かぶきDOU其の11アフタートーク
本日もコミてんラジオかぶきDOUをお聴きいただきありがとうございました!
六月博多座大歌舞伎が開幕中ですが皆様ご覧になられましたでしょうか?
私は昼夜観劇しておりますが、今回のかぶきDOUでは見どころをダイジェストでお届けしました。
雀右衛門さん 女方の振り幅の大きさ
中村雀右衛門さんは2016年の五代目中村雀右衛門襲名披露公演以来の博多座ご出演です。昼夜共に幅広いお役を勤められています。そのお役についてご紹介しました。
廓三番叟/傾城千歳太夫
まず昼の部最初の演目は廓三番叟ですが、雀右衛門さんは傾城千歳太夫を勤められています。遊女の最高ランクが傾城です。
三番叟は以前のかぶきDOUでもお伝えしましたが大変おめでたい席で披露される儀式舞踊です。
歌舞伎では様々なアレンジバージョンが生まれ廓三番叟はその中の一つです。
当時の庶民にとって吉原の遊郭、廓というのは憧れの場所です。傾城は遊女の中で一番の位でヘアスタイルや衣装デザインにも投資を惜しみません。よって傾城は江戸の女性にとってファッションリーダーでありました。
千歳太夫は途中、舞台上で振袖の衣装替えをします。これが後見さんとのコンビネーションで所作が美しく、脱いだ打掛も舞台上の衣桁にそのまま架けられて華やかな舞台装置の一つとなります。
淡い桜柄の打ち掛けと、黒地に鶴の打ち掛けを交互に身にまとい大変艶やかな舞を披露されております。
新造は中村梅枝さんです。新造とは将来有望な傾城見習いで15歳手前の女の子です。あどけなさを残しつつ千歳太夫と共に舞います。
お座敷を話芸で盛り上げる太鼓持ちは坂東彦三郎さんです。
最後は千歳太夫が、赤い実のなる千両を手にして、廓の商売繁盛と観客の皆様の幸運を祈って舞い踊ってフィナーレです。
ラグジュアリーな雰囲気に溢れておりますので、ゆったりとご覧いただきたいですね。
人情噺文七元結/女房お兼
20分の休憩を挟んでの演目、人情噺文七元結で雀右衛門さんは主人公長兵衛の女房、お兼を演じられています。先ほどの千歳太夫と同一人物とは思えないほど庶民的な女性です。博打狂いのせいで身ぐるみ剥がされた文七に自身の着物も取られてしまい、演目の後半ではあられもない下半身を何とかして見せまいと屏風に隠れて応対する姿がとても滑稽です。
夏祭浪花鑑/お辰
夜の部夏祭浪花鑑で雀右衛門さんは徳兵衛の女房お辰を勤められています。こちらは色気があり大変きっぷのよい女性です。かぶきDOUの解説でもお伝えしましたが色気があるという理由で夫、徳兵衛が守ろうとしている磯之丞を預からせてもらえない。火鉢から鉄弓を取り出し、顔に押し当てて深刻なやけどを負いながらもお辰は「これでも色気がござんすか!」と啖呵を切ります。
ラストシーンでは「徳兵衛は私の顔じゃなく心意気に惚れたんです」と惚気る姿がとても素敵です。
傾城から世話女房、きっぷの良い任侠の妻まで1日で3役をこなされる…さすが立女形 五代目中村雀右衛門さんです!
