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かぶきDOU其の13アフタートーク

皆様今回もコミてんラジオ「かぶきDOU」をお聴きいただきありがとうございました。番組でも告知致しましたが6/27に開催されました博多座9月公演『九月博多座大歌舞伎』合同取材からお伝えします。


博多座9月公演『九月博多座大歌舞伎』合同取材レポ

今年新設されたばかりの櫛田会館の大広間には大勢の報道陣が詰め掛けました。私は後方、カメラマンさん達の並びにおりましたが13代目市川團十郎さんが黒紋付で登壇されますとその目力に圧倒されました。

まずは襲名後の変化について團十郎さんは、声掛けで例えてくださいました。
若い女性などは今も「海老蔵さん!」と、歌舞伎をご覧になった方には「團十郎さん!」と声をかけられることが多いとのこと。この愉快なエピソードに場の空気が和みました。
そして今回13代目市川團十郎襲名後初めての「暫」が博多座で演じられます。
「博多座で暫を!」という開場当時からの博多っ子の熱い願いを團十郎さんご自身も大変嬉しく思われていて、博多座での襲名披露演目に暫が加わることは結構前から決まっていたそうです。
この歌舞伎十八番の内「暫」は、勧善懲悪のストーリーで團十郎さん演じる鎌倉権五郎は童の心(現在の新成人の年齢くらい)で勤められます。
12代目團十郎さんからのアドバイスで心に残っているものは「出」「つらね」「幕外の引っ込み」だそうです。
鎌倉権五郎の「出」は皆様ご存知の「暫く暫く暫〜く」の掛け声から始まります。
成田屋の家紋三升があしらわれた巨大で特徴的なデザインの素襖で揚幕から花道に登場します。暫の衣装は総重量が60kg程もあり、体全体を絶妙なバランスでキープされているそうです。12代目のお父様と骨格がちがうため、素襖の扱いを変えなければならないそうです。歌舞伎の舞台であれだけ大きく見せるために細部にまで気配りが必要なことに驚きました。
観客としては花道横の素襖が触れそうな程の臨場感は格別です☆
そして花道七三での「つらね」は3分ほどもあるセリフを朗々と滑舌よく披露しなければなりません。「親父譲りの〜」というくだりに客席がワッと盛り上がりますし時事ネタも含まれます。
フィナーレの幕外のひっこみでは、童の心で「やっとことっちゃうんとこな」という團十郎家伝来の言葉で大太刀をパワフルに振りかざして花道を去っていきます。

余談になりますが…2019年京都高島屋で開催された市川海老蔵衣装展で、暫の大太刀の重さを体感できるコーナーが設けられました。大太刀の柄の部分を持ち上げられる仕様になっており、私も体験しましたが、細くて少しカーブがかかっているので持ちやすそうに見えたのですが、逆にこの形状のためか?2kg程の大太刀を私の全力をかけてもほんの少ししか持ち上がりませんでした。体験された方ほとんどが「うっ」と声が漏れてしまうくらい苦戦されていたのを思い出しました。 

荒事を代表する演目の暫ですが、江戸時代からの家の芸がほぼそのまま受け継がれているので團十郎になった人にしか分からない、言葉で表しきれない部分もあるそうですが、それをこれからも舞台で披露していくとのことでした。荒事の伝統を観客に体感してもらうことが團十郎家の重積を担うことなのだと実感しました。
そして話題が8代目市川新之助さんのお話になると、團十郎さんの表情が和らぎました。
8代目市川新之助さんは博多座初舞台ですが「のびのびやって欲しい」この言葉に新之助さんへの信頼と愛情が込められていると感じました。
ご紹介しきれなかった團十郎さんのお話しは来週のかぶきDOU演目解説でお届けしていきますのでお楽しみに!


成田屋ニュース

9月博多座での襲名披露公演を前に6/28㈬市川團十郎さんが福岡PayPayドームで福岡ソフトバンクホークス×楽天イーグルス戦
試合前のセレモニアルピッチに登場しました。
團十郎さんナイスピッチングでした!

