異語り　015　シチゴサン

コトガタリ　015　シチゴサン

北海道の七五三は10月です
今年は海外からの観光客もなく、北海道神宮の参道は晴れ着に包まれた稚児連れの家族が目立ちました。
なれない草履に苦戦しながらも、まだ色節の自覚や気負いのない無邪気な笑顔があふれています。

神門の裏に小さな扇子が落ちていました。
七五三の子が落としたものでしょう。
すぐに警備の方が気づき、慣れた様子で詰め所脇に据えられた盆の上に置かれました。

ちょっとした好奇心で盆を覗くと、ハンカチや扇子に混じって小さな帽子のようなものがあります。
黒く丸い小さなコップなようなものに長い紐。

これをつけたら、ちび山伏か、ちび天狗みたいになるのだろうな

微笑ましい姿を想像しながら私も参拝に向かいました。

帰る前に気になってもう一度盆を覗くと、帽子はもう無くなっていました。

いつの間に取りに来たのでしょう？
もしかしたら天狗にも七五三があるのかも。

そんなことを考えてしまいます。