4役初役!菊之助さん
5月に行われました船乗り込みの式典で尾上菊之助さんは「今回全て初役で勤めます」と発表されました。さらっと口にされていたのですが4役!しかも音羽屋の大切な芸が含まれています。
菊之助さんといえばファイナルファンタジーⅩや風の谷のナウシカを歌舞伎化されたことでも有名です。
実は江戸時代からアレンジものは色々ありまして、昼の部人情噺文七元結は落語が題材となっています。菊之助さんは主人公長兵衛を初役で勤められています。
明治の著名な落語家三遊亭円朝の持ちネタをもとに、五世尾上菊五郎が1902年(明治5年)に初演しました。
文七は主人公ではなく長兵衛という腕利きの左官職人のお話です。
人情噺文七元結あらすじ
ざっくりあらすじをご紹介しますと…人一倍、左官の腕がある長兵衛は、中村雀右衛門さん演じる妻のお兼と、上村吉太朗さん演じる年頃の娘お久がいるにもかかわらず博打好きが災いして、今日も仕事に着ていった作業着まで賭けでとられ半纏1枚にふんどし姿というなんともなさけない格好で帰宅します。自宅も火の気の殆どない侘しい長屋です。お兼は娘のお久がいなくなったと大変心配しています。そこに片岡亀蔵さん演じる遊郭 角海老の手代藤助がやってきました。
なんとお久が自分の身を父の借金返済のために売りに来たとの事。角海老は長兵衛の左官の取引先でもあります。長兵衛はとにかく話をしに行こうとするも、こんな不格好じゃまずいとお兼の着物を剥ぎ取ってしまいます。
市村萬次郎さん演じる角海老の女房のお駒は、親孝行なお久に心を打たれて取引先のよしみで下働きとして預かるうえに、借金の返済用として50両を融通してもらえることになりました。
長兵衛は博打を一切やめて仕事に精進し50両の返済と娘を迎えにくることを固く誓います。
喜んで帰る道すがら、身投げしようとする中村萬太郎さん演じる若者 文七と遭遇します。小間物屋の和泉屋で働く文七は自分の不注意で得意先から預かったお金をなくしてしまい、頼る身寄りもないと言います。訳を聞いて長兵衛は、命には代えられないと無くした金と同じ額50両を渡そうとしますが文七に断られてしまいます。
不器用な長兵衛は50両が入った紙包を文七に投げつけてその場を去ります。
家に戻りその事を市村橘太郎さん演じる長屋の家主やお兼に説明しますが信じてもらえず大喧嘩となります。
そこへ文七が坂東彦三郎さん演じる和泉屋の旦那を伴い挨拶に来ます。無くしたと思っていた50両が見つかりそのお礼に来たのでした。
さらにこの度、文七が小間物屋から独立することになりました。
題名にあります元結とは男性の髷を後頭部で束ねる白い紐の部分のことです。文七は独立を機に新たな商品「文七元結」を生み出します。ちなみに文七元結とは江戸時代に本当にあった人気商品の名前だそうです。
そこに片岡愛之助さん演じる鳶頭の伊兵衛が角海老から美しく着飾ったお久を連れて戻ります。孝行者のお久と文七との祝言の話もまとまり皆が笑顔でハッピーエンドとなります。
落語がベースですので要所要所に笑える場面やしんみりと涙する場面もあり、心がホッコリするお話です。
どうしようもないギャンブル癖がありながらも憎めない人柄が幸せを運ぶ。そんな愛嬌のある長兵衛を当代の菊之助さんが初役で勤められております。
菊之助さんの父七代目尾上菊五郎さんがこの長兵衛を勤められた際、中村雀右衛門さんはお兼の役で共演されています。
菊之助さんも安心して初役の長兵衛に挑まれていらっしゃるのではないでしょうか?
