マサイマラの空港は、いま集注豪雨で着陸できないため、一つ手前の空港で待機します」というアナウンスがあった。待つことおよそ30分、漸くセスナは飛び立った。
マサイマラの空港へは10分ほどだった。空港といっても草原の中に滑走路があるだけで、建物は全くなくトイレもない。
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迎えに来たサファリカーに直接乗り込んだ。
ロッジへの道は、さきほどの豪雨で橋が沈んでしまって通れなかった。
パークレンジャーの車が迂回路へ誘導してくれたが、想像を絶する悪路だった。四輪駆動といえども右に左にハンドルをとられ、上に下にバウンドしながら走ること40分、悪戦苦闘の末、漸く「ムパタ・サファリ・クラブ」に着いたときにはクタクタだった。
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2.バルーン・サファリ
■気球に乗る
早朝、熱気球に乗ってマサイマラの壮大なスケールを上空から楽しむ、というバルーン・サファリに参加した。
夜明け前の午前5時、懐中電灯の灯りを頼りにサファリカーに乗車し、気球乗り場へ向かう。
一行24名は、12名ずつ2基の気球に分乗した。いよいよ空中ドライブの出発だ。
夜明け直後のさわやかな空気の中、バーナーは勢いよく焚かれ、あっという間に地上を離れた。
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気球は大空に吸い込まれるように上昇する。まったく揺れることなく、横に滑るような感じで移動する。この独特の浮遊感、とても不思議な乗り心地だった。
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■上空からみたマサイマラ
空からみるマサイの草原は実に広い。朝靄がうっすらとかかった薄緑の大地がどこまでも続く。その大地を蛇行しながら流れる川。川の周りには深い緑の木々が生い茂る。
眼下の草原には、普段目にするのとは全く異なる動物たちの姿が展開していた。
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■サバンナで朝食
1時間あまりの飛行を終えて気球は広々とした草原に着陸した。
私達は無事到着できたことをシャンパンの乾杯で祝福した。
気球が降りた近くでは、スタッフがすでに待機していて、アカシアの木の下にしつらえた仮設厨房で、朝食の用意をしていた。
朝食はバーナーを使って焼いた温かいベーコン、ソーセージ、スクランブルエッグとパン。熱々のホットケーキもあった。デザートには新鮮なフルーツなど、ホテルなみのゴージャスなものだった。
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3.ゲームドライブ
サファリカーでサバンナを駆け巡るゲームドライブは、野生動物の美しさと、ダイナミックな自然を存分に楽しむことができる。
昼間、動物たちは日陰で休んでいることが多いため、彼らのリズムに合わせて、ムパタ・サファリ・クラブのゲームドライブは、朝食前の2時間30分(6時00分~8時30分)と午後の3時間30分(15時00分~18時30分)の1日2回、6時間が標準だが、この日私達は、タンザニア国境のマラ川まで行くことになり、ロッジとサバンナとの往復時間を節約するため、朝6時~12時までの6時間を一度のゲームドライブに当てることにした。
サファリカーは、8人乗りで、後部座席は真ん中に通路があり、左右の窓側に各1列3席が並んでいる。1席ずつ肘掛がついていてかなりゆったりとしている。
天井はオープンになっていて、写真を撮るときは立って天井からカメラを向けることができる。
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■マラ川のカバ
ケニアとタンザニアの国境をまたぐように流れるマラ川。
ここでは年2回、ヌーの大移動が見られる。
11~1月、ケニアのマサイマラは乾季のため、ヌーの食料となる草が少なくなる。この時期、タンザニアのセレンゲティ国立公園では雨季がはじまり、平原は草花に彩られる。
マサイの言葉で「果てしない平原」を意味するセレンゲティは新芽で覆われて、草食動物たちを引き寄せる。
マサイマラやヴィクトリア湖周辺に散在していたヌーたちは、新鮮な食物を求めて群をなして移動する。
7月頃になるとその逆、タンザニアのセレンゲティからケニアのマサイマラへ再度移動を行なう。
しかし、セレンゲティとマサイマラの間にはマラ川があり、川にはワニ、対岸にはライオンやハイエナが待ち構え、渡ろうと集まってくるヌーたちを躊躇させる。緊張が最高潮に達するとき、意を決したヌーたちは果敢に川へ飛び込み、やがて狂乱が巻き起こる。
この世界的に有名なヌーの川渡りはケニア観光のハイライトとなっているが、私達の訪れた4月は、残念ながらその端境期だった。
それでもワニとカバが沢山いると聞いて朝食前にロッジを出た。
マラ川には期待にそぐわずカバがウジャウジャといた。
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■シマウマ
シマウマの美しい縞模様は、個体を識別しにくくしてライオンなどの天敵から身を守るそうだ。
白黒の縞模様は身体の部位ごとに向きが異なり、群れをなすと各個体の縞模様が混ざって視覚的に同化してしまうので、遠くから見たときに草原の模様に埋もれ判別しにくいとされる。子供が親にくっついて行動するのもそのためらしい。
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■ライオン
ライオンの雄は、立派なタテガミがあり身体も大きいので強そうにみえるが、実はこのタテガミと重い身体が邪魔になり猟には向かないそうだ。食事用の猟は、もっぱら雌の仕事で、子孫繁栄のためのベビーメーキングが雄の役割らしい。
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寝そべっている雌ライオンの側で、雄ライオンが、じ~っと待っていた。「5分ほど待てばベビーメイキングが始まるよ」とガイドがいった。ライオンは一夫多妻だという。30mほど離れたところにもう一頭の雌ライオンがいた。「あれはこの雄ライオンの別の奥さんで、こっちの奥さんに気をつかって離れているんだ」と、ガイドの説明を聞きながら、カメラを構えて待っていたが、ベビーメーキングは一向にはじまらない。20分ほど経ったとき「あきらめて行きますか、それとももう少し待ちますか」とガイドが聞いた。私は待ちたかったが、多数決で次に行くことにした。
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なお、雄の名誉のために付け加えておくと、雄は家族の飯の種である猟をするエリアを確保する役割を担い、夜になると自分たちの縄張りを守るために、見回り、チェックし敵を撃退している。そのために体を大きくし他のライオン家族より優位なエリアを獲得するのだそうだ。
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■キリン
アミメキリンの雄同士が、首をぶつけあっているのを見た。
雄同士のファイトのポーズだ。
これはネッキングと呼ばれ、発情期にメスを取りあって、首をぶつけ合いながら戦っているのだ。
ドスッという音が聞こえるほど激しい。体が持ち上がってしまうほど力が入っている。
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キリンは基本的に立ったまま寝る。のんきに寝っころがっていては肉食動物の餌食となるからだ。
敵に襲われたときにすぐに逃げることができるように水を飲むときも、しゃがまずに前足を大きく左右に広げ、立ったままで水を飲む。
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■マサイマラの空
ゲームドライブを終えてロッジへの帰途、草原には見事な青空が広がっていた。
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