『さまよえる湖』:感電するように
最近、コロナもまあぼちぼちということで会社に出る日が増えており(できればテレワークしたい)、電車の中で音楽を聴くという「そういえばそんなこともやってた」みたいなことをしていた。テレワークになって、この半年ほぼ音楽、聴いていない。基本的にBGMは環境音が好きなので、作業中はあまり音楽を流さない。環境音というのは森の音とか雨の音とかレストランのガチャガチャした音とか、そういう。疲れてるとアニメや洋画の円盤回したりするけど、音楽...このところ聴いてないなあんまり...そういえばだけど...。
それで、moraで落としたきりだった米津さんの『感電』をようやくまともに聴いていたのだけれど、聴いているうちになんだか無性に美しい場面が見たくなって、それはもう一瞬に焼き付いたものが永遠に残るような場面はなかっただろうかと思って、家に帰ってからヘディンの『さまよえる湖』を引っ張り出してきた。ぱっと浮かんだのはこの本の中の、《ローランの王女》とされた女性のミイラを発掘した場面だった。
なんだか、こんな、一瞬を永遠に焼き付けるような場面を探したくなったんだけど、浮かぶものがあったことが何だか嬉しかったので、これはそんな話。読んだものが、あとで必要になると嬉しいじゃん、嬉しいですね...。
われわれは未知の若い女性を一夜だけ棺に入れたまま星の光を浴びさせた。夜風が彼女の青白い、いくらか黄色がかった頬と、手幅ほどの長さの髪の毛をなでた。ほぼ二〇〇〇年もたつあいだにただ一夜だけ、彼女は墓から起き上がって世間へともどってきたのである。(p102)
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