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ロンドン初自炊記念

 今日は起きて、電話して、自炊して、電話して、しゃべって寝た。

 昨日は図らずも9000円くらい食事に使ってしまった。あるまじき贅沢である。朝起きて絶望しかけたし、今日は1ポンドも使いたくないという気分になったがそうも言ってはいられない。何も食べるものがないからだ。ということで自炊をすることが僕のなかでの今日の決定事項になった。

 こちらに来てから食が細くなったと思う。といってもそれなりの量を食べてはいるのだが、1日に1.5食か2食くらいしか食べていない。今ラーメンハシゴをできる自信はない。だが、そうはいっても1食あたり、スーパーで総菜を買って食べるなら最低でも800円(Meal Dealといって、軽食とお菓子とドリンクをセットで買うと300円以上割り引かれる制度があるがそれを使ってもこの値段)は必要なので1日の食費がどうしても2000円程度になってしまう。それはちょっと、という気分である。これ以上食費を安くするには自炊をするしかないのだ。

 というわけで自炊をよくする人に相談しながら、スーパーで買い出しに行く。もうすでに2時なのでお腹がすいてたまらない。きちんと材料を選べば安いものは安い。例えば鶏の手羽元とモモ肉が540G入ったパックは350円だった。ほかにも生野菜は100-200円程度で手に入るものもある。パスタも安いが、ちょっと量が多く、宿泊先未定の身としては食べきれる自信がなかったので保留で。また、ホステルには最低限の調理器具とちゃんとしたキッチンはあるが、調味料もないのでかなり料理が限られてくる。鳥の煮だした汁に期待することにして、結局、鶏モモとキャベツと麵を湯がく料理にすることにした。これに割引されていたお菓子を合わせて合計で1000円ほど。

 帰ってきて、改めて確認するがやはり調味料はない。油もない。ほんとに水から湯がくしかない。インスタント麺の調味料を使ったらいいのではないかと言われたので、インスタント麺の調味料を入れてまず鶏を半分湯がき(もう半分は晩御飯)、キャベツを3分の1湯がき、同じお湯で麺を湯がいて、汁以外をプレートに盛り付け、残った汁をスープにすることにした。見た感じ健康そうで鶏ダシのにおいが漂い、おいしそうである。ちなみに麺を水揚げしたのはプレート料理みたいにしてみたかったからである。

 実食。たいへんおいしい。味はいささか淡白であるものの、調味料なしで作ったという達成感がそれを帳消しにしてくれる。ただ、さすがに水揚げされたインスタント麺はそこまでおいしくはない。適宜水戻しして食べる。そしてキャベツと鶏のうまみが出まくったスープだが、これはとてもとてもおいしく、温かさもあって心と体に沁みる。うん、総合して70点。調味料ってすごい!でも3日くらいはこれだけでもいけそう。

 そのあとは、たまたま連絡してくれた東京の先輩とすこし通話する。街なかを散歩しながら話していたのだが、最初はみなロンドンの景色を物珍しがってくれるし、こっちも散歩できるし一石二鳥だと思う。ただし、これができるのは晴れているうちでそろそろ冬になると厳しいかもしれない。少し焦っているという話をすると、僕は頑張っているし自分を大事にできているし焦らなくて大丈夫、みたいなことをいって励ましてくれた。ありがとうございます。調子に乗りそう。でも、焦っているのは心底本当で、それはずっと心の底で燻っているのだが、たぶん心の底ゆえ、僕は常時近くしているもののほかの人には全くわからないと思う。傍から見れば僕はいつ見てもなんやかんやヘラヘラとしていて危機感も薄いので、何も考えていないように見えるかもしれない。実際、焦っているだけで行動には直結しないものだから、焦り続けたまま半年後も全く同じ状況の可能性がある。それには強く危機感を覚えております。はい。本当によくなくて……

散歩。トラファルガー広場も見つけた。

 そのあとは宿に戻って少し友達と連絡を取り、楽しそうな近況を聞く。本人にすれば悩ましいらしいが楽しそうにしか聞こえない。とはいえ彼は同時にすごい勉強をこなしているのでそれは掛け値なしにすごい。そして電話を切ってキッチンで晩御飯を作る。ほぼ内容は同じだが今回はうどん(韓国製)で、スープに入れて食べようと思う。同じ手順で作るのだが、その途中でここ数日一方的に認知していた人が隣に来て炊飯器を使い始めたので声をかける。日本人ではなかったが、その人も留学で、もうすでにイギリスでマスターを終えたが卒業式まで数か月時間がある(謎!)ので、ロンドンでホステルを転々として過ごすらしい。その人は最低限の調味料と炊飯器を使ってとてもおいしそうな料理を作っていて羨ましいが炊飯器を買う気にはならない。

うどんはちょっとのっぺりしていた

 二人でご飯を食べ、東アジア出身で同じ学生という境遇もあってか、なんとなく親近感がわき、そのまま話をする。その人もちなみに社会人マスターで、その人は仕事をやめ、マスターで学びを深め、少し違うより専門を生かせる仕事に就きたいらしい。すごい。そして社会人マスターとイギリスに来てから出会いすぎて何人目かわからない。みんなそれぞれ自身のキャリアをやめたり休職して学生をしていて、それぞれが非常に楽しそうなので、そういう選択肢もあるのかなと思う。社会人になるというのがどういうことかを僕はまだあまりわかっていないが、もしまたイギリス(あるいはヨーロッパ)に戻ってくるなら学生として戻ってきたい。僕らは、とりとめもなくいろんな話をしたが、東アジア人をそれぞれ見分けられるかという話で、僕は日本人は見分けられるぜといい、実際に自身もあったのだが、その人のクラスメートたちの写真を見せられてどれが日本人かあてるというクイズで、誤答率8割を叩き出し、かつ相手に試したときは全問正解だった故に、ただただ赤っ恥を書いた。もう二度と見分けられるとは言わないが、写真じゃなくて実際に見たら本当に絶対に日本人だって思う人はいるんだけどな……

 ちなみに、同じ東アジア人という連帯感に関してはこっちに来てみたらわかると思うがある程度ある。ただ相手が中国人とか韓国人の集団だと、おなじような見た目であるがゆえにそれ以上の疎外感があったりもするが、やはり僕らは住む場所が近いのだなと思う。その人はアジア系の人のほうが顔立ち的にも性格的にもやはり合うなと思うらしく、食事も合わさって帰国が待ち遠しいと言っていた。僕は食事以外ではまだ帰りたいと思っていないし、食事にしても今日自炊をしたことでかなり緩和されたが、もうしばらくしたらどうなるのだろうか。明日はその人がホステルから出るうえに、スーツケースが4つもあってとても一人では運べそうにないのでお手伝いをすることにした。今日の食費は1000円。

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