記事一覧

新聞歌壇のまとめ⑨と少し短歌について

河口を漂っても壊れたままだけど溢れるまでに欠片を拾う 2024.9.10 毎日歌壇 加藤治郎選 (2024.8.6 投稿) 何を足すこともしないで木蔭には半分とけてやってくるバス 202…

芝澤樹
59分前
2

投稿のまとめ ⑧

ターナーのひかりの浜に佇っているあなたを羨むまま閉めた窓 2024.8.5 毎日歌壇 水原紫苑選 一席 (2024.7.18 投稿) 渚のとおくで電話が鳴っているもしもし、そこはいいと…

芝澤樹
1か月前
6

投稿歌 まとめ⑦

時間とは詩でありきみの指さきに撫でられている栞でもある 2024.6.17 毎日歌壇 加藤治郎選 一席 (2024.5.8 投稿) 本に置くかるい光のことをいうきみの (ちがう) の微かな…

芝澤樹
3か月前
11

投稿歌 まとめ⑥

さびしさをそっとしておくことなどができずに舟で迎える驟雨 2024.5.20 毎日歌壇 水原紫苑選 (2024.5.1 投稿) とりとめもなく青空を撮っているわたくしという器の外を 202…

芝澤樹
4か月前
8

投稿歌 まとめ⑤

白雲を翼と呼んでいつまでもそこにあるから飛べない僕ら 2024.4.8 毎日歌壇 加藤治郎選 (2024.2.26 投稿) せいせいとしたせいしゅんを送ります雪に触った手を乾かして 202…

芝澤樹
5か月前
5

冷えている肩を冷やして漁港まで歩いて常夜灯を見に行く

 歩いている景色に飽きることが、もっとも虚しく寂しいことだった。  同じところをぐるぐるとして、断片的な起点を延々と繋ぎ合わせるには、十分で丁度いい変化さえあれ…

芝澤樹
6か月前
8

새의 귀 / 鳥の耳

새의 귀 서러운 까닭을 찾고 찾는 이유가 없다는 것을 깨달았을 때 연기의 날개 먼 물소리에 귀를 기울이고 있다 새의 소유이다. 鳥の耳 悲しいわけを探して 探すという…

芝澤樹
6か月前
3

投稿歌 まとめ④

たましいは宿るのではなく在るのだと夕映のなか谺する木々 2024.1.8 毎日歌壇 水原紫苑選 二席 2023.12.10 投稿 壊れてる(、音で雨戸をたたくあめ、)、愛さなかった、(わ…

芝澤樹
6か月前
5

投稿歌 まとめ③ 2023年

※2023.1.14 毎日歌壇・水原紫苑選に投稿を始める 疲れたら洗濯物をとりこんで雲の上の歌声をわすれる 2023.1.30 毎日歌壇 加藤治郎選 2022.12.12 投稿 海、とおい海にう…

芝澤樹
6か月前
6

投稿歌 まとめ② 2022年

大雪に遅れたバスを待っているつややかな珊瑚色のバスを 2022.1.9 東京歌壇 東直子選 一席 2021.12.5 投稿 (1月月間賞) もうここで戻れないならそう告げて蜜柑の香りが翼…

芝澤樹
6か月前
2

投稿歌 まとめ① 2020年〜2021年

2020年 「空が見たい」と言い旅立ったあの子に青いビニールシート被せて 2020.12.20 東京歌壇 東直子選 二席 片栗粉に押し当てた白い卵のあと滑らかで入れない天国 2020.…

芝澤樹
6か月前
1

성지/聖地

성지 나는 여기에 있어. 난 여기서 부르겠어. 부르도록, 내가 여기에 있어. 나는 이렇게 부른다 "문이 하나 있는 내 공허한 성지에 다른 누구한테도 알려지지 않은, 공허…

芝澤樹
10か月前
3

蝶の寿命/나비의 수명

蝶の寿命 春の蝶が夏に死ぬように わたしは季節をひとつ寝坊した 世の先生がたは早起きだが 今の生活に慣れるのに 将来を楽しみに待つことは 今からでも遅くはないだろう …

