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Amazonの大型ディスプレイ「Echo Show 15」はちょっと改良されれば強力な介護ガジェットになり得る! 【使用レビュー】
本記事の初出は家電批評2022年09月号です。
執筆:岡野学
協力:工藤広伸(くどひろ)/編集:家電批評編集部(商品紹介のリンクはアフィリエイトを含みます)
ウチのおかんがボケちゃいまして」とは…… 突然認知症の親(おかん)を介護することになったライター岡野学さんが、認知症介護の先輩でもある介護作家・工藤広伸(くどひろ)さんのアドバイスを受けつつ、モノやサービスを使って介護をラクにできないか模索する介護実践記です。家電だけでなく、日用品、生活雑貨、食品など、便利そうなものはなんでも試していきます!
今回試すガジェットはスマートディスプレイ
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イラスト:寺崎愛(https://www.terasakiai.com)
今回、介護ガジェットAmazonのEcho Show 15です。15.6インチの大型ディスプレイを壁に掛けて使える“額縁”タイプのスマートディスプレイ。「やることリスト」「買い物リスト」「付せん(メモ)」「カレンダー」などのウィジェットを、一画面に複数配置できるのがポイント。サイズはW40.2×D3.5×H25.2cmです。
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「数分おきに同じこと聞かれる問題」をスマートディスプレイで解決したい
認知症のおかんは、直前に話した内容を覚えておくことができません。同じことを数分おきに聞いてくることもしばしば。実家で同居している兄はかなり精神的負担になっているようです。
おかん:「スーパーに行くけど何か買ってくる?」
兄:「今日は何もいらないよ」
おかん:「あらそう。で、今からスーパーに行くけど何か買ってくる?」
兄:「いや、だから何もいらないって」
このようなやりとりを、ずーっと繰り返すわけです。
一方、離れて暮らす僕の被害は、兄に比べればごくわずかですが、それでもたまに鬼電されることがあります。仕事がたてこんでいる場合、よくないとわかっていても、おかんの番号を着信拒否に設定することも……。これは良くありません。なんとかできないものなのでしょうか。
こんな状況を改善してくれるかもと、期待していたガジェットがアマゾンのスマートディスプレイ「Echo Show 15」です。実は、以前から実家では旧モデルの「Echo Spot」を使って、おかんのリマインダーをしていました。ただ、いかんせん画面が小さく(2.5インチの丸型ディスプレイ)、画面表示を見せる用途に向いていなかったんです。でも、今度は15インチ強の大画面。しかも、表示させるウィジェットをカスタマイズできるというではありませんか。忘れてほしくないことを、全部ここにデカデカと表示させたら、同じことを聞かれる回数を劇的に減らせるのでは!?
以下、リモート介護でEcho Show 15を実際に試してみたレビューです。
【レビュー1】ビデオ通話でおかんの探し物を手伝う
「Amazon Alexa」の「呼びかけ」機能を使用します。相手がEcho Showの操作をしなくても、自動でビデオ通話を開始する機能で、Alexaアプリの「連絡」から使えます。呼びかけを通話状態にしておけば、見守りカメラ代わりに使え、相手にも自分の映像を見せられるので、ちょっとした同居感覚です。
「呼びかけ」は最初に音声がつながり、徐々に映像が表示される仕様なので、部屋を映す前にひと声かけられるところに好感を持ちました。おかんが操作できなくても勝手につながるので便利です。
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【レビュー2】繰り返し聞かれる質問の答えをメモにして表示する
Echo Show15のホームスクリーンにはメモを配置する「付せん」ウィジェットがあります。しかし、ウィジェットのサイズやフォントを変更できないので、「付せん」の大画面いっぱいに表示できません。そこでやむなく「Amazon Photos」の「フォトフレーム」機能を使用しました。Amazon Photosに画像化したメモをアップロードしておけば、大画面で表示可能です。ただし、1枚の画像は最大24秒しか表示できない点には注意。表示を固定できればよかったのですが……。
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【レビュー3】予定が入っている日を忘れないようリマインダーをセットする
「Amazon Alexa」の「「定型アクションのアナウンス」機能を使用します。この機能を使えば、任意の曜日や時間に、事前入力したメッセージをEchoShow 15が音声で読み上げてくれます。ただし、入力した漢字などによっては、正確に読んでくれないこともあるので意図した読み上げが可能か事前の確認は必須です。
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標準機能の「付箋」「読み上げ」は使いづらいので別の機能で代用するのが現実的だった
いちばん期待していたメモの大画面表示ですが、現状ウィジェットでカスタマイズできるのは表示項目の選択と配置のみ。使いたかった「付せん」は極小表示しか選べませんでした。そこで、フォトフレーム機能で画像化したメモを映してみると、これは使えそうという印象です。
ただし、1画像の表示時間は最大24秒。アップする内容や数は最小限に留める必要があります。おかんへのメモの効果については、設置して間もないため、引き続き検証が必要ですが、物珍しさからか頻繁に見てくれているようです。
また、定型アクションではなく「リマインダー」機能を活用すればより簡単に予定の読み上げが可能です。しかし、高齢者向けのリマインダーとしては、
「~のリマインダーです」と高齢者には理解が難しいワードを追加して読み上げてしまう
Alexaのアカウントには1つのカレンダーしか紐づけられない。そのため、僕のアカウントにおかんのスケジュールを入力すると僕の予定までおかんにリマインドされてしまう(対処法として、我が家ではおかんのリマインダー用に別アカウントを用意。専用タブレットで予定を管理している)
といった課題が残っており、定型アクションを使用しています。
メモを大画面表示する以外の使い道として想定していたのが、ビデオ通話でした。実際に使ってみたところ。「呼びかけ機能」によるビデオ通話は大画面化でかなり快適ですし、この機能は見守り用途にも使えると判明しました。一般的な見守りカメラだと、自分のEcho Showに映像を映しておける時間に制限があるんですが(1回10分程度)、呼びかけ機能なら恒久的に接続OK。自分の手元にもEcho Show 8などを用意すれば、常時親を見守れます。この方法の場合、自分の映像も相手に見られてしまいますが、同居を想像してみれば特に不自然ではないはず。「自分だけ監視されるのが嫌」で見守りカメラの設置を拒否する親には、説得の材料になるかもしれません。
まとめ:Amazon Echo Show 15の介護はガジェットとしての評価
良かったポイント
ビデオ通話機能が見守り用途に使いやすい
居住空間でしっかり目立ってくれる15インチサイズ
残念だったポイント
ウィジェットや写真の表示設定に制約が多い
リマインダー機能が高齢者向けには使いづらい
高齢者の見守り向けにこんな機能がほしいです
ウィジェットとフォントの自由なサイズ変更
スライドショー写真の表示時間設定(今より長時間の設定・固定表示)
高齢者向けのコミュニケーション機能(アナウンス時に「リマインダー」のようなカタカナ語を用いないオプションを設けるなど)
Echo Show 15はリモート介護との相性のよさは感じるものの、まだかゆい部分にまでは手が届いていない印象。Amazonは海外で有料の介護サービスも展開しているようなので、今後の改良に期待しています!