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アイドル曲からみる「もどかしさ」のエッセンス

エッセンスと聞くと、最初に「物理のエッセンス」が思い浮かびます。

学生時代は理系でした。地下アイドルオタクのかべのおくです。


僕はライブの時以外にも、普段から聴く楽曲の殆どはアイドルです。アイドル楽曲の魅力は、表面的な曲・歌詞のキャッチーさだけじゃなくて、その中に込められた世界観や物語性だと思っています。

そのなかでも、「なんかもどかしい」「やきもきする」ような感情になる曲ってありますよね?そのような曲の歌詞には共通点があって、それは以下の2つだと思っています。

  1. 回りくどい言い換え

  2. 一向に進まないストーリー

今回はこの点について、2つのアイドル楽曲を教材に解説します。と言っておいて楽曲解説がしたいだけ


①回りくどい言い換え

「もどかし楽曲」の共通点は、ひとつの事柄をさまざまな表現で言い換えていることです。この結果、「結局何が言いたいの?」という気持ちにさせられて、もどかしさが生まれるのではないでしょうか?この言い換えを多用している楽曲の代表例が、ルルネージュの「あやふやロマンティック」です。

教材①: 「あやふやロマンティック」

ルルネージュと言えばYoutuberのヒカルとコラボしたり、TilTokで運営の裏側を発信したりとマーケティング的にも面白いのですが、今回は割愛します。

アイドルとオタクの関係性を、まわりにどう説明したら良いかわからない。そんなもどかしさに溢れすぎた楽曲です。なんと、曲中で「アイドル」という単語は1回しか登場しません。その代わりに多種多様な表現でそれを表現しようとします。

ほら恋人じゃなくて
友達じゃなくて
特別じゃなくて
(中略)
クラスメイトじゃなくて
カップルじゃなくて
親友じゃなくて
(中略)
幼なじみじゃなくて
知り合いじゃなくて
ラブラブじゃなくて
(中略)
赤の他人じゃなくて
兄妹じゃなくて
仲良しじゃなくて
(中略)
なんなの!
って聞かれても曖昧なまま
だってアイドルだから!

「あやふやロマンティック」より

「だってアイドルだから!」。果たして自分にとって、アイドルとはどんな存在なのだろう?と改めて問いかけられているようです。

また、「~じゃなくて」と否定形が連続して使われているのには別の効果もあります。人間は否定表現を具体的に想像することができないので、「結局なんなの!」という気持ちが、否定形を使えば使うほど高まってゆくのです。この曲はだいぶ極端な例ですが、こんなふうに回り道をして本質に切り込まないのはもどかしさを増大させると言えるでしょう。


②一向に進まないストーリー

①のように、同じ対象を違う表現で言い換えるのは、実は「ストーリーを進行させない」ことがその理由なのではないかと思います。それを教えてくれるのがナナランドの「ゼンブワザト」です。

教材②: 「ゼンブワザト」

作詞をしているのは、コレットプロモーションのプロデューサーでもある古谷完さんです。古谷完の作詞だと、「きみわずらい」や「大嫌い」が有名ですが、ゼンブワザトもその世界観の真骨頂です。

ホントは全部わざとなんだ
充電の切れた携帯も
ホントは全部わざとなんだ
終電の時間逃したのも
ホントは全部わざとなんだ
そう聞いたキミはどうする?

「ゼンブワザト」より

「『キミはどうする?』って、まだ聞いてないんかい!!」と思わずツッコミそうになりますね。つまり、そこまでの出来事(充電が切れた携帯、終電を逃した)のは、本当に起こった出来事ではなく、あくまでも「キミ」を独り占めしたいだけの方便に過ぎなかったのかもしれません。

そう、「ゼンブワザト」は全てが終わったあとの物語だったのです。2番まで聞くと分かりますが、主人公は「キミ」と二人で歩いてるだけで、現実では何も言葉を発していないことが分かります。このように、過去に色々あったかもしれないけど、現実は何一つ変わっていないというのはもどかしさを増幅させる一つの要素と言えそうですね。

また「ゼンブワザト」に限っては、「主人公がダメキャラ」というのも重要なポイントです。徹底的にズルい女になってでも「キミ」を手に入れたい。そんな聞き手が感情移入しやすい歌詞は古谷完の楽曲の魅力と言えるでしょう。


おわりに

まとめます。

ちょっとあざとくても、行き着く先が正解でいいでしょ!

以上です。

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