芝澤樹
10か月前
4
新聞歌壇のまとめ⑨と少し短歌について

新聞歌壇のまとめ⑨と少し短歌について

河口を漂っても壊れたままだけど溢れるまでに欠片を拾う
2024.9.10 毎日歌壇 加藤治郎選
(2024.8.6 投稿)

何を足すこともしないで木蔭には半分とけてやってくるバス
2024.9.16 毎日歌壇 加藤治郎選 一席
(2024.8.16 投稿)

何度目にいえばよかったの泣いたからくるしいメロンパンの感触
2024.9.29 東京歌壇 東直子選
(2024.8.28 投稿)

眠るこ

もっとみる
投稿のまとめ ⑧

投稿のまとめ ⑧

ターナーのひかりの浜に佇っているあなたを羨むまま閉めた窓
2024.8.5 毎日歌壇 水原紫苑選 一席
(2024.7.18 投稿)

渚のとおくで電話が鳴っているもしもし、そこはいいとこですか
2024.8.5 毎日歌壇 加藤治郎選
(2024.6.27 投稿)

さみどりの胸の抽斗取りだして近くの雲をそうっといれる
2024.8.12 毎日歌壇 加藤治郎選 二席
(2024.7.3 投稿)

もっとみる
投稿歌 まとめ⑦

投稿歌 まとめ⑦

時間とは詩でありきみの指さきに撫でられている栞でもある
2024.6.17 毎日歌壇 加藤治郎選 一席
(2024.5.8 投稿)

本に置くかるい光のことをいうきみの (ちがう) の微かなふるえ
2024.6.24 毎日歌壇 加藤治郎選
(2024.5.14 投稿)

音楽はたやすく髪を揺らすから綻ぶ花をまかせられない
2024.6.24 毎日歌壇 水原紫苑選
(2024.6.5 投稿)

バス

もっとみる
投稿歌 まとめ⑥

投稿歌 まとめ⑥

さびしさをそっとしておくことなどができずに舟で迎える驟雨
2024.5.20 毎日歌壇 水原紫苑選
(2024.5.1 投稿)

とりとめもなく青空を撮っているわたくしという器の外を
2024.5.27 毎日歌壇 水原紫苑選
(2024.5.9 投稿)

強く吹く風 ひかりには傷ついてしまう木もある 強く吹く風
2024.6.3 毎日歌壇 加藤治郎選
(2024.4.25 投稿)

初夏の冷たい肺

もっとみる
投稿歌 まとめ⑤

投稿歌 まとめ⑤

白雲を翼と呼んでいつまでもそこにあるから飛べない僕ら
2024.4.8 毎日歌壇 加藤治郎選
(2024.2.26 投稿)

せいせいとしたせいしゅんを送ります雪に触った手を乾かして
2024.4.16 毎日歌壇 加藤治郎選
(2024.3.6 投稿)

さめの縫いぐるみを抱いてはだしのままベランダに立つ さくらが触る
57577展2nd テーマ:「愛着」 岡野大嗣選

雛菊の花の細部におどろいて

もっとみる
冷えている肩を冷やして漁港まで歩いて常夜灯を見に行く

冷えている肩を冷やして漁港まで歩いて常夜灯を見に行く

 歩いている景色に飽きることが、もっとも虚しく寂しいことだった。
 同じところをぐるぐるとして、断片的な起点を延々と繋ぎ合わせるには、十分で丁度いい変化さえあればよかった。その変化も歩き尽くした放浪の末、夜の漁港に辿りつくことが多かった。

 現実から目を覚したくて夢を見、夢想の中に居場所をつくった。居場所、というのには偽りがあるかも知れない。私は人気のあるところでも人目を気にしなかったし、汚い吹

もっとみる
새의 귀 / 鳥の耳

새의 귀 / 鳥の耳

새의 귀

서러운 까닭을 찾고
찾는 이유가 없다는 것을 깨달았을 때
연기의 날개
먼 물소리에 귀를 기울이고 있다
새의 소유이다.