夏祭浪花鑑
そして夜の部夏祭浪花鑑では初役で徳兵衛を勤められています。序盤で看板片手に愛之助さん演じる団七との立廻りが見どころとなっております。
羽の禿 浮かれ坊主
夜の部休憩を挟んで羽の禿 浮かれ坊主となりますが、こちらは2つの演目が合わさっています。
菊之助さんの曽祖父六世尾上菊五郎は元々あったこの2つの演目をアレンジして、あえて組み合わせたことで人気となりました。
羽の禿は…
新造よりももっと幼く、傾城のお手伝いをする女の子を禿と呼びます。お正月を迎えたおめでたい雰囲気の吉原の廓の前で、禿 梅野が日々の忙しいルーティンを長唄にのせて踊っていきます。
公式で身長が173cmある菊之助さんがあどけない幼女にしか見えません。
踊りの技術はもちろんのこと、実は廓周りのセットを大きく作って菊之助さんの体を小さく見せています。このトリックアートのような技法を生み出したのが六世尾上菊五郎だそうです。
おしまいは羽根つきになります。羽がどこに飛んでいくのか?終始可愛らしさで溢れた演目です。
そこから一気に舞台の様子が変わりまして「うかれ坊主」へと続きます。
江戸の街に坊主よりも少し毛が伸びた頭で、黒くて薄い衣、十徳(じっとく)だけを身にまとった願人坊主が現れます。
代理祈祷や大道芸などを見せてまわって投げ銭を集めていたのが願人坊主です。
火事が多かった江戸の町です。火消し用の桶と、竹と小銭で作った銭錫杖(ぜにしゃくじょう)を手にしています。
菊之助さん演じる願人坊主 源八は途中舌をペロッと出したり愉快に踊るのですが、羽織っている十徳がとても薄く、それ以外は下帯だけです。体のラインが透けて見えるため踊りには大変技がいるそうです。
そして清元の歌詞に出てくるものになりきって踊ります。その数を数えたのですがざっと20以上ありました!これはイヤホンガイドの解説をお聞きいただきながらですと大変わかりやすいかと思いますのでおすすめです。
ついには持っていた桶の底をぬいて顔に貼り付けます。「悪」と漢字で書かれた丸いお面です。江戸時代に流行した悪玉踊りで幕となります。
以上、博多座大歌舞伎で尾上菊之助さんが勤められている初役4役についてご紹介致しました。
いかがだったでしょうか?今回は六月博多座大歌舞伎の見どころをダイジェストでお届けしました。まだまだお伝えしきれない魅力が沢山あります。百聞は一見にしかず。このかぶきDOUを観劇の参考にして博多座に足をお運び頂けたら幸いです!
縁の一曲〜尾上菊之助さん
歌舞伎役者さんにゆかりの曲をご紹介する、えにしの一曲のコーナーです。今回の縁の一曲は尾上菊之助さんでした。
2018年に放送された鈴木亮平さん主演のNHK大河ドラマ西郷どんに出演されました。菊之助さんは清水寺成就院の住職、月照を演じられました。
安政の大獄で尊王攘夷運動を勧めていた月照は追われる身になります。鈴木亮平さん演じる西郷は、月照を守って薩摩に逃れます。
しかし藩からは月照を斬るよう命じられ、追い詰められた西郷と月照は二人で薩摩沖に身を投げるのでした。西郷との入水シーンは当時大反響となりました。
ドラマのテーマソング
♪富貴晴美で「西郷どん」をお届けしました。
公演かわら版〜かぶきDOUおすすめ博多座売店情報
公演かわら版のコーナーでは六月博多座大歌舞伎の観劇のお供にかぶきDOUおすすめの博多座売店情報をご紹介しました。
まず蒸し暑い梅雨時期にぴったりなひんやりスイーツ!手作り博多座アイス最中です。
紙袋で渡してくれるので手も汚れず小腹が空いた時にロビーの座席で気軽にお召し上がりいただけます。最中の皮に大きく博多座のロゴが入っていて最後の一口まで皮が『パリッ』と香ばしくとっても美味しいです。数量限定となっていますので気になる方はお早めにお買い求めください♪
博多のお土産で超有名な、ふくやのめんツナかんかんですが博多座では限定デザイン定式幕柄のめんツナかんかんが販売されています
どちらも一階客席ロビーの売店で販売中ですので気になる方はぜひチェックしてみてください!
めでてえなぁ6/7〜6/13
今週お誕生日を迎えられます歌舞伎役者さんをご紹介する「めでてえなあ」のコーナーです!
お名前と所属、屋号のご紹介で五十音順となっておりますのでご了承ください。
6/7から6/13がお誕生日の皆様でした。
6/7 市川瀧二朗さん
市川門之助一門
6/9 澤村國矢さん
紀伊国屋
6/10 大谷廣太郎さん
明石屋
6/11 大谷桂三さん
十字屋
6/12 中村蝶也さん
中村歌六一門
以上5名の皆様でした。お誕生日おめでとうございました!
次回のかぶきDOUは6/20㈫午前10:00〜10:25生放送でお届けします。お楽しみに!
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