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「共同体感覚」を育てるクラスづくり 競争から協力へ
学校生活の中で、子どもたちは「自分はここにいていいのだろうか」「クラスの中で自分はどんな存在なのだろうか」といった不安を抱えることがあります。特に、学力や運動能力などで競争が生まれやすい環境では、子どもたちが「認められるためには誰かに勝たなければならない」と考えてしまうことも少なくありません。
アドラー心理学では、「共同体感覚(Community Feeling)」を大切にしています。これは、「自分は集団の一員として価値があり、仲間と協力しながら生きていける」という感覚のことです。この共同体感覚が育まれることで、子どもたちは安心して学校生活を送り、他者との協力を大切にするようになります。
では、教師としてどのように「競争から協力へ」とクラスの雰囲気を変えていけるのでしょうか。今回は、共同体感覚を育てるための具体的な方法をいくつかご紹介します。
1. 役割を均等に分ける「クラスの共同作業」
クラスの中には、目立つ子やリーダーシップを発揮する子がいる一方で、「自分はあまり役に立っていない」と感じてしまう子もいます。そのため、教師が意識的に役割を分担し、どの子もクラスに貢献できる機会を作ることが大切です。
たとえば、掃除や給食当番のような日常的な役割だけでなく、
• 朝の会や帰りの会の司会
• みんなが気持ちよく過ごせる「お楽しみ係」
• 学級掲示を担当するデザイン係
など、多様な役割を設けることで、子どもたちが「自分もこのクラスの一員として大切にされている」と感じやすくなります。
2. 「比較」ではなく「プロセス」を認める言葉かけ
つい「〇〇さんはいつもすごいね」「△△くんは優秀だね」と、子ども同士を比較する言葉を使ってしまうことはないでしょうか。こうした比較は、クラスの中に競争意識を生みやすくなります。
その代わりに、子ども一人ひとりの成長や努力のプロセスに注目した声かけを心がけましょう。
• 「昨日よりも工夫して書けているね」
• 「最後まで粘り強く取り組んでいてすごいね」
• 「友達の意見を聞いて、自分の考えを広げられたね」
このような言葉かけをすることで、「誰かに勝つこと」ではなく、「自分自身の成長や協力」が大切なのだという価値観を育むことができます。
3. 「クラスのためにできること」を考える時間をつくる
子どもたちが「このクラスの一員として何ができるか」を考える機会を意図的に作ることも効果的です。たとえば、定期的に話し合いの場を設け、次のような問いかけをしてみるのはいかがでしょうか。
• 「クラスのみんなが安心して過ごせるように、どんな工夫ができるかな?」
• 「困っている友達がいたら、どんな声かけをしたらいいかな?」
• 「最近クラスの雰囲気はどう?みんなが楽しく過ごすために何かできることはあるかな?」
こうした対話を重ねることで、「自分の行動がクラスの雰囲気に影響を与える」という意識が芽生え、協力することの大切さを実感できるようになります。
4. 教師自身が「共同体感覚」のモデルになる
子どもたちが「クラスのために何かしたい」と思えるようになるためには、まず教師自身が共同体感覚を持ち、それを行動で示すことが大切です。たとえば、
• 児童一人ひとりの小さな努力を見つけて伝える
• 教師自身が困ったときに子どもたちに助けを求める(「先生もみんなに手伝ってもらえると助かるな」と伝える)
• クラス全体の成長を喜ぶ姿勢を見せる
こうした関わりを通して、子どもたちは「お互いに支え合うことの大切さ」を自然に学んでいくのです。
おわりに
「競争」ではなく「協力」を大切にするクラスづくりは、決して簡単なことではありません。しかし、子どもたちが「自分はクラスの一員として価値がある」と感じることができれば、学び合いの姿勢が育ち、学級経営もより円滑になります。
教師として、子どもたち一人ひとりが「このクラスが好き」「ここにいてもいいんだ」と思える環境をつくるために、日々の関わりを大切にしていきたいですね。