鳥の耳

悲しいわけを探して
探すということに理由がないと悟ったとき
煙の羽
遠い水音に耳をすます
鳥の所有だ

投稿歌 まとめ④

投稿歌 まとめ④

たましいは宿るのではなく在るのだと夕映のなか谺する木々
2024.1.8 毎日歌壇 水原紫苑選 二席
2023.12.10 投稿

壊れてる(、音で雨戸をたたくあめ、)、愛さなかった、(わけを受話器に
2024.1.15 毎日歌壇 加藤治郎選 一席
2023.11.13 投稿

あくる朝あなたは雪のようでした 声をつまらせて覚める夢
2024.1.29 毎日歌壇 加藤治郎選
2023.12.10

もっとみる
投稿歌 まとめ③ 2023年

投稿歌 まとめ③ 2023年

※2023.1.14 毎日歌壇・水原紫苑選に投稿を始める

疲れたら洗濯物をとりこんで雲の上の歌声をわすれる
2023.1.30 毎日歌壇 加藤治郎選
2022.12.12 投稿

海、とおい海にうまれた月齢をたしかめているしんしん冷える
2023.2.14 毎日歌壇 加藤治郎選
2022.12.27 投稿

薄い色ばかりが好きで泣いていたひとを抱きしめられないゆめで
2023.4.3 毎日歌壇

もっとみる
投稿歌 まとめ② 2022年

投稿歌 まとめ② 2022年

大雪に遅れたバスを待っているつややかな珊瑚色のバスを
2022.1.9 東京歌壇 東直子選 一席
2021.12.5 投稿
(1月月間賞)

もうここで戻れないならそう告げて蜜柑の香りが翼に沁みる
2022.1.29 NHKラジオ文芸選評 加藤治郎選
テーマ「蜜柑」

国境を越せないからだ思うとき眼窩に昏い木蓮がある
2022.1.31 毎日歌壇 加藤治郎選
2021.12.6 投稿

片付けに白

もっとみる
投稿歌 まとめ① 2020年〜2021年

投稿歌 まとめ① 2020年〜2021年

2020年

「空が見たい」と言い旅立ったあの子に青いビニールシート被せて
2020.12.20 東京歌壇 東直子選 二席

片栗粉に押し当てた白い卵のあと滑らかで入れない天国
2020.12.27 東京歌壇 東直子選

2021年

※2021.3.10 毎日歌壇・加藤治郎選に投稿を始める

※2021.6.22 東京歌壇・東直子選に一時やめていた投稿を再開する

シーツ引き皺伸ばしたら花の息ほ

もっとみる
성지/聖地

성지/聖地

성지

나는 여기에 있어.
난 여기서 부르겠어.
부르도록, 내가 여기에 있어.
나는 이렇게 부른다
"문이 하나 있는
내 공허한 성지에
다른 누구한테도 알려지지 않은,
공허한 하느님의 성지에
난 있어 !"
그리고 당신을.

聖地

私はここにいるよ
私はここで呼ぶよ
呼ぶように、私はここにいるよ
私はこう呼ぶ
「戸のひとつある
私の空虚な聖地に
ほかの誰からも知られない、

もっとみる
蝶の寿命/나비의 수명

蝶の寿命/나비의 수명

蝶の寿命

春の蝶が夏に死ぬように
わたしは季節をひとつ寝坊した
世の先生がたは早起きだが
今の生活に慣れるのに
将来を楽しみに待つことは
今からでも遅くはないだろう

나비의 수명

봄나비가 여름에 죽는 것처럼
나는 계절을 하나 늦잠 잤다.
세상의 선생님들은 일찍 일어나지만
지금 살기에 익숙하는 데
꿈을 기대되고 기다리는 거은
지금부터라도 늦지 않을것이다.