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45/たくさんの『3』
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【記事のポイント】1973年に関しては『3』にまつわるアレコレを取り上げてみました。3つの要素はお互いに牽制しあい、運動の予感と均衡という矛盾した印象をつくり出します。
第5章/4. 1973年と三づくし
第二次世界大戦の勝利によって圧倒的優位を確立した国の文化、アメリカン・ポップは世界をかけめぐり、明るく楽しい幻想をまき散らしました。
反面、近代芸術の常として、隆盛を誇った文化には必ずアンチテーゼが生まれます。
ポップアートの軽薄さを糾弾するかのごとく、ストイックで難解なアートも流行し始めました。
コンセプチュアル・アート(概念芸術)と呼ばれるジャンルであり、その開祖はダダイスムの巨匠マルセル・デュシャンでした。
デュシャンは「絵画は網膜的に堕した」という言葉を残しています。
かつて絵画は、何かを意味する記号体系でしたが、印象派以降の絵画は、ひたすら目にとっての刺激を追い求めるようになりました。
表面的な美しさに心を奪われ、意味の奥行きを失っていったのです。
そうした現象に対して、「20世紀最高の知性」と言われる人物(そう指摘したのはアンドレ・ブルトン)が、漏らした嘆きでした。
要するに、目の刺激を追い求めるだけでなく、もう少し頭を使いましょうよ、というわけです。
コンセプチュアル・アートは、美的な問題ではなく、ものの在り方を見つめる芸術でした。
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