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夢を紡ぐネコの郵便屋さん
はじめに
不安や日頃の疲れで眠れないあなたへ。
そんな夜は、心がささやかな安心を求めているのかもしれません。この物語は、夜の静けさにそっと寄り添い、あなたの心を優しく包み込むために紡がれました。目を閉じて、ふわりと夢の世界へ旅立つ準備をしてください。
眠れない夜にも、あなたを見守る温かな存在がいることを信じて
夢を紡ぐネコの郵便屋さん
それは、静かな夜にだけ現れる不思議な郵便屋さんのお話です。
眠れない夜、あなたの枕元にそっと置かれる一通の手紙。封筒には、金色のインクでこう記されています。
"夢を紡ぐネコの郵便屋さんから"
その手紙が届くとき、夜はいつもより優しく、静けさが心地よく耳を包み込みます。さて、今夜はどんな夢の手紙が届くでしょう。
その夜
優子は天井を見つめてため息をついていました。時計の針は午前二時を指し、眠ろうとしても瞼はなかなか重たくなりません。窓の外にはぼんやりと月が浮かび、夜の静けさが部屋にしんと広がっています。
「今日も眠れないなあ……」
そうつぶやいた瞬間、ポトリ、と枕元に何かが落ちる音がしました。驚いて振り返ると、そこには小さな封筒がひとつ。アイボリー色の紙に金色のインクで、
"夢を紡ぐネコの郵便屋さんから"
と書かれていました。
恐る恐る封を切ると、ふわりと甘いミルクティーのような香りが漂い、手紙の文字がきらきらと光りながら浮かび上がります。
『こんばんは、優子さん。眠れない夜は心がさみしくなるものですね。でも今夜は、私があなたを夢の旅へお連れしましょう。目を閉じて、ゆっくり深呼吸をしてください。』
優子は戸惑いながらも、そっと目を閉じ、深呼吸をしました。すると、まぶたの裏にふわりと夜空が広がります。そこには星が川のように流れ、ひときわ明るい星の上に黒猫が座っていました。
「あなたが……夢を紡ぐネコの郵便屋さん?」
猫は金色の瞳を細めてにっこり笑いました。
「そうです、私はミルティ。今夜はあなたを、夢の国にご案内しますよ。」
ミルティのしっぽが空をひとふりすると、星の川が橋になり、優子は猫と並んでその上を歩き始めました。足元に光る星たちが、くすぐるようにくすくすと笑います。
「ここは夢の国の入り口。どんな夢でも叶う場所です。」
前方にふわりと広がるのは、ふわふわの雲の原っぱ。雲の上では小さな夢の生き物たちが楽しそうに遊んでいました。
「この子たちは?」
「誰かが心に描いた優しい夢のかけらです。」
優子は微笑んで、小さな星のウサギをそっと抱き上げました。ウサギはふわふわで、心の奥がぽかぽか温かくなります。
やがて、星の橋の先に小さなカフェが見えてきました。
看板には
"おやすみカフェ"
と書かれています。中に入ると、優しいミルクティーの香りが漂っていました。
「ここは、眠れない人のためのカフェなんですよ。」
ミルティがそう言って、ふわふわのクッションに優子を座らせました。猫がひげをひとふりすると、カップにとろりと金色の夢のミルクティーが注がれます。
「このミルクティーを飲むと、心が安心して、ぐっすり眠れるんです。」
優子はカップを両手で包み込み、そっと一口飲みました。甘くてあたたかくて、心の奥にある小さな不安が溶けていきます。ミルティが優しく語りかけます。
「眠れない夜も、ひとりぼっちの夜も、私はいつでもそばにいます。あなたがどんな日を過ごしたとしても、あなたを見守っていますよ。だから、大丈夫。安心して目を閉じてください。」
優子の瞼がゆっくりと重くなっていきました。星の川が揺らめき、ミルティの声が遠く響きます。
「おやすみなさい、優子さん。今日も本当にお疲れさま。あなたが明日も穏やかに過ごせますように。」
翌朝
優子はやわらかな朝陽の中で目を覚ましました。枕元には、小さな星形の白い毛がひとつ残されていました。
それからというもの、眠れない夜が訪れるたび、優子はそっと目を閉じて心の中で呼びかけるのです。
「ミルティ、今夜も夢を届けに来てくれる?」