小説の評価
”世界の教養”文学編は、6週目にして、普通の小説っぽいところに入ってきた。「闇の奥」。
でも私はこの表題すら聞いたことがなかったので、まずは読んでみた。
結論としては、”世界の教養”の中で評価されている点はよくわかったけれど、この理由だけで”世界の教養”レベルになるのかー、というささやかな驚き。
でもそのような位置付けになるくらい、その書かれた時代環境、社会との関係性からすると、当時は珍しかったということなのかもしれない。
当時、珍しさ、先進性が評価されたのだとしたら、現在の評価は、今もなおたいして変わっていないことー、人が人を搾取する構造、欲で動く人や欲に動かされてしまう社会、正義感から抗ってもいつかは飲み込まれる限界、無知で自分の世界に閉じこもっていれば平穏に過ごせる人たち、ーそういう普遍的なことを示したことが、今でもこの小説の価値と言えるのかもしれない。
120年の間に、人は、何度も戦争をし、行き過ぎた行為を反省し、一人一人の尊さを確認してきたはずだった。社会や人と人との関係を変えようとし、法制度も作り替えられ、憲法学も深化してきている。
それでも、120年前と今とで、人の根源的なところは何も変わっていないことを感じさせる。
この小説のすごさはそういうところにあるのかもしれない。