カネカの問題から学べる3つのポイント
カネカ、やっちまいましたね。
突っ込みたいところ沢山あります。
カネカからの発表がないのでどこまで真実なのかという確認すべき点はあるものの、もし一連の情報が真実だとしたら、当然アウトなわけで。
とは言え、明日は我が身。
ここまでひどいことはなかなかないとしても、これに近い事象は多くの会社で少なからずあります。
今回は一連の問題を法的に何がまずいのかを整理したうえで、この事案から学び取れる点を社員の視点からまとめてみようと思います。
◆ 3つのポイント ◆
1.法的に何がアウト?
2.社員が身を守る方法は?
3.企業と社員のあるべき関係性とは?
1.法的に何がアウト?
まず、法的に何がまずいのか整理します。
そこで、ざっくり今までの流れを確認してみます。
育休を会社として奨励
↓
男性社員育休取得
↓
育休終了
↓
2日目で地方転勤内示
(妻復職まであと2週間&新居に引っ越して10日後)
↓
転勤の期日の延期をかけあうが受理されず
↓
止む無く退職の意向を提示
↓
有給消化が受理されず会社が退職日を指定
↓
キレた妻がTwitterで内容を事細かにリーク
↓
4万リツイート以上の反響
↓
困ったカネカ、すぐに自社HPの育休のページを削除
(HPリニューアルの一環で関係ないと主張)
↓
株価下落
↓
内定者が続々内定辞退を表明
↓
カネカから公式発表無し←いまココ
カネカ側にひとつも弁護できる余地がないんですよね。
ひとつひとつ確認してみましょう。
育休推奨
まず、「育休を推奨」すること。これはもちろんOK。というよりすべての会社で奨励すべきです。
育児介護休業法において、取得を促す施策を取り入れる努力義務が全ての企業に適応されています。
実際、数名育児休業を取っている社員がいるということは、制度は機能していたということですね。
素晴らしい。
2日で転勤内示
次に、育休明け2日で転勤辞令。これは黒に近いグレーと言えるでしょう。
育児介護休業法において育休取得社に対して育児休業取得を事由とする以下の対応を禁止しています。
育休取得者への不利益取扱の例
・解雇
・雇い止め
・契約更新回数の引き下げ
・退職や正社員を非正規社員とするような契約内容変更の強要 ・降格
・減給
・賞与等における不利益な算定 ・不利益な配置変更
・不利益な自宅待機命令 ・昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行う
・仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする
※参考
今回の転勤は「不利益な配置転換」に当たりそうです。
また、転勤先の業務が今までの業務と大きく異なり、窓際的業務となれば「就業環境を害する行為」にも当たりそうです。
これなら完全に黒じゃん、と思うかもですがグレーといったのには理由があります。
それは「育休取得社に対して育児休業取得を事由とする以下の対応を禁止」という転勤がなぜ命じられたかという観点によるところです。
会社からの転勤命令自体は就業規則に則ってさえいれば不当ではありません。
ですので、今回の転勤の理由が「適任者がたまたま育休明けであり任命には明確な理由がある」ということであればこれはセーフになり得るのです。
今回の意図がどこにあるのか、当事者ではないのでわかりません。
ただ、解釈としてはこう言えるということです。
有給が受理されない
これは言うまでもなく有給は労働者に与えられた権利であり、その要求を受けた企業は基本的に受理しなくてはなりません。
ただし、会社には有給の時季変更をする権利があります。
繁忙期など、有給を取得することにより業務に影響が発生してしまう場合、会社から時季変更を依頼されることはOKなのです。
今回の場合、明らかに拒否なので、これはNGと言えるでしょう。
以上のように数々のグレー(まぁ一連のツイートが真実なら黒ですが)を犯しているカネカなんですが、どうしてこうなってしまったんでしょうか。
カネカは1999年にも地方転勤から4か月で自殺という事象が起こっていますし、根は深そうです。
いずれにせよ、今回は訴えれば勝てる状況であるように見て取れます。
会社側としてはこのような違法になりそうな社員対応がないようにリスクマネジメントをおこなう必要がありそうです。
2.社員が身を守る方法は?
