トンネルの向こうからやって来る愛しさ。
横須賀の「ハニー・ビー」を出て、ぼくは駅を探していた。
舗装の剥げた路面の切れ目から、細い茎がのびていて、
その先で小さな、小さな、蕾がふるえていた。
ああ、でもさ、やがて蕾は咲くだろう。
そして、名前をもらうんだろうな。
その名前が、勿忘草なんかだったら、いいのにな。
三浦半島から銀座まで、いったいどれくらいの時間がかかるの。
さっき見た花の名前など知らない女のひとに逢いにいかなきゃ。
ステッカーだらけのキャリーを曳いていた女の子は、あの船のひとに逢えただろうか。