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蕪木 夏芽
2022年5月29日 09:12
日が長くなり、夏の気配の漂う水無月のある日の放課後のこと。訪れた寺院の紫陽花はまさに見頃で、本堂に続く遊歩道には視界いっぱいを埋め尽くす程の数が咲いていた。僕は毎年、この寺院の紫陽花が咲くのを楽しみにしていた。ばあちゃんに「紫陽花は育てるのが簡単な上に手に入れやすいから、この時期に手向けるにはちょうど良い花なんだよ」と教えてもらったからだ。おまけにこんなに美しいのだから、悪いところがまる
2022年5月27日 08:04
降り注いだ雨粒は、 道端の草花に纏う。 土壌を湿らせる。 アスファルトを跳ねる。 空気中の排気ガスやほこりを包含する。そうして巻き上げられた匂いが、何だか心地よく感じた。そう、雨はそんなに嫌いではなかった。傘を忘れて家を出たとして、雨に打たれながら帰路を急ぐのも悪くないと思っていた。その日は、うんざりするような梅雨