9/27(日)「食べ残し管」
郵便受けにトマトが入っていた。
まだ完熟ではない緑色の混じったトマト。
恐る恐る掴んでみると、びちびちびちびちっと潰れてしまった。
そんなに強く握ったつもりはなかった。
3段の跳び箱に手を着いた時くらいの強さのつもりだったのに。
潰れたトマトの中身は郵便受けの傾斜に沿って下がっていき、穴に吸い込まれ、管を通り、4階にある大家さんの部屋まで流されていく。
このシステムは、以前ぼくの住むマンションの郵便受け全てにちらし寿司を詰め込まれるという事件が相次いでから導入された。
犯人は201の尾良というやつで、チラシとちらし寿司をかけた傑作ジョークをどうしても誰かに披露したくてやってしまったと供述した。
大家さんの部屋につながっている理由は、大家さんが「米粒1つも残したくない」という強靭なもったいない精神を持っているからだ。
家賃が払えない時より、ごみ袋の中身に食べ残しがある方が怒るほどだ。
尾良が引っ越して以来約2年振りにこの機能が使われた。
一応報告しておこうと大家さんの部屋をノックすると、ほっかむりをして出てきて、部屋に招いてくれた。
ベランダで潮干狩りができるというのでやらせてもらうと、白い液体が噴き出してきた。
これは何か尋ねると、「生乳」と言ってにやりと笑った。
まさか、と思い家に帰って押し入れを開けると、牛のギン太郎の乳に搾乳器が付いていて、管を辿ると大家さんのベランダにつながっていた。
こっそり飼ってるのバレてた~。