会社としては、法例をしっかり守った経営を行うことはもちろんのこと、業務の実態と理想論の乖離をいかに埋めていくかを考えながらこのような労務対応を行う必要があります。
会社が何をどのように気を付けるべきかはまた別でまとめていこうと思います。
では、我々社員がこのような不当な扱いを受けない為に日々何をする必要があるのか。
これは正直、社員として日々何か準備ができるわけではないというのが正直なところなのかなと思います。。
しいて言えば、上司、同僚、部下、後輩から「余人をもって変え難い人材」と思ってもらえるよう日々精進しましょうといったところでしょうか。
職場の同僚から「権利ばかり行使してろくに仕事しないやつ」と思われたら、育休取得後、その組織にいづらくなってしまうということが少なからずあります。
そして、それは会社の問題ではなく、人が集まって同じ目的に向かっている組織というものには一定の割合で発生してしまう人間の性みたいなものです。(職場いじめを擁護するわけではないのであしからず)
この逆で、上司・同僚・部下からより多く信頼を得ている人は、会社かから不当な処遇をいい渡される前に上司が会社と掛け合ってくれるかもしれません。
会社に不当な扱いをされたとしても、次の会社がすぐに見つかるのならば今回のカネカ社員のように盛大にリーク、炎上させて大打撃を与えて次の環境に行けばよいのです。
ビジネスパーソンとしての市場価値の高さは、不当な扱いを受けにくくなる、また不当な扱いを受けた時に強い態度で対応できるということと比例するのです。
一番きついのは、不当な扱いを甘んじて受け続けなければいけない状況です。今の会社にしがみつかなくてはいけない、現職一択キャリアは社員に不利極まりないのです。
ただ、すべては自分の実力次第だよというのはあまりにもドライですのでもう一点、社員にできることを上げます。
改めて、カネカのような上場している大手企業でもこの状態です。
過去から積み重なった思想や文化も相まってそう簡単には変わらないというのが実態かと思います。
だからと言って泣き寝入りは決してよくない。
今回カネカのことを4万リツイート以上拡散させたこのツイートには大きなインパクトがありました。
そうです。私たちがこれから日々できることは、何か起こってしまった事象に対して「おかしい」と言い続けることです。社内外で、様々な方法を使っておかしいといい続けましょう。
上司に対して、人事に対して、意見箱を通して、届くまで言い続けましょう。
労基署には匿名での報告窓口もあります。おかしい仕組みに対しては必ず声を上げ続けるのです。
そして、今回のツイートは、会社への攻撃力を高める一つの方法を示してくれました。
「企業に対する問題定義は週末にするべし」
こんなしょうもないことここに書くことでもないのですが、企業対応は基本的に土日祝日ストップする為、土曜日に一気に拡散した今回の事案ではカネカが反応した月曜日にはすでにどうしようもない状況でした。
このスピード重視のネット社会において2日のタイムロスは大きい。
このような小手先の技術も使いながら、小さなことでも一つずつ社会が良くなる方向に進めるよう声に出して問題提起をすることに意味はあります。
3.企業と社員のあるべき関係
さて、いろいろ書いてきましたけど、これらの前提にある一つの原則を忘れないでいただきたい。
それは「企業と社員は一心同体であり目的は一緒である」ということです。
これは、昭和の企業戦士を言いたいわけではなく、企業、社員それぞれの思惑が一致しているからこそ、企業は雇うし、社員は仕事をするんだという前提で議論しなければ誰もためにもならないのです。
拉致されて、強制労働させられている場合を除き、企業と社員は必ず「お見合い」をしてから内定を出すし、内定を承諾するはずです。
企業は「こういう人が欲しい」ということから求人を出して、募集して
求職者は「こういう条件で働きたい」ということから求人を探して、応募して
これがマッチして初めて雇用関係が成立するのです。
この前提で思惑が異なれど共に雇う・雇われることのメリットは双方にあるはずです。そして双方にメリットがある受胎では、企業の継続的な拡大は自分自身の雇用の安定の大前提となりますし、社員の成長や社員の幸せは企業拡大の大きなファクターとなります。
双方がwinwinの関係が成り立つし、双方がともにより良い会社にするために議論を続ける意味があるのです。
この前提が崩れているのであれば、「会社に対しておかしいとか言って無いで早くやめましょう」ということです。
何のためにその会社で働いてるのか、わけわかんないのにただ辛いなんてそんなの早く逃げたほうが良い。
企業vs社員という構図では何も解決しない。
企業with社員で同じ目的に向かってともに歩んでいく新しい関係性が理想だといえるでしょう。
私自身は、カネカの一連のツイートに関しては、会社の言い分が見えてこない中で、どちらを擁護するつもりもたたくつもりもないのですが、より自由に仕事を選び、幸せな人生を歩む人が一人でも多くなることを願って、組織造りに励みたいなと思った事象でした。