【歌詞和訳】Heather[Extended version] / Conan Gray
コナン・グレイのアルバム"Kid Krow"から『Heather / ヘザー』を日本語訳していきます。
直訳と意訳が半々くらいのバランスを心がけます。
この曲には実は、音源化されていない(今のところ)ライブ・パフォーマンスでのみ披露されるオリジナルヴァースが存在します。
と言っても、自分も先日参加したFound Heaven On Tourでその存在を知ったばかりで、実際聴いたときには声をあげて驚いてしまいました。
どうやら未発表部分は、2023年の12月3日:通称Heather DayにTik Tokとinstagramに投稿された動画で明かされ、Found Heaven On Tourから実際にパフォーマンスされていたようです。
(熱心にフォローしていたのに見逃していた……笑)
その部分を含めた歌詞の紹介をしていきます。
追加歌詞部分は★マークで区切っています。
【対訳】
I still remember, third of December,
まだ覚えてるよ、12月3日のこと
me in your sweater
君のセーターを着た僕に
You said it looked better on me than it did you
"君のほうが似合ってる"って言ってくれた
Only if you knew, how much I liked you
君が知ってたらいいのに、僕がどれほど好きだったか
But I watch your eyes as she
だけど僕は君の視線を追うだけ、君は―
Walks by
彼女が通り過ぎるのをうっとり眺めてる
What a sight for sore eyes, brighter than a blue sky
なんて眩しい光景なんだろう、晴れた空より明るすぎる
She's got you mesmerized
君の目はくらむ
while I die
僕は死にそうで
Why would you ever kiss me?
なんで僕にキスしたの?
I'm not even half as pretty
彼女に比べたらちっとも魅力的じゃないのに
You gave her your sweater,
あのセーターをあげたんだね
it's just polyester
あんなただのポリエステルの
But you like her better
彼女のほうが好きなんだろ
(Wish I were Heather)
(僕がヘザーならよかったのに)
Watch as she stands with her,
ふたりが一緒にいるのを見てる
holding your hand
彼女は手を握る
Put your arm 'round her shoulder, now I'm getting colder
肩に手を回す君、僕は凍えていく
But how could I hate her? She's such an angel
だけどどうして嫌いになれる?天使みたいなあの子を
But then again, kinda wish she were dead as she
でもやっぱり、いっそ死んじゃえばいいって願ってしまう
Walks by
彼女が歩き去る姿
What a sight for sore eyes, brighter than a blue sky
なんて眩しいんだろう、青空より目が痛む
She's got you mesmerized
彼女が君の目をくらませたんだ
while I die
死にたくなるよ
Why would you ever kiss me?
なんで僕にキスしたの?
I'm not even half as pretty
あの子の半分も可愛くないのに
You gave her your sweater,
あのセーターをあげたんだね
it's just polyester
安っぽいポリエステルの
But you like her better
彼女のほうが好きなんだろ
(I wish I were Heather)
(僕がヘザーならよかった)
(Oh) Wish I were Heather
僕がヘザーなら
(Oh, oh) Wish I were Heather
僕がヘザーだったら
★
I want her hair, want to steal what she wears
あの髪の毛が欲しい、着ているものを奪いたい
wanna smell like her perfume
あの香りになりたい
do everything like her,
全部同じにしたい
'cause isn't she perfect?
だって、彼女は完璧なんでしょ?
the lipstick on her lips
彼女の唇を彩る口紅
I wish I could kiss her
彼女にキスしたい
to know why you love her
どうして君が愛してるのか知るために
★
Why would you ever kiss me?
どうして僕にキスしたの?
I'm not even half as pretty
ちっとも魅力的じゃないのに
You gave her your sweater,
あのセーターをあげたんだね
It's just polyester
ただのポリエステルの
But you like her better
でも彼女のほうが好きなんだろ
Wish I were
もし、僕が ――
所感
自分はテイラー・スウィフトの『Cardigan / カーディガン』という曲が好きなのですが、そちらの主人公は自身のことを"ベッドの下の忘れられた古いカーディガンのように感じていた"と評し、好きな相手は主人公=カーディガンを身にまとい「お気に入りだ」と肯定してみせる、という描写があります。
結局、想い人は浮気をしてカーディガン=主人公を手放してしまいますが……。
この"Heather"では、かつてセーターを共有した相手に褒められた記憶から始まるものの、その人は今セーターに腕を通す別の相手を見つめています。
衣服を通じて物語中の三人の間に生まれる疎外感と、妙な連帯感。
温かいのに冷たくて、なんとも言い難い切なさに満ちています。
余談
Extended versionを探している時にYouTubeで見かけたコメントで、
"このバージョンは、公開版よりも不気味に聞こえます。「彼女が死んだらいいのに」という歌詞が、細部を真似して振る舞うことよりも、精神的に健康的に聞こえるくらい"
と書かれているものを見つけました。
まさにこの歌詞が追加されることによって、歌詞中で繰り返し主張される「彼女になりたい」という言葉の温度感がかなり変わってきます。
パトリシア・ハイスミス原作の『太陽がいっぱい』で、主人公である詐欺師:リプリーが、裕福な友人フィリップ(ディッキー)の洋服を着て鏡に向かって彼の真似をする場面を思い出しました。
彼に成り代わって富を得たいのか、それとも彼の恋人を奪い去りたいのか、または彼の愛情を独占したいのか……。
凄惨な扱いを受けているのに、相手への思慕や、相手の連れへの羨望が深まるたびに理由は曖昧になっていきます。
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