見出し画像

【連載4 なぜ離島の限界集落にある老人ホームで人財を確保できているのか?】走る方向を決める①(事業計画をつくる)

こんにちはカドジュンです。前回、経営者になってから状況を予測分析して方向性を共有し、長期目標を決めたところまでお話ししました。今回は長期目標として設定した『20年安心して暮らせる玉之浦町づくり』の理由と、長期目標から逆算してできあがった中長期計画、短期目標をまとめた事業計画の説明です。これがなくては長期的で安定した人財の獲得はできないくらい重要です。

まずは、なぜこんなイチ社会福祉法人の目標とは思えない目標を立てたのか?について。連載の最初に説明したとおり、私たちが経営する地域は限界集落で、じつは町内でいちばん大きな事業所でもあるのです。もしも、私たちが倒れたら介護の受け皿が無くなるとともに、30名以上の玉之浦町在住職員が一時的でも失職してしまいます。しかし、こうなってしまえば高齢者も職員も一気に町から離れてしまい、町にトドメが刺されたような状態になってしまいます。だから私たちは地域と運命共同体であり、お客さんがいなければ経営できないし、事業所がなければ地域に住めないという強い結びつきがあるのです。そうであれば、私たちが町の課題を解決するために福祉をとおして何とかしようじゃないかと考えたのです。その後、この考えは「社会福祉法人みずから市場をつくる(=人口を維持する)」という、壮大な社会実験でもあるなあと気づきました。

長期目標が決まれば、つぎは数値目標と方針(ポリシー)です。数値目標には「2030年に800人台と予想される玉之浦町の人口を1000人で維持する」と設定しました。さらに、ある取り組みによって高齢化率も下げるという裏目標もありました。そして、方針については5つ決めました。

①まちづくり(コミュニティ)

②人財づくり(ソフト)

③環境づくり(ホーム)

④標準づくり(マニュアル)

⑤商標づくり(ブランド)

画像1

ひとつひとつの説明はしませんが、じつは②~⑤のポリシーは、すべて①の『まちづくり』に帰結します。だって長期目標と同じワードですからね。重要度が違います。①だけが別格なんですが、職員や世間に提示する場合これくらいシンプルでわかりやすい方が良いのです。しかも普遍的なポリシーばかりなので、この5つで経営戦略を網羅することができます。

つぎは5年スパンの中期計画です。これにはこだわります。まず中期目標として「20年続くまちづくりのためのイノベーションのはじまり」としました。長期計画は普遍的でも中期計画は差別化を意識しました。ヒトと同じことやってても同じ結果にしかならないよという考えがあったからです。

①介護力向上(根拠のある介護サービスの提供)

②社会保障制度対策(介護保険以外の経営基盤)

③人口維持(ファミリー層の獲得)

④ベストオフィス(働きやすい職場づくり)

⑤ガバナンス(組織統治)

画像2

これもひとつひとつの説明はしませんが、設定した当時の事業所や地域、社会情勢が反映されています。ここまで決めた後は1年スパンの短期目標、年度ごとの目標ですね。最初の年は『We have a DREAM(私たちには夢がある)』としました。まあ、当時のアメリカ大統領のパクリです(笑)。ただ、老人ホームがこんなキャッチーな年度目標を立てたのは、現在壱岐市で活躍する鬼塚裕司さん(一般社団法人『我見る,ゆえに我あり』代表)が、長崎市の特養を経営していたときに事業計画で拝見しインスパイヤされました。「あ、こんなんでいいんだ」と目からウロコ!体験のおかげです。福祉って何かにつけダサイですからね(笑)。

とりあえず目標と計画のかたちはできました。つぎは実行になるのですが、世の中の大部分の事業計画は『予定は未定で決定ではない』的です(失礼!)。そして、『計画をつくること』が目的化してお飾りになりがちです。弊社職員もまだまだそんな面はあります。しかし、ウチの場合はそうなってしまっては確実に10年後つぶれるのです。危機感が違います。そうならないために、具体的な実行フェイズに移行していくことになるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?