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冷凍した柑橘ピールの苦味の増加についての考察
本noteは、冷凍した柑橘ピールを冷凍した場合の苦味の増加の理由を考察したものであり、化学的な実験などは行っておりません。より詳しい方がいらっしゃいましたら、ご教示頂けますと幸いです。
経緯
実験として冷凍した柑橘ピールと生の柑橘ピールをそれぞれ同じ条件で65%程度の少量の飲用アルコールに浸した際、冷凍のものと生のもので苦味に大きく差異を感じました。ほとんど同じ条件にも関わらず大きな差異だったので、後学のために苦味成分の推定とそれを取り除く方法の考察までを行ってみます。
※ここで言う「ピール」の定義は、果実における外果皮(フラベド)、油胞、に少量の中果皮(アルベド)が混じっているものを指します。
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柑橘中の苦味成分
柑橘中の苦味成分は大きく分けて2つの分類になることが分かりました。
リモノイド属
他にもノミリン酸、イチャンギンなどが苦味を持つようですが、柑橘で問題になるのはリモニンとノミリンのようです。リモノイドの苦味閾値は7~12ppmとされていますが、水溶液中ではリモニンで0.8~1.2ppm、ノミリンで1.3~1.6ppmとの分析結果もありました。
リモニンはメタノール又は酢酸エチルに溶けにくく、水又はエタノール(99.5)にほとんど溶けないようです。ノミリンの可溶性についての記述は発見できませんでした。ただし、ノミリン水溶液での分析結果は発見できたことから、このnote中では一旦リモニンと同等程度の可溶性であると想定したいと思います。
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ナリンギン(ナリンジン)
エタノール(95)又はアセトンに溶けやすく、水に溶けにくい。
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苦味成分についてこれらの成分が主であることは後述の様々な文献からも推し量ることができます。
リモノイド属に関しては、水及びエタノールに難溶ではあるものの閾値が低いため、微量に溶出した成分が味覚に関与していると思われます。
冷凍によって苦味が増加することについては、冷凍・解凍によって細胞が破壊されると、生の状態に比べ溶出するリモノイドの量も増えることが原因ではないかと推測できます。
苦味成分を取り除く
リモニンは5分間の加熱によってリモネートA環ラクトンに転換し始めるようです。これは苦味のない無味の成分で、果実中にも含まれます。さらに5分加熱すると17-デハイドロリモネートA環ラクトンに変化し、こちらも苦味のない物質のようです。また、ナリンギンについても加熱により大幅な減少が見られるようで、5~10分程度加熱を行うことで苦味の軽減を行うことができると思われます。
後述の武庫川女子大学による1990年の晩白柚を使った実験では、15分の加熱で苦味が消失し、風味は残存していたとの結果が報告されていました。
リモネートA環ラクトン
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まとめ
以上のことから、冷凍による柑橘ピールの苦味の増加は、苦味成分自体の増加というよりも、冷凍・解凍によって破壊された細胞組織から水・アルコールなどの溶媒に溶出する成分が増えたことに起因していると考えられ、苦味を軽減するためには5~10分程度以上の加熱が有効であると考察します。
拙い考察でしたが、ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。もし間違いなどをご指摘頂ける専門家の方がいらっしゃいましたら、何卒宜しくお願い致します。
参考文献
1180-71-8・リモニン・Limonin・123-06101【詳細情報】|【分析】|試薬-富士フイルム和光純薬
1063-77-0・ノミリン・Nomilin・502-37061【詳細情報】|試薬-富士フイルム和光純薬
10236-47-2・ナリンギン・Naringin・148-06371【詳細情報】|試薬-富士フイルム和光純薬
産総研:四国センター 機能性成分分析マニュアル 「柑橘のリモノイド」
KAKEN — 研究課題をさがす | バンペイユにおけるリモノイド代謝
A possible metabolite of limonoate A-ring lactone in Citrus fruits