【ネタバレ有】ボッコちゃん
数年ぶりに星新一氏の短編集を読みました。『ボッコちゃん』は自選短編集なんですね。アイキャッチ画像はカズレーザーさんの帯コメントです。たしかに『ボッコちゃん』一冊読んで、どれも面白くなかった、という人は相当読書に不向きでしょうね。
ただ星新一のショートショート、面白いのに、しっかりと覚えていない話が多いのが不思議です。面白いのに。
この印象の薄さはどこから来るのか。『バーナード嬢曰く。』では「作品を印象付けるのは登場人物のキャラクター性。星新一作品では、記号的な登場人物が印象を薄くしているのではないか」と分析されていました。
強く同意すると同時に、私は「映像を頭に浮かべにくい点」もあるんじゃなかろうか、と思います。星新一に限らず、私がよく覚えている小説は、読んでいて想像した映像が頭に残っているものが多いのです。
星新一の中でも、よく覚えている作品は、想像した場面が頭に残っているものが多いです。忘れてしまっていた作品は、記号的で没個性な登場人物が、真っ白で必要最低限の家具しか置かれていない部屋にいるような、そんな印象を受けました。忘れていた作品も面白いものばかりなんですけどね。
以下、印象に残った短編の話。「親善キッス」「来訪者」がとくに好き。異星人ものが特に好きなようです。
ボッコちゃん
表題作、たった6ページでこの展開。シビれる。
「この店の客は上品なので」の一言には納得すると同時に笑ってしまう。来訪者
みんな俺が正しい、俺が正しいと主張している様を笑って鑑賞するという構図。いいご趣味ですこと!!月の光
なんとも言えない切なさ、星新一ってこういうのも書いていたのか… …という驚きもありました。第三者である私からすれば、それは愛情ではなく虐待なのだけれど、本人は愛情と信じて疑わない。歪んで見える。約束
大人になるってそういうことよな……。でも嘘自体は必ずしも悪いものじゃないので、物事を他の側面から捉えられるようになるのが大人になるってことなんじゃないかなあ、と。もちろん誤魔化したり騙すための嘘は良くないですけどね。親善キッス
探してた短編! 中身は覚えているのにタイトルを失念しておりました。
なんてこった、と思わせるラスト好き。因果応報とも何か違う。闇の眼
部屋が暗いのは両親“が”子供の顔を見ないためか! 子供のためではなく。
「世の中では、人と同じであることが幸福」という一言はその通りだと思う。人と違うことで苦しくなってしまうことは、ある。肩の上の秘書
楽だけどむなしい世界だな!意気投合
悪意ではないことがよくわかる。わかる分、相手を強く責めにくくなってしまうのよなあ。愛用の時計
藤子F先生の空気を感じる!!!!! ドラえもんでこういうオチの話あるし、お読みになってそうですね。
愛情を注いだものが持ち主に愛情を返す辺りに『ミッドナイト』も思い出すなあ。これは手塚治虫だけど。