自然と人のダイアローグ ーフリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまでー
上野の国立西洋美術館
平日の昼間に訪れた上野美術館周辺・上野公園あたりは非常に混雑しており、美術館内は学生や主婦が特に多くみられた。
国立西洋美術館は今年リニューアルオープンしたこともあり客数が多かったのだろう。当館は、フランス政府から寄贈返還された松方コレクションの展示を主としており、本館はリニューアルを経てル・コルビュジエ設計による創設当時の様子に近づいた形になっている。
自然と人のダイアローグ ーフリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまでー
国立西洋美術館リニューアルオープンの記念として開催されているのが、「自然と人のダイアローグ」展である。
本展示は、開館100周年を迎えるドイツのフォルクヴァング美術館の協力を得て開催されたものであり、ドイツ・ロマン主義から印象派、ポスト印象派、20世紀絵画といった絵画の歴史をたどり、ヨーロッパの自然表現を紹介している。
日本初公開の作品もある本展示の作品を何点か紹介する。
まずは、ドイツからの初来日となる、晩年のゴッホの風景画代表作「刈り入れ」。晩年、精神を病み、療養中であったゴッホが「自然という偉大な書物の語る死のイメージ」を描き出し、麦を刈る人物に「死」を、刈られる麦のなかに「人間」のイメージを見たとされている。
明るい色使いをしているにかかわらず、なんとなく暗いイメージが感じ取れ、まさに生と死を表現している作品といえよう。
次にポール・シニャックの「サン=トロペの港」という作品。これはよく見るとすべて点で絵かれている点描画作品であり、淡い色合いで港に差し込む光の様子をうまく表現している。パステルカラーでかわいらしい印象があるが、のっぺりとした感じではなく、しっかりと立体感も感じ取れ、構造的にも美しさを感じられる。
ギュスターヴ・クールベの「波」という作品。クールベらしい緻密な光の表現を感じるとともに、激しい波の躍動感や光を帯びつつも厚い雲の様子が感じられ、目を引かれる1枚だった。
ピエール・オーギュスト・ルノアールの「風景の中の三人」という作品。同じようなタッチや似たような色合いで風景と人物が描かれているため、まさに題名のように風景の中に人物が溶け込んでいるように見える。また、光の描き方や色合いからは、夏の暑い日の日中がイメージされる、美しい表現がされている作品だ。
最後に
国立西洋美術館は約1年半の休館を経てのリニューアルなので、これからの夏休みに上野公園を訪れる際にはぜひ訪れてみると良いと思う。
本企画展は9月11日までだが、常設展もかなり充実しており、私も学生時代に何度か訪れた。
リニューアルオープン記念の本企画展、是非訪れてみてはいかがだろうか。
自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで
会期:2022年6月4日(土)~9月11日(日)
会場:国立西洋美術館(東京・上野)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分