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追想の香り ローズマリー
私のサロン[kaboc tronc]の庭にはさまざまなハーブが息づいています。
ミント、レモングラス、レモンバーム、ラバンジン、ラベンダー、ローズマリー、ヘリクリサム、オレガノ……
たまに海からやってくる潮風で庭の植物がやられることもありますが
ハーブたちは負けることなく、本当に生命力を感じるものばかり。
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中でもローズマリーは、猛暑が続いても、雪が降りつもっても
つねに深い青さを保っていて、その動じない姿からは
「まあまあ、落ち着きなさい」なんていう達観した声が聞こえてきそうです。
あちこちに伸びた枝を剪定するとスーッとした香りに包まれます。
爽快感の中にも甘さがあり、すこしだけ苦味も感じるような。
学者の叡智を支えた香り
ローズマリーはラテン語で「海のバラ」という意味。
香りが強く、そしていつまでも残ることから
古代ギリシャでは「記憶」の象徴とされていました。
学者たちはローズマリーの小枝を耳の上にさして勉強していたそうです。
すてき。
実際に、ローズマリーの香りには記憶力を高める効果が認められています。
シェイクスピアのハムレットでも
悲劇のヒロイン・オフィーリアが
「私のことを記憶していて」という思いを込めて
ハムレットにローズマリーを手渡すシーンがあります。
また、ヨーロッパでは信頼を意味するものとして
結婚式や祭事でローズマリーの花冠をつける風習があります。
一方で死者への敬意と永遠の思いを表すため、
葬儀にも焚かれました。
アロマテラピー的 3つのローズマリー
古代からさまざまに役立てられてきたローズマリーですが
アロマテラピーでは芳香成分に注目し
含有する成分の違いによって大きく3種類にわけています。
1:ローズマリーシネオール(特徴成分:シネオール)
主な使われ方…痰を出したり、鼻水の通りをよくしたり。
呼吸器ケアにぴったり。
2:ローズマリーベルベノン(特徴成分:ベルベノン)
主な使われ方…肝臓や腎臓など排出器官のドレナージュ効果あり。
デトックスにおすすめ。
皮膚組織再生、傷跡を修復、など、肌にもgood。
注意が必要な人…乳幼児、妊婦、授乳中、高齢者など
3:ローズマリーカンファー(特徴成分:カンファー)
主な使われ方…筋肉を緩める、脂肪溶解、神経刺激など
使えない人…乳幼児、妊婦、授乳中、高齢者など
市販の精油の中には「ローズマリー」としか書かれていないものもありますが
成分によって使われ方や禁忌事項がぜんぜん違うのだから
買う前に「いったいどのローズマリーだい?」と
チェックするのが基本です。
世界各地で栽培されるローズマリー。
湿度が高いと、カンファーが少なくなる傾向にあるとか。
土壌環境によって含有する成分が異なるのはあたりまえのことですよね。
人間だって、食べるものが変わると体質も変わるんだから。
初心を思い出すローズマリーの香り
私は、アロマを学び出したころ
まず手に入れたのがローズマリーの精油でした。
この香りをかぐと、植物の奥深い世界に足を踏み入れた
ワクワクする気持ちが蘇ります。
そしてちょっと切なさも。
kaboc troncには何十種類もの精油があり
アロマテラピーショップでも見かけないようなコレクションもありますが
初心にかえり、ローズマリーやラベンダーといったベーシックな香りを
あらためて見直したいなという気もちが湧いてきています。
サロンにお越しいただいた方には
いつでもローズマリーの香りをお試しいただけます。
ぜひお気軽に匂いをかいでみてくださいね。
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