秋の夜長の一冊(ロバート・A・ハインライン 著 矢野 徹 訳 『月は無慈悲な夜の女王』ハヤカワ文庫)
(ただの読書感想文になります。)
気が付けばもう秋。コロナ、コロナ、と、振り回されている間に、今年も3分の1を残すのみになってしまいました。その少し前、夏の中盤に届いた一通のメール。
「ご予約の本が届きました」
図書館からでした。
『月は無慈悲な夜の女王』ロバート・A・ハインライン 著 矢野 徹 訳
、、SF。
もはや、いつ予約したのか、なぜ読みたいと思ったのかも思い出せないまま受け取りに向かいました、、しかも結構な厚さ(約600ページ)。でもまあ、1990年刊行(1965年から1966年にアメリカで連載)の小説で、予約待ちの人がそれだけいたということで読みました。読み切れませんでした。
kindleで購入して続きを読みました。
なので、秋になりました。
前置きが長くなりましたが、本題。
有名なSF小説のようなので読んだ方もいらっしゃるかと思いますが、月を舞台にした2075年~の革命物語。
作品中で、月世界人が、圧制を働く行政府に対して独立を宣言する日が、アメリカ独立宣言から300年後の2076年7月4日で、月世界の住人は地球からの流刑囚、その他、革命に至る経緯など含め、アメリカのイギリス本土からの独立の背景に近いかたちで描かれてます。
話の構造としては、勧善懲悪。更に、偶然の出会いから、革命の中心人物になっていく主人公(行政府に雇われている個人請負業者の計算機技術者)を、
「わたし の 唯一 の 友達 よ」
と、呼ぶのが
主人公からマイクという呼び名を与えられた、今でいうAIの進化形で、
という、″チート”な存在。で、行政府も、主人公とマイクの関係を知らない。
このマイクによって、物語内におけるリアリティの範囲を絞ることができていて、仲間内での裏切りの未然防止策、同胞の意識の方向性、地球からの攻撃の防衛、反撃、月からの攻撃、その後の交渉など、現実世界の場合と同じ考察が描かれています。
でなければ(マイクがいなければ)、読み手を納得させるのに10倍の文字数でも足りないでしょう。
ともあれ、最終的には勝利すると安心して読めるので、月世界の家族構成あれこれや、月の資源、今から約50年前に書かれた、今から約50年後のAI技術についてなど、完全に理解できない割に、それなりに、目を通すことができました。
久しぶりにSFを読んでみて、設定以外は現実の世界観に近いものを感じました。まあ、よく考えれば、"Science Fiction"だからといって、最新の科学技術を専門用語の羅列で描かれても、ほとんどの(文系)読者はついていかないでしょう。
そんなこんなで、SF小説ってどんなだったかと、本棚を探してあったのが、
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
超メジャーな作品、、だと思います。
第三次大戦後の放射能灰に覆われた世界で、アンドロイドの妻の倦怠感に付き合いながら、本物の羊を買うことを夢見て、脱獄アンドロイドを刈る、屋上で電気羊を飼う、賞金稼ぎの物語。
設定の面白さを破綻させずに読み手を引っ張っていく人間心理、行動の描き方は両作品とも秀逸だと思いました。
月を見上げようとは思いませんでしたが。楽しい夢は見れました。
SF作家の心理について触れた記事などあったら教えていただけたらと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?