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2017年10月の記事一覧
〈小説〉カーディガン
私は今、熊本へ向かっている。朝一の便に乗り込み、小さな窓から下界を見下ろしながら、無意識に彼の住む街の方を目で追ってしまう。飛行機は高度を上げ、シートベルトのサインが消える。
田舎へ帰るのは五年ぶりだ。
祖父の葬式で帰った以来。祖母は祖父が亡くなってからも一人、山の上の家で住んでいる。
本土に住むおじさん達に、山を降りて一緒に暮らそうと言われても頑として首を縦に振らなかった。買い物に行くのにも一時
私は今、熊本へ向かっている。朝一の便に乗り込み、小さな窓から下界を見下ろしながら、無意識に彼の住む街の方を目で追ってしまう。飛行機は高度を上げ、シートベルトのサインが消える。
田舎へ帰るのは五年ぶりだ。
祖父の葬式で帰った以来。祖母は祖父が亡くなってからも一人、山の上の家で住んでいる。
本土に住むおじさん達に、山を降りて一緒に暮らそうと言われても頑として首を縦に振らなかった。買い物に行くのにも一時