三升うちわ配布されました!

そして6/25、長野県志賀高原で團十郎さんは長女ぼたんさん長男新之助さんと植樹活動「ABMORI」に参加しました。 新型コロナの影響で中止になった2020年を除き毎年開催し今年で9回目。19の都府県から合わせて約840人が参加しました。團十郎襲名後初の開催にスポーツ報知の記事によりますと10年目の節目を迎えて今後は「山だけでなく、海のこともやっていきます」とこれまで以上に環境問題に取り組む意欲を見せました。
團十郎さんはSNSで「なにか こう 心が掃除されるような気持ちになります 幸いに晴れてよかった」とコメントされています。

成田屋にらみ

晴れてよかった…で思い浮かぶのは、昨年13代目團十郎襲名直前の5月に東京スカイツリーの頂上で行った成田屋のにらみです!
これは東京スカイツリーが開業10周年を迎えたことを記念して開業日の5/22に行われたものです。記念祭典では当時の海老蔵さんが地上634mの東京スカイツリー頂上部に登場し「市川海老蔵 天空のにらみ」が行われました。YouTubeで様々なメディアがUPした映像を見ることができますが日本一の高さなのに、左手にもつ三宝に乗った巻物の水引の房がほとんど揺れていないのがわかります。地上から634mの高さですから強風のリスク、雲に覆われるリスクもある中でスッキリと晴れわたり風もおさまってしまう。市川團十郎家の歴史が守ってくれているのだな…と目に見えない力をしみじみ感じました。
今度の9月博多座大歌舞伎襲名披露公演の夜の部の口上でこの「にらみ」を見ることができます。
にらみは、成田屋にゆかりのある役者さんだけが許されています。右目を天、左目は地の方へ向けて天地全てを見渡すとという大変特徴的なもので、邪気を祓う不動明王の姿、エネルギーをあらわしたものです。私が成田山新勝寺の不動明王のご本尊を実際に観た時にまさに團十郎家の睨みそのものだと感動しました。
成田山新勝寺のHPならびに成田山だより2023年1月号によりますと「にらみ」の表情は歴代團十郎によるお不動さまへの深い信仰の証だそうです。

成田山と團十郎

それでは成田山新勝寺のご本尊である不動明王と團十郎家のゆかりについてご紹介します。
初代團十郎が跡取りを望んでも授からず故郷の成田山新勝寺で祈願したところ2代目を授かったことが始まりだそうです。初代はお不動様への感謝を表すために「兵根元曽我」という歌舞伎を作り親子で共演しました。お不動さまへの祈願が成就して長男を得たことに感謝をあらわした舞台で、不動明王をテーマにした初めての歌舞伎でした。この舞台は大評判となりこれを機に市川家は「成田屋」の屋号を使うようになったそうです。これが屋号の始まりとも言われています。
そして成田山が初めて江戸への出開帳(今でいうご本尊の巡回展示とご祈祷でしょうか)を行った際には「成田山分身不動」という歌舞伎で親子で不動明王を演じこちらも大評判となったそうです。
しかし初代團十郎が亡くなりわずか17歳で2代目は團十郎の名を襲名します。2代目團十郎は初代が生み出した荒事だけでなく助六のような和事の要素が含まれた役も見事に演じ「成田不動の申し子」と称賛されてその評判は一気に江戸中に広がっていったそうです。2代目の信仰心も父譲りで強く、成田山に籠り修行を積んだことが市川家のしきたりとして受け継がれていて13代目團十郎さんも海老蔵襲名の時にこの修行を行なっています。
代々の團十郎が成田山で徳を積んでいるため「にらみ」を観るとそのご利益で1年間無病息災で過ごすことができると信じられているのですね。

