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人も事業も”特異点”を超えるタイミングの見極めが重要である
「データ分析×人×ビジネス」の軸で記事を書いています。
今回はリーダーシップやマネジメントに関する話です(これは本の要約とかではなく、私の経験に基づいた意見です)。まずはこれから話す内容で特に重要なポイントを整理しておきましょう。
人、チーム、組織、事業どれであっても特異点を超えるサイクルが存在する。
自分らがどのステージにいるかにより、リーダーシップやマネジメントのスタイルを変化させなければならない。
書籍では「いくつかの型があり、人によってタイプが違う」みたいなことが語られている。しかし、これらの型はスキル種別に近く、複数のものを切り替えて使う必要がある。(性格の向き不向きで捉えてはいけない)
なお、今後も同じ図を用いて異なる視点での記事を書く予定です。その前提ともなるので、まずは下図の説明をさせてくださいね。
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灰色の資格枠が2つ並んでいます。人でいえば、左枠がスタッフ時代、右枠がマネージャ時代のようなイメージです。事業でいえば、左枠がスタートアップ時代、右枠が大手企業になった時代(安定して大規模な売上が定常的にある)といえます。
ただし!この「左枠→右枠」の構造は「成長段階において繰り返し訪れる」もので、実際にはミルフィーユのように層をなしているものだと考えています。スポーツでいえば初級段階での左枠→右枠があり、中級にレベルアップしたら同じく左→右、さらに上級者になると新しい左→右、・・・となっていくイメージです。
「左枠」が飛躍的に成長する構造を表す
人の成長でも、事業の成長でも、思い浮かべやすい方で考えてください。
まずは「個人のレベルアップ」という段階があり、これは「ちょうど良い仕事をこなす」ということを、数多く体験することによって生まれます。換言すれば最初はとにかくスピードと量が重要なタイミングだということです。ストレッチでいえば、ちょっとだけ「あいたた~」と痛みが程よく感じられるほどの負担をかける仕事をこなすということです。あまりに無理をしすぎてはいけないということです。
これによって個人のレベルアップが進むと、今度は多少「きつい」仕事をしなければなりません。先のストレッチの例でいえば、腱が切れないレベルで無理に伸ばすみたいな感じでしょうか。少し頑張っただけでは成功しない、物理的にも精神的にも無理をしないと(ただし病気になったりするほどではいけない)こなせないような仕事をする段階です。ただ、これは比率が重要で【ちょうど良い仕事:ストレッチ性のある仕事=7:3】くらいの目安がいい気がします。
これら2つの性質の仕事をこなすサイクルを回せるようになると、この時点でかなり個人のレベルはアップしているはずです。ここから先が「特異点」を超えられるかどうか、重要な局面です。ここでは「明確に無理のある仕事」に挑まなければなりません。これもイメージにはなってしまいますが、今までの経験では太刀打ちできない、業界的にも先行知見がない、成功事例がない、といったような仕事です。誤解を恐れずにいうと、こういうたぐいの仕事は失敗する確率も高く、正直なところ物理的にも精神的にも「病気になる寸前」もしくは「病気になってしまうことも含む」レベル、かなりきわどい無理をするということになります。 ※決して推奨しません!
