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読書㉗ 『ZERO to ONE』起業家の未来
成功した起業家の過去の事例研究に意味はあるのか。
重要なのは未来がどうなるかだ。
それは偶然や運命で決まるのだろうか。
未来はどうなるかわからないという考え方が、今の社会に機能不全をもたらしている。本質よりもプロセスが重んじられていることがその証拠だ。
具体的な計画がない場合、人は定石に従ってさまざまな選択肢を寄せ集めたポートフォリオを作る。
逆に、未来は明確だという考え方に立てば、確固たる信念を持つ方が良いはずだ。
今回読んだ本は『ZERO to ONE』。そもそもなぜスタートアップが必要なのかを説く本書だが、それは未来への向き合い方についての示唆を与えてくれるものでもある。
未来に対する4つの考え方
未来は現在よりも良くなっているとも、悪くなっているとも予想できる。楽観的な人は未来を待ち望み、悲観的な人は未来を恐れる。こうした可能性を組み合わせると、未来は4つの見方にわけられる。
あいまいな悲観主義
避けようのない衰退がすぐに起きるか後で起きるか、破壊的か段階的か知る由もないが、それまでの間にとりあえず食べたり飲んだり楽しんだりする。ヨーロッパ人が長いバケーションに執着するように。
明確な悲観主義
未来を知ることは可能だと思っていて、かつその未来が暗いために、備えが必要だと感じている。
裕福な中国人が資金を海外に逃避させているように。
明確な楽観主義
自らの計画と努力によって、より良い未来が訪れると信じている。
1950年代のアメリカは、大胆な計画を歓迎し、実行できるかどうかを検討していた。
あいまいな楽観主義
未来は今より良くなると思っていても、どんな姿になるのか想像できず、具体的な計画を立てることはない。
1982年から現在のアメリカは金融やコンサルが流行っている。日本のエリートもそうだ。
起業家にとっての未来
私自身のことを振り返ると、基本的に、明確な悲観とあいまいな楽観を繰り返してきた。
未来が暗いから備えることが大事だと考え、しかしそれでいて具体的な計画を遂行できたわけではないのだ。
短期的な変動の激しい世界では、長期計画はたいてい過小評価されるのだ。
「明確な未来に至る方法は、起業することだ」
というメッセージで、本章は締めくくられる。
起業は、自分が確実にコントロールできる、何よりも大きな試みである。
起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる。それは不公平な現実を拒絶することから始まるのだ。
あいまいに悲観される社会で、明確な楽観主義を貫くことが、未来をつくる起業家だ。私はそうなりたい。