その昔、ある町の角でKADOYAという名の雑貨屋を営んでおりました。 雑貨屋だったのでいろんなモノを扱う内に、いろんな方と出会いました。 来年で10周年という頃に、トレジャーハンターと出会い、手塩にかけた店をたたみ出国しました。 それから8年。 思えば遠くへ来たもんだ。 旅暮らしが長引き、行商人に。 過ぎ去って来た道で、もらった感謝と、落とした不義理がたまりに溜まった。 再び会えるかわからない人と、これから道が交差する瞬間があるかもしれない人に向けて、手紙のようなもの
ある町にて。 滞在中に見つけた喫茶店にほぼ毎週通った。 大体いつも季節のおすすめメニューを注文した。 春はオムライス、夏はカレーライス、秋はガパオライス。 そして冬が来る頃、その町を出る時が来た。 軽い挨拶だけで長く話したことはなかったが、居心地の良い、記憶に残る店だった。最後に珈琲を飲みに立ち寄った時、コースターの裏に4枚絵を描いた。 マスターとコースター、気づく気づかぬも裏表。
ある町にて。 滞在日が運悪く台風と重なってしまった。 ありがたいことに開いている食堂が一軒あった。 暖簾をくぐり中に入る。どの席も空いているようで、カウンターの奥へ進む。テーブルにはひょうたん形の箸置きが等間隔に置かれていた。店内には無音のテレビがあり、野球中継が流れていた。陳列された焼酎の中から、明るい農村を選び注文する。本棚にはスポーツ新聞と漫画雑誌、カラマーゾフの兄弟があった。しばらく雨がドアを叩いていた。