11/4(水)「シンセ修理」
ねじが取れたシンセサイザーを軽トラに積んで高速道路に乗る。
電源を切り忘れてたらしく、段差に乗り上げる度にファーと音が出た。
シンセサイザー専門修理店「ゴーレム電機」に着く。
とにかく広い店内に、たくさんのシンセサイザーが並んでおり、1台1台を職人さんが直している。
中にはあのスティービー・ワンダーのシンセサイザーもあるという。
見積もりしてもらうと、「寿命かも知れない」と言われる。
ねじが外れただけだと思っていたが、どうやら違うようだ。
シンセサイザーの中にキーボードを壊す妖精がいるという陽性反応が出たという。
店員さんに「どうしますか?」と聞かれたので、
「妖精を取り出せないんですか?」と訊ねると、
「いや歯クソじゃないんだから」と笑われる。
妖精が中に住みついちゃうと、取り出すのが難しいらしく、成功確率は10%くらいだという。
「やってみますか?」言ってくれたので頼むことにした。
「それではこちらへ」と言ってだだっ広い場所に案内され、ダーツ針を2本渡され、フレンドパークの回るルーレットにぼくのシンセサイザーがくくりつけられたやつが運ばれてきた。
「上手いこと刺されば妖精を追い出すことができます 外したらこのシンセサイザーは妖精の力で動物に化けます」と言われる。
緊張しながらダーツを投げた。
どっかのボタンに当たって弾き返される。
2投目も鍵盤のどこかに当たって弾き返される。
どこに当てるのが正解なのかわからないが、直感的にハズレだろうな、と思った。とその瞬間、シンセサイザーはサイになって壁を突き破って走り去って行った。
それを見た職人たちは皆慌てはじめ、工場内にサイレンが鳴り響き、警察を呼んだりと、てんやわんやだった。
「普通は小動物なんですよ」と職人さんの一人が教えてくれた。
「サイはありえないっすね ありえないっす ありえないっすわ うん、ありえない」
帰りの軽トラの車内でその言葉が頭の中で何度もリフレインした。