見出し画像

【教育ニュース解説】高校生の就職活動、その②

 前回の高校生の就職活動、その①の続きです。

◇現行システムのメリット

 企業としては「○○高校から何人の生徒をとりたい」とか、「部活動を頑張っていた生徒」とか「評定平均○○以上の生徒」をとりたいなどの希望があります。
 学校では、こうした企業の考えや生徒の考えを加味しながら、生徒を審査し、最終的に受験先へ「推薦」していくという形をとります。これはある意味、生徒が学校段階で「ふるい」にかけられるということです。そのため、企業にとっては希望に合う生徒が受験することになるし、逆に生徒は内定を取りやすい。
 また、長年こういうシステムでやっていると、学校と地元企業のお付き合いみたいなものも出てきます。そうした企業には、毎年一定数の生徒を採用してもらえる。そこで、ざっくり「○○な子なんですけど、どうですか?」みたいな話ができたりして、内定に繋げられるというケースも結構あるんです。福岡県が見解として述べていることは、このあたりの話だと思います。
 また、「原則1社」の専願受験は、ほかの企業を受験して、そっちに行く、いわゆる「蹴られる」という状況にならないので、企業にとっては採用計画を立てやすい。これは人員が充足していないことが多い地方都市の中小企業にとっては、だいぶメリットになると思います。
 学校がハローワークの代行をし、企業と生徒の双方の意見を聞きながら、就職先を振り分けていくという現行のシステムは双方にとって案外メリットは大きいのかもしれません。

◇現行システムのデメリット


 一方で、確かに、前の記事が述べるように生徒が選択する自由度は少ないのかもしれません。そもそも、求人票が来ないと受験できないということ。事務職就きたいけど、事務職の求人ほとんど学校に来ていないという状況はよくあります。(求人票が来ない企業を受けたい場合は、学校から問い合わせて求人票を出してもらえるようにお願いをしたり、生徒が自己開拓したりの方法がある。)
 また、受験先を決める際に見学に行くのが1~2社というのは、僕自身ももう少し行かせてあげた方が良いのでは?と思うことがあります。その辺は不自由を感じます。そして、その選択の際には、求人票の紙面だけの情報に頼ることになります。自分の興味ある企業に、知り合いがいるとかで自分で下調べをして情報を得られる生徒は良いですが、そういう生徒ばかりではありません。給料だけ見て何となく決めて見学に行って、なんとなく受験したみたいな状況も十分あり得て、入社後のミスマッチにつながるケースもあります。
 

◇この記事に対して…

 僕自身は、この記事に対して「原則1社」は崩す必要はないと思うのですが、選択の段階で、もう少し生徒と企業がコンタクトをとれるようにしていくべきだと考えています。自分の希望に沿いながら、複数の企業を受験したいという気持ちはわからなくもないのですが、それが必ずしもすべての生徒にとってプラスに働くか?と考えると疑問です。
 もし、「原則1社」を崩してしまえば、企業によっては倍率が跳ね上がっていき、内定にたどり着かない生徒が出てきます。また、企業にとっても「蹴られて」採用計画の目途が立たないという状況も出てくると思います。だから、2回目、3回目…と、お互いに就職活動期間が長くなることが予想されます。生徒にとっては授業、部活、様々な学校でのやるべきことがある中で、長期間何枚も履歴書作成し、面接の練習をして…みたいな状況になってしまったら、やりきれない生徒が出てくるのではないでしょうか?(大学生のようにはいきません。)
 でも、生徒が納得をして進路を決定していくことは大事です。求人票の紙面だけ見て、見学いって、どっちか決めるといいう選択も、なかなか難しいなぁと思うわけです。生徒は仕事に対する経験がないですからね。
 そこで、選択をしていく段階でもっと生徒が企業の方々に話を聞いたり、見学に行ったりというプロセスを充実させていくべきだと思うんです。だから、もっと早い段階から企業との接点を持って、なるべく多くの企業の話を聞き「比較して」最終的に1社を決めるというやり方が良いのではないかと考えています。
 例えば、昨年からの取り組みとして、勤務校では5月の末に20~30社の企業を学校に呼んで、事業内容を説明してもらう企業説明会を行いました。生徒にも企業の方々にもこの取り組みは案外好評でした。就職を目指す地域の高校生が一同に集まる合同企業説明会みたいなやつがあってもよいと思います。あとは、もう少し見学先を増やすとかですかね…教員以外の大人と関わることで、生徒が何かしらを感じる部分ってけっこう大きいと思うんですよね。そんな取り組みが増えていけばいいのかなと思います。

 それでは!


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?