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07.タイムリープの実装問題

 タイムリープ(とここでは呼ぶ)という時間を超える技術の実装研究もそろそろ終盤に差し掛かっている。
「あぁー!またかー。」私は机を叩きながら頭をむしっていた。これまでの実験は昆虫から始まり、哺乳類も時間を超えて未来に送り込むことには成功している。技術は完全に安定しているのだ。ただ、これを人間に適用した際に何が問題になるかというと、服を一緒にタイムリープさせられないという重要問題。
 つまり、人間をタイプリープの対象とした場合、完全な素っ裸で未来世界に放り出されるのだ。一緒に持っていけるものは何もない。これは、動物であれば、あまり気にならなかった点である。原因は、タイムリープ時にタイムリープさせる対象物をどう判定するかという問題である。
 1つの生命体であると認識できれば、その塊でタイムリープができるのだが、服は体におおいかぶさっている別の物質と判定されてしまう。ここの調整が最後の課題なのである。
「ターミネーターくらい自身の裸に自信があって、力づくで他人から服を奪うことができれば何の問題も無いのだが...」
「全然知らない時間軸の世界に素っ裸で放り出されるのはなかなかにシュールだからなぁ。う~ん、解決策は無いものか。」

 先週試したのは、体の中心から半径1メートルの中をすべて未来に持っていくというもの。実はターミネータータイプはこれかもしれないのだが、そうすると服は持っていけるはず。ターミネーターはそもそも服を必要としていなかったのかもしれない。しかし、これは大体うまくいったのだが、少しでも1メートルを出てしまうと、ばっさり体を切断されるというホラーな機械になってしまう。この容赦ない危険性をマシンに組み込むことは避ける必要があった。

 そして、今週実験しているのは、体に触れている物質を一緒に未来にもっていく。つまり、体に密着させた服をそのまま持っていけないかというものだ。
「じゃあ、いくぞ。カウントダウン、10、9、・・・1、0!」
 大きな、本当に大きな地鳴りとともに、一瞬、目に見えている景色すべてが動いた気がした。

 そして、次の瞬間、更に大きい爆発が起こり、圧力と轟音で意識を失った。体に触れた服、靴、そして靴に触れているその地面、地面である地球ごと未来に送られたのだ。ちょうど未来の地球のあった場所に送られたものだから、現在の地球と未来の地球が衝突し、地球は粉々になった。

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