口上と祝幕そして大向こう

市川團十郎襲名披露公演ではこのにらみが披露されるまえに口上があります。市川家一門の皆さんは家の色とされている柿色の裃に、まさかりと呼ばれる特徴的な髷をつけます。
口上に登場される幹部俳優のみなさんはそれぞれの家の紋をつけた裃姿で祝辞を述べます。
私たちにとっては普段お目にかかれない、役柄ではない歌舞伎役者さんのお姿を拝見できる特別な機会でもあります。ちなみに昨年の歌舞伎座での口上では、かなりユニークなエピソードも飛び出したりと話題になりましたね。
今回博多座での襲名披露公演はご出演の役者さんが異なりますのでまた新たなエピソードを伺えるのが楽しみです。今回ご出演の中村梅玉さんは12代目團十郎さんと親交が深かったとお聞きしています。13代目團十郎さんそして8代目新之助さんの襲名を最も心待ちにされていたのが12代目團十郎さんだと思います。どんなお話を梅玉さんがなさるのか…そういった視点からも私は期待が高まります。

また歌舞伎座での襲名披露公演では祝幕が11月12月それぞれありました。
昨年11月は現代美術家の村上隆さんのデザインで『歌舞伎十八番』全18演目を團十郎さんと新之助さんがポップなイラストとなって大胆な構図で祝幕の至る所にあしらわれていました。村上さんをぜひにと紹介したのが、團十郎さんのドキュメンタリー映画を撮影されていた三池崇史監督でした。
昨年12月の祝幕は團十郎襲名を喜ぶゴジラと歌舞伎座があしらわれたデザインでした。手がけたのは映画シンゴジラ監督の樋口真嗣さんでした。ユニクロのTシャツにもなりましたね!
12月はもう一つ祝幕がありました。團十郎家の替紋にも使われる牡丹が大きく二つ描かれた祝幕は日本画家の福井江太郎さんが手がけられました。黒真珠のような高貴な深みのある色合いで、こちらも素敵でした。
博多座はどの祝幕になるのでしょうか?楽しみですね!
そして口上にご出演の役者さんのそれぞれの屋号を呼ぶ掛け声、大向こうもあり、観ている私たちの気持ちも高揚して大変盛り上がります。今年の2月博多座大歌舞伎から大向こうも再開されましたのでようやくコロナ禍前に戻った状態での襲名を迎えることになります。 


縁の一曲

今回の縁の一曲も13代目市川團十郎さんでした。
2014年に日本テレビで放送されたドラマ「弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」です。超進学校の母校で教師になった二宮和也さんが演じる主人公、田茂青志が新人教師にも関わらず超へっぽこ野球部の監督になり部員たちと勝利を目指す青春学園ストーリーでした。このドラマで当時の海老蔵さんは元プロ野球選手の谷内田健太郎役を演じられました。ピッチャーで4番の谷内田は甲子園で優勝し投手としてプロ入りしました。しかし肩の故障で現役を退き野球指導者として学ぶ為に渡米。再び日本のプロ野球でプレーするための準備で一時帰国する間に母校の特別臨時コーチに就任することになりました。青志には高校時代、谷内田のチームとの野球の試合で対戦してボロ負けしてしまったという苦い思い出があります。青志、谷内田が指導者としての再会、そして球児達の熱いプレーが物語の主軸となりました。当時の海老蔵さんのストイックに鍛え上げられた体が元プロ野球選手という役柄にピッタリでした。
このお役の経験が團十郎さんのペイペイドームでの始球式も生きるのではないでしょうか?ドラマの主題歌をお届けしました。
♪嵐 GUTS


めでてえなぁ

今週お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介する「めでてえなあ」のコーナーです!お名前と、所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますのでご了承ください。6/21から6/27がお誕生日の皆さんでした。

6/21中村翫之さん
中村鴈治郎一門

6/27市川瀧昇さん
市川門之助一門

以上お二人でした。お誕生日おめでとうございました!


次回のかぶきDOUは7/4㈫午前10:00〜10:25生放送でお届けします。お楽しみに!番組のYou Tubeアーカイブはこちらからご覧いただけます↓

※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりません。
ミキサールームからのトークの為スタジオは無人で音声だけの配信となっております。ご了承くださいませ。

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