リベートの味
〇学校からの帰り道
亮(12)、修也(12)、美生(12)、七海(12)が並んで歩く。
オレンジの木が塀を越えて垂れ下がっている。
亮、オレンジの木を眺める。
亮「なぁ、オレンジって酸っぱい?甘い?」
修也「そんなの、オレンジによって違うだろ」
七海「大体、甘いんじゃない?」
亮「イメージ、イメージ。オレンジと言えば、どんな味?」
修也「酸っぱいじゃね?」
七海「甘いでしょ」
亮「俺も酸っぱいと思う」
七海「なんで?酸っぱいはレモンでしょ。ねぇ、美生?」
美生、風でなびく前髪を押さえている。
美生「オレンジ?今日食べたオレンジは甘かったよ」
七海「そうだよね!ほら、甘いじゃん」
修也「甘いっていうのは、飴とかグミとかチョコレートの時だろ。オレンジを食べてあっまーって言わないだろ」
七海「そうだけど、酸っぱーいっていう時は、レモンとか梅干しを食べた時でしょ。だいたいさ、酸っぱいオレンジなんて売れないじゃん」
美生「酸味の中にある甘さが好き」
七海「そうそう!酸味の中にある甘さだよ。これがオレンジの味。だから、甘いの」
修也「ていうか、七海、酸味って言ってるじゃん。酸味って酸っぱい味だろ。ほら、酸っぱいんじゃんか!」
七海「だから、その中にある甘さがオレンジを表す味って言ってるんの!」
修也「酸っぱさのベースに甘さだろ。ベースは酸っぱさ」
七海「それは甘味を引き立たせるわき役」
亮、立ち止まる。
〇分かれ道
亮が立ち止まると、皆立ち止まる。
亮「続きは明日ね」
美生「うん!バイバイ」
七海「バイバイ。明日、決着ね」
修也「負けないからな」
それぞれ、手を振り家路につく。
〇学校(朝)
4人は、ランドセルをロッカーにしまい、美生の席に集まる。
亮「昨日の続きやろう」
修也「もちろん、家に帰ってからも滅茶苦茶考えたから」
七海「私も、お風呂でずっと考えてた。やっぱり、オレンジと言えば・・・」
亮、美生、七海、修也が同時に話す。
亮「甘い」
美生「酸っぱい」
七海「酸っぱい」
修也「甘い」
4人は顔を見合わせて、笑う。
亮「俺らって滅茶苦茶、いい仲間だね」
〇道路
垂れ下がる、オレンジの木。
おじいさんが、オレンジを1個もぎ取る。
終わり