この第2段階から第3段階へ行けるかどうかが特異点を超えるということです。しかしながら、前述したようにきわどいラインでもあるので、この段階のサイクルを回すのにはリスクがあります。ただし、このサイクルを回せるようになると最終段階である「飛躍的な成長」に達することができます。なぜ特異点が2→3のところであるかというと、大概は「こういう仕事はやらない方がいいし、できる人も限られる」からです。
完全に私の経験的な推測値ではありますが、図中緑字にあるよう:
第1段階=ちょうど良い仕事をこなすをやれる人の割合が50%(100人従業員がいたら、半分はこういう段階にいる)
第2段階=ストレッチ性のある仕事をこなすが10%
第3段階=無理のある仕事をこなすが5%
という感じでの構成比になる気がしています。つまり、特異点を超えられる人は、100人中5人もいれば御の字という感覚値です。
ちなみに、残りの35%は「仕事をしない人」です。個人レベルでいえばちょうど良い仕事さえこなさないレベル、組織でいえば100人中35人くらいは「もうちょっと頑張ってほしいのにな」と思われるような人たちです(彼らが無能だとか悪いという意図はありません。何なら僕はレベルアップをすることだけが重要でないと思っています)。
「右枠」は飛躍的な成長を遂げた後、継続的な成長領域に転換できるかどうかを意味する
ここで図を再掲します:
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飛躍的な成長を遂げた後、実は「それが継続的に続く状態」に持っていけるかどうかも重要です。ビジネスの話でいえば「定常的な売上が確保でき、かつそれがローコストオペレーションで成り立っている」という状態です。もっと端的にいってしまえば「寝てても儲かる仕組みが機能している」ということです。
少し余談ですが、大概「仕組み化」という話題に着手する人たちは、この飛躍的な成長の段階に至っていないケースが多いです(あまり断言してはいけないと思っていますが、、、)。昔いた会社で「個別実績の積み上げ→定型化→半自動化→自動化」という話を教わりましたが、まさにそういうことだと思っています。要するに何を仕組み化・自動化すると寝てても儲かるようになるのかを知らずに目指してしまうケースが多いということです。これは留意点として紹介しました。
リーダーシップとマネジメントどちらでもよいが、転換期に異なるやり方が求められる
リーダーシップとマネジメントの定義から始めると、長くなってしまいますので割愛します。いずれにしても重要なことは「何かを上手くやるためにスキルシフトが必要」ということです。ここでは、スキルシフトとは(1)複数のスキルを習得し、(2)それを状況によって使い分ける、ということを意味しています。
まず左枠のタイミングにおいては、いわゆる「俺に着いて来い!」というタイプのスキルが必要です。性格的な話で例示するなら、自ら道を切り開く、周りができないなら全部自分で巻き取る、とにかく自己主義で突っ走る、etc.みたいな人物像ですね。この段階に求められるのは、一言でいえば「力強さ」なので、実力のない人がこの段階でリーダーやマネージャを務めても何もできないわけです。
対して右枠のタイミングにおいては、少し前に流行った(?)サーバント型リーダーというやつに近いでしょう。これも分かりやすさを重視して、多少の正確性を無視して表現してしまいましょうか。例えば、みんなを盛り上げるのがうまい、ビジョンをみせつつ人に応じた依頼ができる、希望に満ち溢れたことをいう、etc.こういう感じです。この段階においては力強さというよりも、どちらかというと「辛抱強く、かつ慎重に待てる」みたいなスキルが必要です。換言すればとにかく未来(方向性)を示し、やる気を出させる工夫をするということです。
さて、これだけの説明をしてきて私が言いたいこととしては、
こうしたスキル性質の違いは、往々にして「人の性格による」とリーダーやマネージャを人格特性と紐づけるような考え方では成り立たない
ということになります。「あの人は~なタイプだからスタートアップに向く」とか「あの人は~なタイプだから大企業に向いている」ということではないのだと思っています。もちろん正しいのですが、これからの時代に求められる人物という意味では、こうしたリーダーやマネージャとしてのスキル性質を「要素」として理解し、それらを習得し「状況に応じて出し引きできる」というスキルが重要なのだろう、ということです。
そしてこれも余談になるのですが、右枠段階において大切だなと思うキーワードが2つあります。これを紹介して本記事を締めくくりたいと思います。この2つを巧みにコントロールすることが、重要なのだと考えていますが、その内容については皆さん自身も考えていただけるとよいかもしれません(また機会があればこれについての意見を発信したいと思います)。
気くばり
感謝
まとめ
人、チーム、組織、事業どれであっても特異点を超えるサイクルが存在する。
自分らがどのステージにいるかにより、リーダーシップやマネジメントのスタイルを変化させなければならない。
書籍では「いくつかの型があり、人によってタイプが違う」みたいなことが語られている。しかし、これらの型はスキル種別に近く、複数のものを切り替えて使う必要がある。(性格の向き不向きで捉えてはいけない)