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【連載7 なぜ離島の限界集落にある老人ホームで人財を確保できているのか?】まずは走ってみる②(天使ちゃんプロジェクト)

こんにちはカドジュンです。前回は『環境づくり』から始まった職場や職員待遇などの改善でした。これらの取り組みを紹介する機会も出てきたので、プレゼンの時にキャッチコピーがほしいと思い、『五島でいちばん働きやすい職場づくり』と掲げました。その後、振り返ってみたらいつの間にか五島ではトップクラスとなっていたので『長崎でいちばん働きやすい職場づくり』と変更、上方修正しました(笑)。

今回は『環境づくり』もうひとつの目玉と考えていた育児支援です。ここでもマインドフローです。

①町をどうにかするためにはファミリー世代が必要だけど、玉之浦にはそもそも若者がいない! → ②ふやさなければいけない → ③ふやすためには子育てしやすい環境づくりだ!

ここで話を少し分解しますが、いまいる子どもに手厚くしたり産みやすくしても、成果が出るのは20年後です。しかし、それまでに町が壊滅的状況(学校や保育環境がなくなる)になったら取り返しがつきません。子育て環境を維持しつつ、将来に投資するために地域(町)と職場の育児支援を同時進行させようと考えました。

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この画像は弊社事業所内保育園に通う職員のお子さんと利用者の姿です。社会福祉事業とりわけ高齢者介護では女性職員が半数以上です。弊社の職員が働きやすくするために育児支援はマスト!となれば、育児支援は職員確保の面からも一石三鳥以上になるはずです。具体的な取り組みを説明する前に玉之浦町の現状です。

1.公立の「へき地保育所」が2ヶ所しかない!しかも、0-1歳児は預かれない!さらに給食もない!

2.放課後児童クラブがない!

3.習いごとが少ない!

これらの課題はやたら動線が長い玉之浦町の地理的な影響もありますが、かつて隆盛を誇った水産関連産業が衰退したことによる仕事の減少という、私たちではどうしようもない根本的な問題があります。しかし嘆いても仕方がないし、私たちがやれるところから課題に取り組み始めました。

①長期休業中(春・夏・冬休み)に小学生をあずかる(当初は地域の子どもを丸ごとあずかっていましたが、いまは基本的に職員の子どもだけとなっています。この取り組みは熊本県の老人ホームにインスパイヤされました)

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②給食がない町内のへき地保育所にお弁当を配達する(保護者と個人契約するかたちで温かいお弁当を格安で配達しています。これは法人の完全持ち出し赤字事業です。投資と位置付けてこの春まで値上げしませんでした)

③事業所内保育園の開設(長崎県初となる認可型事業所内保育園を空部屋率が高かった職員住宅の世帯用居室に開設しました。2015年の法改正が追い風となりました。対象は玉之浦町になかった0-1歳児です)

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④育児休暇を取得しやすくして、出産育児離職をふせぐ!(おかげさまで10年近く出産を理由に退職する職員がおりません)

⑤扶養手当は子どもに手厚く!(前回説明したとおり、扶養手当は配偶者ではなく子どもに多く振り分けました)

そして、一連の育児支援を『天使ちゃんプロジェクト』とよび、これもPRの大きな武器として活用していくことになります。

前回と今回の取り組みは、働き手にとってはかなり喜ばれた改革だったと思います。しかし、たとえば育児支援などは関係ない職員には恩恵のない取り組みのように見えます。ただ、子育て世代の職員が退職すれば自分たちにとってもマイナスになります。そもそも子どもや育児支援に投資できない事業所や地域に未来はないと信じています。こういった投資はかならず回収されるはずで、その後の企業主導型保育事業などの増加が証明しました。


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