第4章 金色の街エルムハース 第6話
第6話 美味しいご飯と服選び
テーブルの上には地元の新鮮な野菜が並び、その中には焼き立てのパンと香ばしいベーコンが混ざり合っていた。それだけでも十分に食欲をそそる。
「レイラ、まずこのパンを試してみて。」
前にも食べたことがあるというアイザックがパンを手渡す。
一口いただくと、私は感激のため息をついた。
パリッと焼かれた外側ともっちりとした内側、そしてそのパンに溶け込んだ濃厚なバターが一緒になると、それは言葉にできないほど美味しかった。
「うわぁ、これ本当に美味しい!こんなに美味しいパン初めて食べたかも。」
口の中に広がるパンの甘さとバターのコクは絶妙で、思わず目を閉じて感じてしまった。
次にスクランブルエッグを口に運ぶ。一口食べると、ふわっと甘い卵とクリームの風味が口いっぱいに広がった。
「アイザック、これもすごく美味しい!卵がまるでクリームみたいにまろやかで、とても滑らかな口当たりだよ!」
私の声に彼も頷き、
「うん、それが特に美味しいんだよね。」
と同意してくれた。
さらに、新鮮な野菜のサラダを試すと、シャキシャキとした食感と爽やかな風味が心地よかった。果物は甘酸っぱさと甘さが絶妙に混ざり合い、それぞれの風味が口の中で交互に弾ける。
「このサラダと果物も素敵ね。新鮮で、味が生きてる。
私もう、このお家の子になりたいー!」
私がそう言うと、アイザックは大きく頷き
「うん、全てが本当に美味しいね。食べ物一つ一つから、新鮮さと愛情を感じさせるよ。」
と笑顔で答えた。
彼の声に私も笑顔で頷き、二人で楽しい朝食の時間を過ごした。
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僕の恋人は本当に可愛い。
アイザックは思った。
目の前で表情をころころと変え、目を輝かせながら美味しそうに朝食を食べる様子に、見とれてしまう。
今も果物一つ一つ、それがどれほど美味しいかを伝えながら、にこにことおいしそうに食べている。
美味しいご飯を作ってくれたイザベラさんに感謝だ。
僕の恋人は本当に可愛い。
昨夜『秘密の演舞曲 』発動時、その効果を伝えようかと思ったけど、彼女が一生懸命に声を抑えようとしている姿があまりにも愛らしく、つい言いそびれてしまった。
その表情見たさに、つい激しめに動いてしまったことは秘密にしておこう。
今日はエロティア様の聖印がオークションに出品される日。
開場は夕方なので、まだ時間がある。
それまで、二人で街を散策しよう。
オークションに着ていく服も準備しなければだし。
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「今日はどうしよう?」
食事を終えると、レイラが聞いてきたので
「オークションまで時間があるから、街の中を歩いてみようよ。」
と提案。
彼女の顔が明るくなるのを見ると、胸の中が温かくなる。
「それ、楽しそう!」
と彼女がニコリと笑った。
「まずは、オークションに着ていく服を見てみようか?昔、よく世話になっていたお店があるのだけど行ってみない?」
と提案すると、彼女は頷き私の手を引いて。
「えっ、楽しみ!早くいこっ!!」
と旅籠の外へと僕を連れ出した。
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街に繰り出すと、色とりどりの店舗が並び、賑やかな人々が行き交う光景が広がっていた。レイラの目はキラキラと輝き、どこを見ても新鮮な驚きと興奮に満ちていた。
「とても素敵な街ね!絵に描いたように綺麗だわ!」
レイラの興奮した声が聞こえ、彼女がこの場所を気に入ってくれたことに僕の心は安堵する。思わず顔が緩み、彼女に向けて優しい微笑みが零れる。
彼女を引き連れ、僕らは昔なじみの服屋の前に立つ。
お店は鮮やかなドレスや煌びやかな装飾品であふれており、レイラが目を奪われる様子に、僕は自然と胸が躍った。
扉を一緒に開けると、独特な香りがふわりと鼻に触れた。
ピカピカに磨かれた床からは樹脂の香りが、そして輝くドレスたちからは新しい衣類の匂いが漂っていた。その香りは一瞬で遠い過去へと僕を引き戻した。
でも、それも一瞬。
レイラが、あまりの美しさに目を輝かせて驚きの声を上げた瞬間、現実に引き戻された。
「いらっしゃいませ、、、あら?もしかして、アイザック君?」
奥から出てきた店主の声が店内に響いた。
驚きと喜びが同時に浮かんだその顔を見て、僕も思わずにっこりと笑ってしまう。
「お久しぶり、サラさん。今日はオークションに参加するために衣装を見に来たよ。彼女はレイラ。僕の大切な恋人なんだ。」
そう紹介すると、サラさんは目をキラキラさせてレイラを見つめた。
その顔には温かい笑顔が広がり、それを見て僕もホッとした。
「あんなに小さかったアイザック君が、こんなに可愛らしい恋人を連れてくるなんて感激よ。レイラさん、どうぞ宜しく。あなたとアイザック君、ほんとにお似合いね。」
サラさんは少しだけ目頭を押さえながら、微笑んだ。その声には、昔と変わらず包み込むような温かさがあった。
「あの、これは…」
レイラは、眼前の鮮やかな色彩に囲まれた店内で、ぎゅっと僕の手を握りしめた。その手には、彼女の期待と興奮が伝わってきた。
「心配しないで、自由に選んでいいからね。」
レイラは、僕の言葉に安堵の表情を見せ、店内を歩き始めた。
思わず手に取りたくなるほど美しいと感じるドレスたちに目を奪われ、一つ一つにゆっくりと手を伸ばし、各々の生地を確かめるように触れていた。
一つずつ試着する。
ドレスを選んでいく彼女の姿は、まるで宝石箱から宝石を選ぶ子供のように純粋で、見ている僕自身もうれしくなる。
そして、やがて彼女の目が薄緑のドレスに留まった。
その生地は、きらめく光を放ち、彼女の瞳を輝かせていた。
「これ、着てみていい?」
と、彼女が僕に問いかけると、僕はうなずき、彼女を試着室へと向かわせた。
試着室から出てきた彼女は、まるで別人のようだった。そのドレスは彼女の柔らかな曲線を美しく包み込み、彼女の魅力を一層引き立てていた。
「素晴らしい…」
僕は声を失ってしまった。彼女の美しさに見とれ、僕の心臓は高鳴り続けた。レイラの笑顔が、心の中で揺れ動いていた。
「本当に、本当に綺麗だ…」
僕は心の中でつぶやいた。
その一瞬、彼女の美しさにただ見とれ、その美しさを心の中に深く刻み込んだ。
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