【ショートショート】涙鉛筆
「特別な鉛筆をあげる。これで手紙書いてね」
いまどき手紙かよ。
それにしてもボールペンで書くし。
そもそも住所教えてもらってないから。
今ならそう思うけど、その時は必死で、素直に受け取ってしまった。
そして別れた3日後には、言われた通りその鉛筆で手紙を書くことにした。
届けるつもりはなかったが、君への気持ちを吐き出さないと頭がおかしくなりそうだった。
その鉛筆は軸が水色で「SLOHINVE」と彫ってある。
メーカーの名前のようだったが、聞いたことはなかった。
好きだ、好きだ、…
書きながら涙が溢れ、書いた文字から次々に滲む。
いや、違う。
何だこれ、芯が溶けてるぞ?
露出していた部分の芯が、紙に黒いシミを作る。
滲んだ文字とぼやけた視界も相まって、目の前は雨の日のどんよりした空のようだった。
とりあえず芯が溶けて書けなくなった鉛筆の先を削ると、水色の軸と謎のメーカー名が目に入る。
「SLOHINVE」
芯、SHIN、…溶けたら、飛ばして読めば、LOVE?
小学生かよ!
でも、そんな君が好きだと、今度は笑いながら泣いた。
*たらはかに(田原にか)さんのこちらの企画に参加しております。
結局ベタな感じにまとめてしまいました…。
大好きなBUMP OF CHICKENの車輪の唄のイメージです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?