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料理を科学する

「発酵もの」と同時並行で、このところ「梅」についても、あれこれと創意工夫を凝らしていました。

小泉先生の「梅味噌」はすでに出来ていて(様々な「梅仕事」の中では、比較的簡単でした)、キュウリが登場したらそのうちサラダのドレッシングに使おうと思っているのですが、難敵だったのは「梅の甘露煮」。
いえ、実は二度ほど挑戦しています。

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これはこれでおいしかったのですが、ただ、「青さ」へのあこがれがどうしても捨てきれなかったのです。

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この青さを出すには、どうやら「銅イオン」がポイントらしい……というところまでは、簡単につかめました。
ちなみに、料亭などで出される「梅の蜜煮」は、その多くが「銅鍋」で煮るケースが多いようです。

ただ、我が家にそんな高価なものはありません(苦笑)。
その場合の代替方法として、「10円玉」を利用するという方法も、よく見られました。
もちろん私も手持ちの10円玉を綺麗に洗って試したのですが、10円玉の方は変色しても(理科でいうところの酸化還元反応)、肝心の青梅の「色戻し」まで至らない。

その前に、梅はどんどんふやけてくるし、どうしたものやら(´;ω;`)
もちろん、失敗した分についてはジャムにして活用していますが。

そんな中で見つけたこちらのレシピ。
「製作に1週間!?」と、ちょっとクラクラしましたが、幸い梅は大量にあるので、試してみることに。

1.今までとの違い

まず、「塩水」に晒す工程が入っていること。
これは試してみて分かったのですが、梅を煮る際に若干梅の実が締まるので、長時間煮ていても煮崩れるリスクが減ります。
梅の甘露煮のポイントとして、「沸騰しない温度で茹でる」というのもあるのですが、そのままだと梅の皮が破けやすいので、やはり「塩水で締める」工程は入れたほうが良い気がします。

2.「銅イオン」の発生量

おそらく、梅の「色戻し」が上手に行くかどうかは、これがポイントなのだと思います。
とあるサイトで「やはり銅鍋でないとうまくいきません」という投稿も見ましたが、それはプロのお話です😅。

安いのでも銅鍋は比較的高価な部類ですから、庶民としては安上がりな方法で作ってみたいもの(笑)。
2度めに作ったときは10円玉を7枚入れてみたり(恐らく、これでも全然足りなかった)、銅イオンを引き出しやすくするのに「お酢」を少々加えてみたりしたのですが、あえなく失敗。
そこで目をつけたのが、「漬けもの名人」なる商品でした。

まあ、「10円玉と言えども、お金を料理のツールとして使うのはちょっと……」という抵抗もあり、銅板を探し回っていたのです。
ちなみにネットで買うと基本的に送料がかかるので、私は近所のホームセンターに買いに行きました。
この辺りでは、「上手な漬け物を作れるのは主婦力のスキル」的な文化もあり(苦笑)、店舗でも売っているのでは?と踏んでいたのです。

……少し横道に逸れましたが、とりあえず2枚購入。
袋から出してみると、おおっ!?
パッケージが変色しています。「ナスの形」がくっきりと分かりますね。

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銅イオンのパワー、どれだけ凄いんだ(笑)。
少なくても、10円玉だけでやるよりは成功率が上がりそうです。
ちなみに、この「漬けもの名人」1枚で、重さは14g。
2枚なので28gの銅を使用したことになります。

3.煮始めましたが…

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一度軽く茹でこぼし、本格的に煮始めたスタート時はこんな感じです。梅を水につけておくと黄色っぽく変色するのは当然として、

これだけで銅が足りるのか?
どれくらいの時間がかかるのか?

は、気になるところです。
ですが、なかなか色が変わりません。塩水で締めておいたので、煮崩れは予防できていますが。
下記の写真は、5時間煮た途中経過。

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見た目にあまり変化はないようにも思えますが、煮ている水にほんのり色がついた気がします。
別の器に茹で汁を取ってみると、それは明らか。

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ただ、どうしても色づきに納得できず、さらに手元にあった10円玉5枚(22.5g分の銅)を洗って、鍋に追加しました。

4.どうにかこうにか、うっすら色づくところまでは

ここからさらに煮ること3時間あまり。
薄っすらと緑色が戻ってきましたが、さすがに音を上げました。
ずっと火の番をしていなければならないですしね。
ただ、一応「青み復活」までは出来たので、今回はこれで良しとします。

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お分かりでしょうか。
3個のうち、一番左は前回作った分ですが、真ん中と右は今回煮た分です。
あとは、ここからさらに時間をかけてじっくりシロップに漬け込むだけ。
それもまた、気の長い作業ですが……。

4.化学的な解説

この「梅の色戻し」ですが、「梅」に含まれる葉緑体(クロロフィル)の主成分である、「マグネシウム」が大きく関係しています。成分としては不安定であり、熱が加わると簡単にマグネシウムが放出されて、黄色っぽくなってしまうらしいんですね。
ただ、そこに「銅イオン」が加わると、再び青みが戻る……ということのようです。

もっとも、私の化学の知識は中学校止まり(高校では生物選)なので、ちゃんと理解できているかは不安が残りますが(苦笑)。

「つくり手」としてもっと気になるのは、「結局どれくらい銅が必要なの?」というところではないでしょうか。
今回は梅500gで作っていますが、最終的に銅50gで、これくらいの色づきでした。
別の記事では「10円玉20枚を入れました」という記述で鮮やかな青色に戻ったものもあり、この場合だと使用した銅の分量は90g

計算上では、今回買ってきた「漬けもの名人」6~7枚分で、鮮やかな色戻しに成功することになります。
ただ、こう言ってはなんですが「コスパ」の問題もあるので(今回は1枚300円で購入)、後はお好みで。
まあ、それでも「銅鍋購入」よりは、現実的なプランだと思います。パッケージに書いてあった説明では「ナスやキュウリの漬け物も色鮮やかに仕上がる」そうなので、そちらに利用するという手もありでしょう。

5.料理には「科学」の知識も有用

日常的にはあまり意識しませんが、一部で「リケジョは料理が上手い」という説もあるようです。
あくまでも私見ですが、これは科学の知識を料理に応用しやすいからだろう……と、私は推測しています。
そういう私自身はバリバリの文系ですが、料理については「何となく」でもやれる場合と、「発酵モノ」や「お菓子」のように「科学」の知識を応用したほうが成功しやすい場合があると思うのです。

なので、「理系」に対する偏見を持たずに、もっと理系の知識が広く行き渡ると、私達の日常生活でも応用できる場面が広がるのかもしれません。


#第3回THE_NEW_COOL_NOTER賞_ 9月参加

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